駐在員・事務局員日記

スーダン:謎の塊の正体

2016年12月27日  スーダン
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執筆者

本田 悠平

2016 年7 月よりスーダン事務所駐在。国際協力関係のサークルでの活動やバックパッカーとして途上国を旅する中で、貧困などの国際的な問題に関心を持つ。民間企業で海外営業を担当するも、やはり直接国際協力に関わりたいとAAR へ。趣味は読書、音楽鑑賞。富山県出身

記事掲載時のプロフィールです

AAR Japan[難民を助ける会]は、スーダンの首都ハルツームから東に車で約10時間の場所に位置するカッサラ州で、給水・衛生事業と地雷回避教育・地雷被害者支援事業を行っています。また、今年の雨期の豪雨ではガシュ川の氾濫によって8千戸以上の家屋が倒壊し、約5万6千人が被害を受けたため、AARは洪水の被災者に毛布を配付するなどの緊急支援も行いました。今回は、カッサラ事務所で起きたちょっとびっくりしたことを、駐在員の本田悠平がレポートします。

泥ガール現る

ある日の午後、現地女性スタッフのアザが私のところに来て「これを食べてみて」と小豆大程度の謎の塊を数個くれました。「これは泥が固まってできたものなの」と説明されましたが、意味がわかりません。こちらに来てまだ数ヵ月の私は、郷に入っては郷に従えの精神で、せっかくなので少しだけ食べてみることにしました。するとどうでしょう。渋みのある泥のような味が口の中に広がりました。

ふと、ハルツーム事務所から来ている女性スタッフのエンサフが、私の手のひらに残っていた塊のかけらをひょいと取りあげ、ポリポリと食べ始めました。そして、「私にとって泥はチョコレートのように甘いのよ」と言い残して自分のデスクに戻ると、パソコンで作業をしながら、おいしそうに食べているではありませんか。アザの話によると「泥はおいしいうえに鉄分やカルシウム、マグネシウムも含まれていて健康にも良い。スーダンでは女性に人気で、好んで食べる人もいる」とのことです。

「やはりあれは泥だったのか!」泥を食べてしまった衝撃とともに、「スーダンの人は泥を食べるのか?」と俄然興味の湧いた私は、泥の健康効果について男性スタッフ数名に意見を聞いてみることにしました。すると、「泥はお腹に良くないから食べてはいけない」、「私は食べたことがないし食べたいとも思わない」、「一部泥を好んで食べる女性もいるようだが、摂取し続けると腎臓に泥が溜まって腎臓の機能が低下する」。女性陣とはまったく違う反応です。

バリバリと泥を食べる光景は、日本であれば奇妙にしか感じられないことでしょう。しかし、男性陣の否定的な発言も意に介さず泥にはまっている女性スタッフたち。中でも特に泥好きなアシュアグなどは、男性スタッフから「食べてはいけない!」と泥の塊が入った袋をゴミ箱に捨てられても、数時間後にはまた新たな泥を手に入れている始末です。なんたる執念。

泥探しプチ旅行

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ガシュ川の川底。後ろに見えるのはタカ山(2016年11月5日)

泥好きなスーダン女子がそんなにしてまで食べたいものなのに、なぜ自分にはおいしいと感じられないのか。もしかしたら、たまたま口にした泥がおいしくなかっただけで、焼きたてのパンや炊き立てのご飯のように、できたてならおいしいのではないか?そう考えた私は、おいしい泥には目がないアザとアシュアグに「新鮮な泥を採りに行かない?」と提案してみました。







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左から泥を探す現地スタッフのアシュアグ、アザ、アザの従妹(2016年11月5日)

週末、「カッサラ州では一番おいしい泥が採れる」というガシュ川にアザ、アザの従妹、アシュアグ、私の5人で向かい、日中の暑さも和らいだ夕暮れどきに川のほとりに到着しました。ガシュ川はカッサラ市内にある川で、毎年雨季の6~10月の間のみ水が流れ、ほかの時期は涸れ川になります。そのため11月には川底に、乾いたばかりの、ある意味新鮮な泥が広がっています。川底に着くと、早速アザとアシュアグは「このあたりの泥はだめ」「あそこはおいしいはず」と良い泥探しに余念がありません。良い泥かどうかの判断基準は硬さのようです。

陽が沈みかけたころ、アザとアシュアグは川底のある場所を指し「ここの泥は良い」と言いました。ついに二人はおいしい泥を発見したようです。これならもしかしたら!そんな期待を胸に、思い切って私は大きな泥の塊にかぶりつきました。しかし、新鮮だろうがなんだろうが、泥はやはり泥。私にはおいしさはわかりませんでした。



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思い切って泥にかぶりついてみた筆者(2016年11月5日)

自然の恵みと生きるということ

私は、夢中になって泥を探す二人を見ながら改めて泥について考えてみました。泥を食べることの健康効果についてはスーダンの人々の間でも賛否両論があるようですが、たとえ健康に悪いとわかっていたとしても、たばこのような嗜好品として考えれば納得がいきます。しかも川に行けば採り放題です。実際、アザとアシュアグのようにガシュ川の泥の味を楽しみにしている人も多くいます。私たちが川底に滞在していた1時間程度の間にも、周囲には明らかに泥を収穫するために何人もの女性が来ていました。また、雨季の豪雨によるガシュ川の氾濫は深刻な問題のうちの1つですが、雨季にガシュ川を流れる肥沃な水を引き込み、綿花やソルガム(モロコシ)などの季節農業を行っている地域も多く存在します。泥はもうたくさんと思いつつ、女性スタッフの楽しみを温かく見守ろうと思いました。

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