駐在員・事務局員日記

「シリアは私の魂。 魂なしでは、生きていけない」―ムナ・アルバドランさん講演記録

2014年04月01日  シリア
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執筆者

トルコ事務所
ムナ・アルバドラン

2013年8月、家族とともにトルコに避難。同年10月よりAARのスタッフとしてシリア難民支援に携わる。「私の話を通して、難民として生きるということに想像力を働かせてほしい」22歳

記事掲載時のプロフィールです

2014年3月5日から11日まで、シリア難民でAARスタッフのムナ・アルバドランさん(22歳 右写真)が来日し、東京(AAR3階交流スペース)、長野(長野県立諏訪清陵高校)、大阪(大阪大学中之島センター)で講演を行い、自身が経験した内戦、避難生活などについてお話ししました。3ヵ所で約170名の皆さまにお聞きいただいたムナさんの講演内容をご紹介します。

シリアの思い出

シリアでは大学で哲学を学んでいました。大学合格通知を手にした時が人生で一番嬉しかった時です。しかし、戦況の悪化で大学には数ヵ月しか通えませんでした。もっと勉強したかったので、今でも学生を見ると羨ましくて悲しくなります。シリアを離れてから、ラマダンのときのことを良く思い出します。ラマダンの約1ヵ月間、イスラム教徒は日の出から日没まで断食します。日が沈むと、友人たちと夜遅くまでモスクの前のカフェでお茶を飲んだり、親戚同士集まって夜通し賑やかにおしゃべりしたり。こうした平和で楽しい日々がずっと続くのだと思っていました。

公園で遊ぶムナさんと姉

公園で遊ぶムナさん(中央)と姉(左)(2006年)

兄と甥

兄と甥(2006年)

戦争が始まった

ムナ・アルバドラン

AAR3階交流スペースにて、自身の経験を語るムナ・アルバドランさん(2014年3月5日)

2011年3月、自宅のあったシリア東部のハサカ県では、水道、電気が断続的に止まるようになりました。ひどいときには15日間も水道・電気なしで暮らしたこともありました。2013年2月ごろからは、武装した男たちが町をうろつき、強盗や恐喝が横行、外出もままならなくなりました。さらに、街角には爆弾が仕掛けられ、夜になると銃撃戦が始まりました。このままでは危ないと、親戚の住むトルコへ家族で避難することになりました。戦闘に巻き込まれて亡くなった親戚や、消息不明になった友人もいます。すべて悪い夢だったらいいのにと思います。

避難先のトルコ・シャンルウルファ県の国境ゲートまでは200キロほどの距離ですが、検問が何ヵ所もあったため、バスで丸1日かかりました。国境のゲートは閉まっていて、シリアから逃げて来た何千人もの人々とゲートの前で2日間野宿しました。家を出てから3日後、ようやくトルコに入国できました。

トルコ・シャンルウルファ県での避難生活

難民としての生活は、経済的にも精神的にも辛いです。私たち難民と、地域の人々との間に交流がなく、お互いの状況に対する理解不足が生じていると思います。「早く帰れ」などと心ない言葉を浴びせられることもあり、動物のように扱われていると感じることもあります。しかし最も大きな問題は言語の問題から、シリア人がトルコで仕事を見つけることが難しいことです。

AARでの仕事を通して見えてきたこと

リストを確認するムナさん

支援物資を配付するため、受け取る方のリストを確認するムナさん(右、2014年1月29日)

私は昨年10月からAARのスタッフとして2,000以上の難民の世帯を訪問し、何より必要なのはトルコでの生活を新たに始めるための支援だと痛感しています。AARは現在シャンルウルファ県で、難民がトルコ語や英語、IT技術などを学び、地域の人と交流を持つことができるようコミュニティセンターの開設を進めています。私もシリア人のニーズを調べ、事業に反映させる仕事に携わります。シリア人の助けになることができるので、AARの仕事をとても誇りに思っています。

「紛争の中でも、夢はあきらめない」

シリアにはすぐに帰りたいです。シリアは私の魂です。誰でも魂が無ければ生きていけません。しかし、内戦の収束には時間がかかると思うので、トルコでの大学進学を目指してトルコ語を勉強し始めました。夢はもう一度大学に戻り、哲学の教授になることです。平和を失い、はじめてその尊さがわかりました。1人でも多くの方に私たちシリア難民の経験を知ってほしいです。

長野県諏訪清陵高等学校の皆さんとムナさん

「(ムナさんの話を聞いて)どんなことがあっても勉強を続けようと思った」「今、私たちにできることは何か考えたい」講演を聞いた長野県諏訪清陵高等学校(長野県諏訪市)の1、2年生の皆さん。中央はムナさん(2014年3月6日)

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