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スーダン南部で衛生教育ワークショップを始めました

2010年12月20日  南スーダン感染症対策
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最初は大人から、そして子どもへ

新しい井戸を喜んで使っている住民たち

井戸の掘削だけではなく、衛生的な生活習慣を身につけてもらうことも大切です

難民を助ける会が井戸掘削や給水塔の建設などを行っているスーダン南部のカポエタ(カポエタ北郡、カポエタ南郡)で、衛生教育ワークショップを開始しました。
いくら井戸や給水塔が建設されても、「トイレの後は手を洗う」「排便は草むらではなくトイレでする」などの衛生的な生活習慣が身についていなければ、下痢などになってしまったり、せっかく建設した井戸の水が排泄物などで汚染されたりしてしまいます。井戸や給水塔の建設と衛生教育は、車の両輪のようなものです。

しかし、カポエタでは、まだまだこういった衛生習慣は普及していません。106人を対象に行ったアンケート調査では、トイレを使う人は16%しかいませんでした。
そこで、まず始めに学校の先生、保護者の代表、郡の保健担当者などの大人を対象に衛生教育ワークショップを行いました。今後は、彼らが地域に戻って子どもたちに衛生教育を行うことが目的です。

ワークショップ形式で参加者一人ひとりが自分で考える

参加者は熱心に議論に参加していました

参加者は、衛生的に良い行動、良くない行動について書かれた絵を見ながら議論します

衛生教育とは、「食事の前には手を洗う」など毎日の衛生的な生活習慣を身につけてもらうこと。しかし、一方的な説明を受けるだけでは、新しい知識や生活習慣は定着しません。そこで、先生や講師がいないワークショップ形式を取り入れ、私たち難民を助ける会のスタッフは進行役として参加しました。参加者一人ひとりが、受け身ではなく主体的に考えて、地域が抱えている課題を見つけ、分析し、そして解決法を見つけることが目的です。

進行役である私たちが、地域の生活でよく見られる場面が書かれた絵を使い、「この絵(草むらで排便をしている)に描かれている行動は、衛生的にどうか」、「もし、改善点があるとすれば、どのように改善できるか」など、参加者に質問を投げかけます。参加した人たちには、自分の村の現状、経験などを交えて話し合ってもらいます。

トイレの臭いも嗅ぎます!五感を使って定着を目指す

机上の話し合いだけではなく、学校や病院を訪問して現状も確認しました。実際に建物の周辺を歩いてみて地図を書いてもらい、「トイレはどこにあるのか」、「周りの環境は、衛生的にどうか」などをグループで分析しました。耳で聞き、目で見て、時には、トイレの臭いまで嗅ぐ、五感を使うワークショップは、単におもしろいだけではなく、自分自身で体験するので正しい知識や習慣の定着に役に立ちます。また、実際に足を運び、現状を確認することで、参加者同士の議論をより活発化させる効果もありました。

参加した人たちは、これらの議論を通じて「排便は草むらではなくトイレでする。トイレがない場合は毎回穴を掘って土をかぶせる」「排便の後と食事の前は井戸水などのきれいな水で手を洗う」「ハエは病原菌を運び不衛生なので、食べ物に近づけないようにふたを使う」などの衛生知識や習慣を身につけていきます。

今回のワークショップは、参加者に正しい衛生習慣を身に付けてもらうとともに、一方的な講義形式ではないワークショップ形式を体験し、その手法を理解してもらうことも目的です。今後は、参加者が地域に戻って子どもたちにも同じようなワークショップを開く予定です。

排便について書かれた手書きの絵をみて議論します

参加者が実際の排便場所について投票し、それを参加者と一緒に確認する難民を助ける会職員(写真中央)

参加者は手書きの絵を使って分かりやすく説明しました

下痢の原因となる病原菌がどのような経路で体に入るのか、模擬練習として、小学生向けにワークショップを行っている参加者

地域の課題は地域に暮らす人自らが解決する

角谷駐在員もワークショップに参加しました

ワークショップに参加する駐在員の角谷亮(写真中央)

排便ひとつとっても、カポエタでは日本のような水洗トイレはおろか、トイレすらない場所がほとんどです 。そもそも、井戸も不足していて安全な飲み水を手に入れることも簡単ではありません。地域が抱える課題、優先事項、また解決法は、村によってそれぞれ違います。

地域の外から来た人が、「これは、大事だ。このようにしなさい」と指示するのではなく、その地域で暮らす人たち自らが、「何をすべきか。そして、何が出来るのかを考え、行動する」。難民を助ける会は、この「気づき」を引き続き支援していきます。

「トイレを使うことの大切さを学びました 」エリザベス・ナキンガさん(小学生の母親)
子どもたちのためにワークショップに熱心に参加していました

6人の子どもの母親であるナキンガさん

難民を助ける会が設置してくれた井戸を利用しています。その井戸の衛生教育ボランティアでもあります。このワークショップで新しいことを学ぶことが出来ました。ハエが寄ってこないように食事にはふたをする、野原で用を足すのではなくトイレを使う、などです。村に帰ったら、村の人たちに今回学んだことを広めていきます。

 

「ワークショップ形式はとても参考になりました」カエサル・タバン・ギデオ(小学校教師)
初めてこのような衛生教育に参加しました。
学校では、「下痢にならないように、どうすればよいか」を話していますが、今回参加したワークショップでは、多くの絵を使うため、子どもたちにも分かりやすく、より一層知識が定着するはずです。実際に自分で問題を書きだし、議論する方法は、とても参考になりました。
まず、自分の学校で学校内の清掃を生徒と始めたいと思います。また、トイレ清掃も徹底したいと思います。現在、トイレの後、手を洗うための水を入れる容器がありません。それも設置したいと思います。子どもたちにより良い環境を作っていきたいです。

※この活動は、多くの方からのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて行っています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

スーダン・カポエタ事務所駐在 角谷 亮

2007年11月から2010年3月までタジキスタン事務所に、同年4月よりスーダン・カポエタ事務所に駐在。大学では英米語学を専攻。卒業後、派遣員として在外公館に2年半勤務。その後、難民を助ける会へ(兵庫県出身)

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