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タジキスタン:車いす工房「ディルショッド」の車いすが完成!配付をはじめました

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それぞれの障害や利用環境にあった車いすを製造しています

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南廣行専門家(左列中央)の手元を熱心に見つめるディルショッドの職員たち(右列奥は東京事務局の安藤典子。2012年6月13日)

AAR Japan[難民を助ける会]は、タジキスタンで車いすの普及率を上げ、障害のある方々の社会参加を促進するため、 国内で唯一の車いす工房「ディルショッド」を2011年10月より支援しています。

車いすの設計から製造までを一人で行うことができる南廣行専門家を3回にわたり派遣し、車いす希望者への事前調査の方法や、実践的な製造技術をディルショッドの職員に指導してきました。これまでディルショッドでは、利用者それぞれの生活環境や身体の状態に合わせた製造は行っていませんでした。現在は南専門家の指導の下、未舗装路の多いタジキスタンの道をスムーズに移動できるように振動に強いデザインにしたり、身体に直接触れる部分は必ず角部を削った上でクッションをつけ、利用者が痛みを感じることなく、長時間座っても疲れないようにするなどの工夫を行っています。

ディルショッドで現在製造している車いすはSS、S、M、Lサイズの三輪タイプと、Sサイズの四輪タイプの計5種類。お届けする障害者の体型に合わせ、サイズを決めてから製造に取りかかります。配付時には、座位を長時間維持することが難しい方のために胸と腰の位置にベルトをつけたり、体重を分散できるよう座面のクッションを追加するなどの微調整を行います。工房職員がこれからも自力で適切な調整を行っていけるよう、南専門家が指導にあたっています。

2012年6月までに21台の車いすが完成。第1回目の配付として、6月18日から25日にかけて、タジキスタン西部のバクシュ、クルガンチベ、ボフタールに暮らす13名に車いすをお届けしました。

「車いすで色々なところに連れて行ってあげたい」

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脳性まひのため歩行が困難なティロベルディエブ・ムザファさん。訪問時も、手の甲に転倒した際のかすり傷がありました。車いすに乗ると、嬉しそうな笑顔を見せてくれました(バクシュ、2012年6月18日)

ティロベルディエブ・ムザファさん(29歳)は脳性まひのため、体が不自由です。介助と手すりがあれば短距離ならなんとか歩けますが、転倒の危険があり、車いすを希望していました。とてもやせている方なので、座面のクッションを前面のみ二重にし、全面で太ももを支えられるようにすることで、すべりを防止し、座骨への負担が減るようにしました。ご家族は「ティロベルディエブは毎日、一日中玄関先のブドウ棚の下に座っていることが多いです。以前、妹が手こぎの車いすを持っており、それを共同で使っていましたが、古くなって壊れてしまいました。今回車いすをもらえてとても嬉しいです。車いすに乗せて、色々なところに連れて行ってあげたいと思います」と話してくれました。車いすに座ると近所の人から声をかけられ、ティロベルディエブさんはとても嬉しそうに手を振りながら、私たちにも笑顔を向けてくれました。

「車いすがあれば、移動が楽になります。ありがとう」

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ゾヒドバ・ムハラマさんも脳性まひのため体が不自由です。この日、初めて車いすに乗りました(クルガンチベ、2012年6月19日)

ゾヒドバ・ムハラマさん(12歳)は、今までは外に行くのは病院に行くときだけで、家の中に一日中いることが多かったそうです。車いすを持っていなかったため、病院に行くときなどは家族みんなで抱えて運ばねばならず、成長するにつれてだんだん難しくなっていました。ゾヒドバさんのお母さんは「車いすがあれば移動が楽になるので、色々なところに連れて行ってあげたい。AARと日本の皆さまには大変感謝しています」と話してくださいました。ゾヒドバさんはとても恥ずかしがり屋でしたが、可愛い笑顔で「スパシーバ(ロシア語で「ありがとう」の意味)」と言ってくれました。

10月末までに100台の車いすを製造、配付していきます

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障害者のいるご家庭用の三輪車型の車いす。必要とされている方々の元へ、随時届けていきます(2012年6月18日)

南専門家は今年9月に4回目の訪問を予定しており、その際は今回お届けした車いすの使用状況の確認や調整、車いす製造の更なる技術改善に向けた指導を行います。

車いす工房「ディルショッド」では、今回配付した分も合わせて計100台の車いすの製造を10月末までに完了させ、障害者のいるご家庭(90台)とヒッサール障害者寄宿舎学校(10台)にお届けしていきます。ヒッサール障害者寄宿舎学校は現在296名の障害児(7歳から17歳)が通う全寮制の学校で、AARはこれまでに屋根や温室の修繕などを通して支援してきました。配付を予定している10台の車いすは、車いすを必要としている子どもたちの学校や寄宿舎内での移動のために使われます。室内でも小回りが効くよう、小さな前輪が2つ付いた4輪車型の車いすをお届けする予定です。

※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 安藤 典子

看護師として大学病院に勤務した後、青年海外協力隊に参加。赴任地のラオスで、不発弾被害者の問題を目の当たりにする。帰国後、再度看護師として勤務した後、「障害のある方々が社会参加でき、世界を広げることができるよう支援したい」とAARへ。2012年1月より東京事務局にてタジキスタン事業担当(岐阜県出身)

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