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「自分の人生は自分で変える」障がいを持つ女性たちの挑戦

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タジキスタンでは社会福祉制度が未整備で、政府による障がい者年金は月額わずか80ソムニ(約1,600円)。主食のパンを1日1枚買えば無くなってしまうほどしかありません。AARは障がいのある方々とその家族を対象に職業訓練を実施し、自立を支援しています。駐在3年目の中川善雄が報告します。

障がいのある方とその家族が職を見つける難しさ

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ザリナさん(27歳・写真左)は歩行障害があります。AARが実施する職業訓練の調理コースに参加し努力を重ねた結果、高級ホテルの料理人として採用されました(2013年6月13日ドゥシャンベ・セレナホテルにて。右はタジキスタン駐在の中川善雄)

タジキスタンは旧ソ連諸国の中で最も経済的に苦しい国とされ、正確な統計はありませんが、失業率はかなり高い状況です。障がい児のための数少ない寄宿舎学校は、教育の質も十分とは言えず、障がい者が教育を受ける機会は限られています。そうした中では、たとえ障がいの程度が軽くても、障がいのある方が仕事を見つけるのは容易ではありません。
福祉施設が整備されていないため、障がいのある方のいる家庭は、家族の女性がつきっきりの介助と家事に追われています。さらに一般の家庭よりも医療費や病院の交通費などの出費がかさみます。障がい児の母親たちから、在宅でも収入を得られる技術を身につけたいという要望を受け、AARは2011年より障がい者とその家族を対象に職業訓練コースを開始しました。

洋裁や調理の技術が即収入につながります

2011年は洋裁、調理コースを実施し、これまで81名の障がい者とその家族が受講しました。
タジキスタンの女性は、普段着る伝統服をオーダーメイドで作る習慣があり、洋裁技術を身につけていると親戚や近所の人が注文してくれ、収入を得る機会が増えます。また、タジキスタンでは手作りの料理やお菓子をスーパーや食堂に持ち込んで販売できるため、いろいろな料理やお菓子を作れることが収入へと結びつくのです。調理コースでは、通常のクラスに加え、現地の高級ホテルの協力を得て、受講者がホテルの厨房で実地経験を積むことができました。多くの受講生たちは、個人で洋裁や料理の注文を受けたり、レストランなどへの就職が決まるなど、収入が向上しました。まだ収入を得ていない卒業生たちのフォローアップも行っています。

「このまま私の一生が終わってしまうのは嫌でした」
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就職したドゥシャンベ・セレナホテルの厨房で、同僚と料理するザリナさん(右)

AARが実施する職業訓練の調理コースで学び、ホテルの料理人として採用されたザリナさん(27歳・右)。1歳半のときに転倒して右足をケガした後、適切な治療を受けられなかったため、現在も歩行障がいが残ります。
以前は掃除の仕事をしていましたが、「このまま私の一生が終わって良いのか。何か別のことに挑戦してみよう」と調理コースに参加しました。「日本の皆さまのおかげで私の人生は変わりました。私は今、本当に幸せです。人生が変わるきっかけとなった、職業訓練の機会を与えていただき、本当にありがとうございます」「努力を続けていれば、夢は必ず叶います。自分の人生を自分自身で変えるという意志を持って、前へ進みたいです」と話してくれました。

美容やマッサージで自活の道を

2012年からは美容とマッサージの訓練コースも実施しています。
美容コースでは、現在25名がメイクとヘアスタイリング、マニキュアの技術を学んでいます。首都ドゥシャンベでは髪を染めたりマニキュアをしたりと、控えめながらおしゃれを楽しむ女性が増えてきています。下肢に障がいを持っていても、メイクやマニキュアなどの作業ならば座ってできるうえ、比較的少額で道具を揃えることもできます。美容に対する関心が高まり始めたばかりのタジキスタンでは、まだ競争が激しくないので、基本的な知識を身につけていれば、自宅で開業したり、美容サロンで働く可能性が広がります。

「障がいがあっても、できることがあるんだと知りました」
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眉毛を整えて帰宅したら、夫が褒めてくれて、とっても嬉しかったというディロロームさん(右は中川善雄)

生まれつき聴覚に障がいがあるディロロームさん(37歳・左)は、AARの美容コースで講師の唇の動きを見たり、動作を真似しながら学んでいます。
「家族に頼ってばかりでなく、自分で収入を得るための技術を身につけたいとずっと思っていました。私のように聴覚障がいを持っていると、講師が手話ができないと難しいですし、コミュニケーションを取りづらいという理由で受け入れてくれるコースはありませんでした。けれどもこの美容コースは私を受け入れてくれました。今は毎日学ぶのがとても楽しいです。将来は学んだ技術を、自分と同じ障がいのある子どもたちへ伝えていきたいです。そして、私のように、耳が聞こえなくても、うまく話すことができなくても、できることがたくさんある、働くこともできるんだということを、知ってほしいです」。

講義を録音したCDを配付


マッサージコースでは、12名の弱視や全盲の視覚障がい者とその家族が解剖学の基礎とマッサージの実技を学び、マッサージ師を目指しています。受講生の中には全盲で点字教育を受けていない方もいるため、講義を録音したCDを配付し、誰でも学びやすいように配慮しています。

「早くマッサージ師になって、収入を得たい」
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マッサージ師を目指すマブズナさん(右)。実技の時間も熱心に講師の指導を受けます

マブズナ・ヌルボエバさん(23歳・女性)は、生まれたときから視覚障がいがあり、自分で働いて生活したいと強く思い、AARのマッサージコースを受講しました。身体が華奢で、当初講師からはマッサージをする力が弱いのではないかと心配されましたが、彼女の「どうしてもマッサージ師になりたい」という熱意が受け入れられました。
「私は学校教育を受けていないので、技術がないと働くことはできません。これまでは、母親が働く幼稚園のアシスタントをしていましたが、園児の親からは『どうしてうちの子を障がい者が働いている幼稚園に通わせないといけないの?』と、辛いことを言われたこともあります。新しく来た園長も視覚障がい者が園内で働くのを嫌ったため、働きにくくなりました。そんなときにマッサージコースのことを知り、どうしても受講したいと思いました」と語ってくれたマブズナさん。現在はコースで熱心に技術の習得に励んでいます。

タジキスタンで私が出会った障がいのある方々は、理不尽なことを多く経験しながらも、より良い暮らしをしたいと懸命に努力していました。これからも、障がいの有無に関わらず、一人ひとりが持っている力を発揮して生活できる社会を目指し、支援を続けていきます。

※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、公益財団法人日本国際協力財団、フェリシモ基金、連合・愛のカンパからの助成を受けて行っています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

タジキスタン事務所駐在 中川 善雄

2011年3月よりタジキスタン駐在。大学卒業後、日本国内の人道支援団体で4年間勤務。海外の現場を志しAARへ。「タジキスタンでは家族の絆や温かさを実感しています」 神奈川県出身

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