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相馬雪香生誕100周年シンポジウム「女性と国際協力」を開催しました

2012年09月13日  啓発日本
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世界の平和のために、私たちができること

AAR Japan[難民を助ける会]の創設者、相馬雪香前会長の生誕100周年を記念し、2012年6月16日、国連大学ウ・タント国際会議場にて、シンポジウム「女性と国際協力」を開催しました。ますます複雑になる国際社会の中で、「男性的なものの見方ではきっと立ち行かなくなるときがくる。そのときこそ、世界中の女性たちに女性本来の強さを発揮してほしい」と生前に語っていた前会長。シンポジウムには、国際協力や社会貢献分野の第一線で活躍する女性たちと、ノーベル平和賞受賞者のジョディ・ウィリアムズ氏をお招きし、女性の視点から国際協力について考えました。

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当日はあいにくの雨の中、約300名の方にご参加いただきました(2012年6月16日、国連大学ウ・タント国際会議場)

第1部 パネルディスカッション「女性と国際協力」

第1部では、山下真理氏(国連広報センター〈UNIC東京〉所長)、貴島善子氏(外務省国際協力局政務課企画官)、嶋田実名子氏(花王株式会社サステナビリティ推進部長兼社会貢献部長)、村田早耶香氏(特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表)をお招きし、「女性と国際協力」というテーマでパネルディスカッションを行いました。

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山下真理氏(国連広報センター〈UNIC東京〉所長)

約20年前に国連に就職した山下氏は、冷戦後の社会において国連の役割が大きく変化していく中、国連職員として国際政治に関わってきました。その経験をもとに、紛争解決、平和構築といった課題に国連がどのように関与してきたか、その変遷を説明。近年では紛争後の国づくりを進めるにあたって、政策決定に女性を参加させるなど、国連が女性の観点を重要視した活動をしていることに言及しました。また、一児の母である自身の経験をもとに、仕事と家庭を両立するワーク・ライフ・バランスのとり方について、「パートナーと一緒に色々なやり方を考えていけばよい」と、参加者に向けてアドバイスしました。

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貴島善子氏(外務省国際協力局政務課企画官)

外務省でODA(政府開発援助)予算の作成や広報に携わる貴島氏は、国が行う国際協力の仕組みについてわかりやすく解説しました。さらに、「組織を動かすことによって日本が国際社会の中でよい国であるよう努めたいと思ったから」と自身の入省の理由を語り、男性が多い組織の中では、女性だからと頼りなく思われないような話し方をするなど、働く上で気を付けている点を紹介しました。

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嶋田実名子氏(花王株式会社サステナビリティ推進部長兼社会貢献部長)

企業で社会貢献活動に携わる嶋田氏は、カンボジア訪問の際、現地で活躍するNGOの日本人女性たちを知り、「企業とはまた違った女性の底力を見た気がした」と語りました。そして、欧州で一番有名な日本人は、緒方貞子氏(元国連難民高等弁務官)だという知人の話を紹介。国際社会の中では国際協力が国のブランドにも関わってくることに気づいたと、国際協力の重要性を強調しました。また、男性優位と言われる社会においては、「もっと女性が頑張って存在感を出していかなければ、世の中は変わらない」と女性たちを鼓舞しました。

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村田早耶香氏(特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表)

村田氏は、20歳のときにかものはしプロジェクトを立ち上げ、18歳未満の子どもの児童労働問題に取り組んできました。「女性の立場が弱いため、アジア地域では特に女性の被害者が多い」と指摘。また、自身が活動を開始した当初を振り返り、ある国の政府関係者からは、若い上に女性ということでなかなか相手にされなかった経験を紹介しました。しかし工夫次第で解決できることや、若いからこそメディアに取り上げられ、問題を多くの人に知ってもらえるという利点もあったと語りました。

パネルディスカッションの司会を務めたAAR理事長の長有紀枝は、相馬前会長が「日本が第二次世界大戦に突入したのは、世界の孤児になってしまったからだ。二度と日本を世界の孤児にしてはいけない」と話していたことを紹介。また、67歳で当会を設立し、80歳を過ぎてもAARの活動地であるカンボジアに行くなど、常に前進し続けた前会長の生き方を振り返りました。そして、「憲政の父」と言われ、前会長の実父でもある尾崎行雄の「人生の本舞台は常に将来にあり」という言葉を引用して、第1部を締めくくりました。

第2部 講演「民主主義と女性の力」

第2部では、対人地雷禁止条約の推進役としての功績が認められ、1997年にノーベル平和賞を受賞したジョディ・ウィリアムズ氏をお招きし、「民主主義と女性の力」をテーマに講演いただきました。

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ジョディ・ウィリアムズ氏(地雷禁止キャンペーン大使、ノーベル平和賞受賞者、ノーベル・ウィメンズ・イニシアティブ代表)

はじめにウィリアムズ氏は、相馬前会長について「人はいくつになっても大きなことができるということを一生を通じて見せてくれた」と振り返りました。続いて、第1部のパネルディスカッションの内容に触れ、「男性的なものの見方で作られた世の中で女性が生きていくのは苦労も多いが、ものの見方を変えるのが女性の仕事」と力説。そして、世界の女性たちを支援しようと、自身をはじめノーベル平和賞を受賞した女性たちが集まって2006年にノーベル・ウィメンズ・イニシアティブを設立した経緯を語り、「女性が協力すれば大きなことができるのだというメッセージを世界に発信できた」と述べました。さらに、「世の中を変えたいと思うのならば、自分に課された責任を受け入れ、自分を含めて皆のためによいと思う行動をとることが必要だ」と強調。複雑化した世界の問題をひとつひとつ解決していく作業を「女性だけではなく、男性と一緒に行いたい」と語りました。

会場の方からの「どうしたら情熱を持って活動できるものを見つけることができるのか」という質問に対しウィリアムズ氏は、「皆さんが一番怒っていること、変えたいと思っていることは何かを知ることが大事」と述べ、「まずはボランティアでも何でも行動を起こすこと。私もはじめはボランティアでした」と力強く答えました。会場は大きな拍手に包まれ、約3時間のシンポジウムは終了しました。

混迷する世界で、世界の平和のために私たちは何ができるのか、参加いただいた皆さまそれぞれの指針となるようなシンポジウムとなったことを願います。ご来場、ご協力くださった皆さまに、心より御礼申し上げます。

※ウィリアムズ氏のスピーチの全文はこちらからご覧いただけます(英語)

「福島の問題は、自分の問題でもある」―ジョディ・ウィリアムズ氏が福島県を視察

6月17・18日には、ウィリアムズ氏が福島県相馬市、南相馬市、飯舘村を訪問し、東日本大震災の被害状況を視察したほか、立谷秀清相馬市長と菅野典雄飯舘村村長に面会しました。ウィリアムズ氏は、自身の出身地、米国・バーモント州に福島第一原子力発電所と同型の発電所があり、以前から福島を訪問したいと話していました。原発事故により全村避難を余儀なくされた飯舘村の状況を目にし、「バーモント州でも原発事故が起きるかもしれない。福島の問題は自分の問題でもあるという気持ちが強くなった」と語りました。

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南相馬市小高地区にて。右は、視察に同行したAAR理事長の長有紀枝

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相馬市角田東グラウンド仮設住宅を訪ね、菅野さん親子に被災時と今の暮らしについてお話を伺いました

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南相馬消防署飯舘分署署員の方から、東日本大震災発生当時の状況説明を受けました

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福島県立相馬高等学校を訪問。同校放送局の皆さまと懇談しました

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 福井 美穂

2009年4月より東京事務局で国際協力に関わる調査・研究を担当。大学院卒業後、AARの旧ユーゴスラビア駐在員として勤務。その後国際協力団体でシエラレオネの難民キャンプ運営のプロジェクトなどに従事(長野県出身)

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