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東日本大震災(67):被災した高齢者の方々の健康を守るために

2011年07月22日  日本緊急支援
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避難所での運動不足が深刻な問題に

長引く避難生活で、被災したご高齢の方々は運動量が減り、身体の機能がどんどん弱まってしまう傾向があります。そこで難民を助ける会では、作業療法士や理学療法士ら専門家のチームが宮城県石巻市牡鹿半島の避難所などをまわり、リハビリテーションや生活環境についてのアドバイスなどを行う活動を始めました。
7月9日には看護師、作業療法士、社会福祉士など6名のチームで、牡鹿半島の2つの避難所と、4つのご家庭を訪問しました。

一人ひとりに合った運動と生活環境を提案

避難所の女性の膝をマッサージする石井専門家

両膝の痛みがあり、避難所では布団からの起き上がり、トイレなど不便が多い。マッサージをする石井清志・医療専門家(右)

夫とともに避難所に身を寄せている80代の女性は、変形性関節症を患っています。動くと膝がかなり痛むため、あまり動き回れずにいました。そこで、膝が少しでも楽になるように、石井清志作業療法士が膝を丁寧にマッサージ。また、以前はベッドで寝ていましたが、避難所では布団を使っているため、起き上がる際に膝に負担がかかることが問題でした。そこで、避難所にあったシャワーチェアーを起き上がる際の補助として使うことを勧め、なるべく楽に立ったり座ったりできるようにしました。

この避難所には洋式トイレが男性用トイレにしか設置されていないため、この女性はいつも男性用トイレを使用しているとのこと。ご高齢の方にとって和式トイレは負担が大きいため、和式トイレにかぶせるタイプの洋式トイレを取り入れるよう、避難所に提案しました。

避難所の廊下を歩行器具を使って歩く女性と、難民を助ける会の職員

歩行器具を利用したリハビリを指導する作業療法士の石井清志専門家(左)と河野眞専門家(右)

別の避難所にいらした知的障害のある70代女性は、足がむくんで上履きが合わなくなり、かかとを踏んで歩いていました。歩けはするものの、大きく腰を曲げた姿勢で、筋力も低下しているため、わずかな段差でも転倒してしまう恐れがあります。そこで、避難所にある歩行器具を用いたリハビリの方法をお伝えするとともに、この方に合った靴や歩行器具を提案。こうした器具を使いながら、今後も避難所内の散歩を続けていただくようお話ししました。

ご高齢の方々は、長引く避難生活の中でも身体の機能を低下させないよう、日常的に運動を行う必要があります。そのためには、一時的なマッサージや筋力トレーニングを行うだけでなく、それらを日常の中に取り入れていけるようトレーニングの方法を伝えたり、生活環境の改善を提案することが重要です。住み慣れた自宅から避難所、避難所から仮設住宅へと、まだまだ生活環境が変化していく被災者の方々のために、今後もこの活動を続けてまいります。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

盛岡事務所 宮本 奈穂子

2010年6月より2011年6月までタジキスタン・ドゥシャンベ事務所駐在。大学卒業後、社会福祉士として勤務後、青年海外協力隊員としてフィジーの養護学校で活動。帰国後、大学院で国際保健・公衆衛生を学び、難民を助ける会へ。2011年6月より東日本大震災緊急支援に参加。長崎県出身。

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