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ミャンマー避難民:62万人が殺到する難民キャンプの現状

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今年8月にミャンマーのラカイン州北部で発生した、イスラム系少数派からなる武装勢力とミャンマー治安部隊の衝突の後、膨大な数の避難民が隣国のバングラデシュに逃れています。その数はこれまでに約62万人にのぼり、最低限の生活もままならない状況に置かれています。AAR Japan[難民を助ける会]の緊急支援チームは今後の支援に向け、避難民の人々に直接聞き取り調査を行いました。

殺到するミャンマーからの避難民

バングラデシュ南西部、コックスバザール県にある避難民キャンプの入口に車を停めて歩いていくと、丘陵地帯が螺旋階段のように切り拓かれ、そこにびっしりとテントが建てられていました。細い竹を組み合わせ、ポリ袋のような黒いビニールを張り付けただけのテントです。そのなかで人々は地面にゴザを敷いて寝ていました。隣国ミャンマー北部のラカイン州から逃げてきた、イスラム系少数派の人々です。

避難民キャンプの様子。ほぼ全世帯が、雨風すらしのげない竹やビニール袋で作られたテントで生活しています

ほぼ全世帯が、雨風すらしのげない竹やビニール袋で作られたテントで生活しています(2017年11月7日)

彼らは、1982年の「国籍法」によりミャンマー国民として認定されず、移動や結婚の自由が認められない、公教育が受けられないなど、人権が著しく侵害されるようになりました。それを受け、大量のイスラム系少数派が隣国などに避難。その後、2012年のイスラム少数派と仏教徒の衝突、2016年のイスラム少数派の武装勢力と政府軍との大規模な衝突などもあり、30万もの人々がバングラデシュに避難していました。さらに、今年8月25日に発生したラカイン州北部でのイスラム少数派武装勢力とミャンマー治安部隊の衝突を契機に、わずか2ヵ月余りの間に約62万人が戦闘を逃れ、バングラデシュに避難する事態に発展したのです。

ウキア郡にあるハキンパラ難民キャンプは、今年8月以前には140人が居住しているにすぎませんでした。しかし、その後急速に人口が膨らみ、11月7日には約5万5,000人にのぼっています。1日あたりの流入数は減ってきているものの、11月5日からの3日間だけでもその数は2,800人にのぼり、そのスピードは凄まじいものがあります。

「ここは平和なので帰りたくない」

AARが訪れたコックスバザール県には90年代に政府によって設置された2つの避難民キャンプと、そこに入りきれない避難民が集まった多くのキャンプがあります。キャンプに身を寄せる人々は、故郷で何があったかを口々に語ってくれました。1ヵ月前に逃れてきたというアボリトヨさん(62歳)はある日突然、自宅を「出ていけ」といわれ、5人の子どもたちと妻とともに家を出ざるを得ませんでした。足に障がいがありながら20日間かけてキャンプまで歩いてきたソエムタアローンさんは家を燃やされました。また、ファティマカトゥンさん(35歳)は頭を殴られてけがをさせられたうえ、親戚は襲撃によって亡くなったといいます。父親が銃撃されたというヌルリスラムさんは「ここは平和なので帰りたくない」と話しました。

1ヵ月前に逃れてきたというアボリトヨさん

1ヵ月前に逃れてきたというアボリトヨさん(右)(2017年11月7日)

ファティマカトゥンさんに話を聞くAARの古川千晶

ファティマカトゥンさんに話を聞くAARの古川千晶(左)(2017年11月7日)

足りない物資、懸念される衛生状態

トイレに隣接する井戸

トイレ(奥)に隣接する井戸。衛生環境の改善が急がれます(2017年11月11日)

テントが隙間なく埋め尽くされたキャンプで話を聞いていくと、避難民の数と流入のスピードに支援がまったく追いついていない実態が浮かび上がりました。2週間前に来たばかりというソヨドイスラムさん(35歳)は、物資配付を受けるための登録ができておらず、周囲の人に食料をわけてもらっていました。食料の配付を受けられている女性たちも「家族に食べさせるには足りないが、お金を持っていないので市場で何か買うこともできない」と訴えます。大事に身に着けていた指輪やネックレスなどの金製品を売って、現金に換えたと話す女性もいました。一方で9人家族のハジダバゴンさん(30歳)は食料は足りているものの、毛布は2枚しかなく、また電気もないため、「ソーラーライトが欲しい」といいます。調理に使う薪にするため周囲で木の根を掘ってきたというアブドゥル・カーデーさん(62歳)は、「ミャンマーではちゃんとした家で暮らせていたのに...」と泣きながら話してくれました。

30センチほどしか深さのない便槽

トイレに使われる便槽(2017年11月15日)

こうした物資の不足もさることながら、衛生状態も深刻です。トイレや水道はあるものの、30センチほどしか深さのないトイレは2日も経てば溢れてしまい、使い物にならない状態です。また水道がトイレのすぐ横に設置されていて、水の安全性もまったく確保できていません。生活排水やゴミの処理も追いつかず、強い異臭が漂います。診療所を訪ねてみると、「下痢の症状がある」「熱がある」と心配そうに幼い子どもを連れてきた母親たちがいました。

トイレやシャワーの建設、毛布などを配付

AARはこのような衛生状況を改善するため、現地協力団体とともに、トイレやシャワーの建設などの支援を検討しています。また、来たる冬に備え、毛布などの生活必需品を配付する予定です。皆さまの引き続きのご支援を、どうかよろしくお願いいたします。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 古川 千晶

2010年8月にAARに入職し、ハイチ事務所駐在員として2年間大地震後の復興支援に携わる。2012年1月より東京事務局でアフガニスタン、ミャンマー事業などを担当するほか、2015年ネパール大地震、2016年熊本地震など数々の緊急支援に携わる。大阪府出身

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