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シリア難民支援:ストレスにさらされた子どもたちを支える

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AAR Japan[難民を助ける会]は2012年よりトルコ南東部のシャンルウルファ県に事務所を構え、シリア難民支援を実施しています。シリアから逃れてきた方々は、住み慣れた家や土地を追われて、大変な思いをしてトルコに辿り着いています。空爆や戦闘で家族を失った方、また自分自身がその被害に遭った方も多くいます。AARは2016年8月より、こうした過度のストレスやトラウマにより生活に支障をきたしてしまった方々への心理的サポートを新たに開始しました。心理的サポートを担当するチームは、同分野での経験が豊富なスタッフにより構成され、AARが契約したメンタルヘルスの専門家から、ストレスからくるさまざまな症状に応じてどのように接し、どのようなケアを行えばいいかなどの研修を受けています。チームの活動内容としては、AARがシャンルウルファ県で運営しているコミュニティ・センターでのカウンセリングのほか、対象者の精神状態を観察し、心理的な負担を減らすことを目指して、定期的に家庭訪問を行っています。また、対象者の家族に対して、日常生活における対象者へのケアの方法などを教えています。

家族を目の前で殺されて・・・

2016年10月20日、日本人職員もチームの家庭訪問に同行しました。この日訪れたのは、シャンルウルファ市で比較的貧しい人々が暮らすヤクビエ地区に住むマルワちゃん(仮名/8歳)とその家族。シャンルウルファ県に近いシリアの都市デリゾールの出身です。

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ジグソーパズルで遊ぶマルワちゃん(中央)と弟のアフマドくん。右は東京事務局の塩塚祐太(2016年10月20日)

2014年にトルコに避難し、母親と15歳と5歳の兄弟、そのほか親族とともに暮らしています。シリアを離れるきっかけとなったのは、彼女の父親と姉(当時12歳)が過激派組織に殺害されたことでした。家族を目前で殺害された彼女は大きなショックを受け、友達や家族に対して、大きな声を出したり叩いたりという攻撃的な態度をとるようになったといいます。シリア難民の中には、トルコ人の子どもたちとのいさかいを避けるため、子どもを外で遊ばせたがらない家族も多く、マルワちゃんも午後学校に行く以外は、一日の大半を家の中で過ごしています。

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ジグソーパズルが完成。このように同じ作業を協力して行うことが、子どもたちのコミュニケーションを円滑にします(2016年10月20日)

マルワちゃんの叔父や母親はとても穏やかで、初めて訪れた日本人の私たちも温かく迎え入れてくれました。マルワちゃんは、私たちと一緒に訪れた、この日で4回目の訪問となるAAR現地スタッフのファリーダに駆け寄り笑顔を見せていましたが、恥ずかしがり屋なのか、初めは見知らぬ日本人の私を警戒しているようでした。前職でもメンタルヘルスワーカーとして働いていたファリーダは、マルワちゃんや弟のアフマドくん(5歳)と、彼女たちの精神状態を観察しながら、家族や友だちの絵を描いたり、ジグソーパズルで遊んだりして、ストレスを減らします。このような遊びも、専門家がマルワちゃんの症状を軽減するために、必要だと判断したものです。

マルワちゃんはときおり弟を叩いたりする仕草を見せるそうですが、ファリーダと遊んでいるときは二人とも仲良く過ごしています。遊んでいるうちに次第にマルワちゃんは私にも自然な笑顔を見せてくれるようになりました。ファリーダによると、訪れるたびににマルワちゃんの笑顔が増え、態度も穏やかになり、心理面のサポートは一定の成果を見せつつあります。次回の訪問ではAARのメンタルヘルスの専門家と同行し、これまでのマルワちゃんへのメンタルケアが適切であったかという確認と、今後の支援の継続について判断します。

厳しい生活の中で

子どもたちが学校を卒業するまで教育を続け、マルワちゃんやその家族が本当に安心して生活していけるようになるためには、心理面のサポートだけでなく、経済面や生活環境などの改善も必要です。
マルワちゃんの家族は現在、15歳の兄と12歳の従兄が路上でパンを売ったりして生計を立てていますが、毎月の家賃が400リラ(約13,000円)のところ、一日の収入はふたりで20リラ(約650円)、1ヵ月の収入は300リラほどしかありません。一家は、現在別の支援団体から家賃の補助を受けています。不安定な環境の中、難民となった子どもたちの将来は不透明なままです。

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マルワちゃんの母親が振る舞ってくれたシリア料理。パンに「ザータル」(左下)というスパイスとオリーブオイルを付けて食べます(2016年10月20日)

この訪問でマルワちゃんの母親が私たちに、シリアの料理を振る舞ってくれました。厳しい生活の中でも訪問者をもてなしてくれるシリアの方々の寛大さに、心が温かくなりました。
AARはこれからも、マルワちゃんのように難民となった子どもに寄り添った支援を続けていきます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 塩塚 祐太

2016年6月より東京事務局でシリア難民支援を担当。大学院時代に8ヵ月間パレスチナへ留学、修了後は対パレスチナ日本政府代表事務所で3年間開発プロジェクトに携わる。もっと広い視点で中東問題をみようと、シリア難民支援を行うAARへ。福岡県出身

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