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東日本大震災:被災地で、一緒に悩み、考える ―震災から4年を前に

2015年02月23日  日本緊急支援
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2015年2月25日(水)、東日本大震災から4年 活動報告会「福島の障がいのある方々の復興とチャレンジ」を開催します。
仮設住宅にお住まいの方と、理学療法士の江澤麻里子さん

仮設住宅での暮らしが続き、身体の不調を訴える方もたくさんいらっしゃいます。AARのボランティアとして仮設住宅にお住まいの方にマッサージを実施後、自分でもできるマッサージ方法などについてアドバイスをする理学療法士の江澤麻里子さん(左、2014年12月13日、宮城県亘理町)

もうすぐ震災から4年が経ちます。多くの方がいまだ避難生活を余儀なくされているなか、AAR Japan[難民を助ける会]は毎週末、産業カウンセラーや理学療法士の方々と各地の仮設住宅を訪問してカウンセリングやマッサージなどを行ったり、障がい者の方々が利用する福祉事業所との協働事業など、被災された方々一人ひとりに合わせた支援を続けています。現在のAARの東北被災地での支援活動をご報告します。

被災前を目指すだけでなく

2011年3月11日の東日本大震災から4年。今年3月1日には東京と仙台を結ぶ常磐道が全線開通予定で、太平洋の沿岸を走る鉄道も多くの地域で再開しています。一方で、現在も23万4千人もの方々が、避難生活を余儀なくされています(2014年12月26日現在 復興庁)。AARは震災発生2日後から現地入りし、今日まで岩手、宮城、福島の三県で、特に支援の手が届きにくい障がいのある方、ご高齢の方、原発事故の影響下にある方々へ支援を届けてきました。

マッサージを行うAARの大室和也

「右手が上がるようになった!」仮設住宅にお住まいの方にマッサージを行うAARスタッフで理学療法士の大室和也(左)。「待っていたよ」と、AARの訪問を楽しみにしてくださる方も多くいます(2014年11月23日)

被災当時、特に障がいのある方々やご高齢の方々の中には、それまで利用していた福祉事業所などが被害を受け、居場所を失い孤立してしまう方が多くいました。AARは毎週末、各地の仮設住宅を訪問してカウンセリングやマッサージを行ったり、住民同士の交流イベントを開催。また福祉事業所の復旧を支援するなど、障がい者や高齢者が地域で安心して生活できるよう環境を整備してきました。

しかし福祉事業所の多くは、建物が復旧しても販路を失い、売り上げが著しく低下していました。それでも事業所で働く方々の経済的自立をめざして、「売れる」商品作りや、新たな販路の開拓を模索しています。

かたつむりの皆さんと

「大船渡のおいしいリンゴを食べてみてください!」AARの支援でリンゴ作りを始めた非営利型一般社団法人かたつむり。AARは利用者の送迎用の車両、リンゴ栽培に必要な器具などを提供しました。かたつむりの職員、利用者の皆さんとAARの加藤亜季子(右)、有働幸子(左)(2015年1月15日)

AARは新規事業立ち上げのために必要な設備を整えたり、企業や専門家を交えた商品開発や、販路拡大のためのノウハウを伝えるセミナーの開催など、それぞれの事業所の悩みに合わせた支援をしています。今、AARが支援してきた福祉事業所が主体となって、新たな商品づくりに取り組む例も生まれています。例えば岩手県大船渡市の非営利型一般社団法人かたつむりは昨年から、農家の高齢化によって手入れの行き届かなくなった田畑を借り受け、丁寧に作ったリンゴやお米の販売を始めました。「おいしい!」と全国から注文が届いています。

岩手県山田町、福祉事業所の挑戦「私たちも地域のために」

山田町の仮設住宅にて

外出の機会が減りがちな仮設住宅にお住まいの高齢者の方々を招いてのお茶会の様子。県内のミュージシャン(右)による楽しいパフォーマンスなどの催しも(2014年9月30日)

岩手県山田町は、三陸海岸のほぼ中央に位置する、世界でも有数の漁場です。しかし、震災では津波により死者・行方不明者合わせて820名もの方々が犠牲になるなど、甚大な被害を受けました。障がい者が利用する社会福祉法人やまだ共生会「やまだ共生作業所」は、海から離れた場所にあり、幸い津波の被害は受けず、被災直後は地域の避難所にもなりました。 AARは震災直後から、やまだ共生作業所の職員と協力して、物資配付をはじめさまざまな活動をしてきました。現在もご高齢の方や、障がい者の方が通院するための車両の運行や、高齢者の孤立を防ぐためのお茶会開催などを支援しています。お茶会では、看護師や衛生士を招いての健康法講座なども実施しています。 2013年、やまだ共生作業所は、全国から寄せられた支援への感謝を込めて、山田町の美味しい海の幸を届けようと海産物の販売を開始。小さな冷凍庫では販売量が限られるため、AARは大容量の冷凍庫を提供しました。四季折々の海の幸を、全国に届けています。 理事長の佐藤照彦さんは「私たちは、海のお蔭で暮らすことができています。利用者の工賃向上と同時に、少しでも山田町の復興の役に立ちたいです」と、力強く語っていました。

福島県郡山市から ある福祉事業所の呼びかけで実現した協働

ぽるぼろん製作

「ぽるぼろん」の生地の型抜きをする郡山市の(社福)ほっと福祉記念会「CAFE Sweet hot(カフェ スイート ホット)」の利用者(2014年9月9日)

福島県郡山市には、福島第一原子力発電所から30キロメートル圏内にある双葉郡から多くの障がい者が避難しています。郡山市にある特定非営利活動法人「しんせい」は、ふるさとを離れた 障がい者が、生きがいや役割を持って生活していけるよう、仕事を通じた居場所づくりに取り組んでいます。 2013年11月、しんせいは、県内の福祉事業所を取りまとめ、震災を機に生まれた企業やAARとのつながりを活かした商品開発をしたいと、焼き菓子「ぽるぼろん」作りの取り組みを始めました。日清製粉グループが製菓技術を指導、AARはパッケージデザインや調理器具などを支援。またちらしの作成や、東京で企業や市民向けにお披露目会を開催するなど広報面でも協力しました。 2014年10月の発売直後から多くの注文を受け、事業所では毎日、障がい者の方々がそれぞれの役割に応じた仕事に熱心に取り組んでいます。県内の11の事業所が協力して作るので、大量の注文も受けられます。 しんせいの理事・富永美保さんは、「『ぽるぼろん』作りや広報活動を通して、利用者のみなさんは仕事に誇りが持てるようになったようです」と話してくれました。

2月25日(水)、東日本大震災から4年 活動報告会「福島の障がいのある方々の復興とチャレンジ」では、しんせいの理事・富永美保さんをお迎えします。

前よりも良いことが一つでも増えるように

現場にいると、被災された方の声すべてに応えることができずに苦しい思いをすることもあります。まだまだ取り組むべきことがあると痛感させられます。しかし、仮設住宅に行くと「今日みたいに楽しい日があるとがんばれる」と言われたり、福祉事業所の職員の方から「利用者の表情が日々明るくなり驚いています」、「商品の販路が広がり県外から注文が来ました」などの声もいただくようになっています。 一人でも多くの方が、震災前よりも少しでも良いと思える状況が増えるよう、また復興から取り残される方を一人でも減らせるよう活動を続けていきます。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東北事務所長 加藤 亜季子

2013年4月より現職。英国の大学院で社会開発を学び、政府系研究機関、在外公館勤務を経て2010年AARへ。(東京都出身)

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