駐在員・事務局員日記

理事長ブログ第29回「『アンネ・フランク最後の日々』から」

2016年04月26日  理事長ブログ
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執筆者

長 有紀枝

2008年7月よりAAR理事長。2009年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授。2010年4月より立教大学社会学部教授(茨城県出身)

記事掲載時のプロフィールです

AAR理事長、長有紀枝のブログです。

 熊本・大分を襲っている地震。未だに揺れが収まりません。改めまして、地震で、そしてその後に続く避難生活の中でお亡くなりになられた皆さまに心よりお悔み申上げます。また被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 AAR Japan[難民を助ける会]では、4月15日より本日26日までに、順次、7名の役職員が現地に入り支援活動を続けております。ご支援くださる皆さまに、心より感謝申し上げますとともに、引き続き、特に災害弱者とされる障がいのある方々やご高齢の皆さまへの支援を念頭に、最大限の努力を続けてまいります。引き続き、ご支援、ご協力賜りますよう、どうぞ宜しくお願い致します。

 さて、本日のブログは、現在の九州を離れ、時間的にも空間的にも遠い、今、ここではない場所、「過去」や「海外」の難民のお話です。この原稿は、熊本の震災前に出張先で書いたものです。一時掲載をためらい、また迷いましたが(現在も迷っていますが)、東日本大震災の折、貧困や困窮の中にありながら、日本の被災状況に心を痛め、さまざまなルートでご支援くださった途上国、紛争下の国々があることを思い起こし、掲載させていただくことにいたしました。

 4月11日からジュネーブの欧州国連本部で開催された、自律型致死兵器システム(LAWS/キラーロボット)の非公式専門家会合に参加してきました。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組み内の会議です。AARが、2013年4月のその創設時から運営委員を務める「キラーロボット(殺傷ロボット)反対キャンペーン(Campaign to Stop Killer Robots)」の一員として、です。この会議についての詳細は、別の機会にご報告したいと思いますが、今日はこの出張途上の機内で見た『アンネ・フランク最後の日々』というドキュメンタリーを見て感じたことなどをつづります。
私は、AARの職員として駐在中の、ボスニア・ヘルツェゴビナで遭遇したスレブレニツァのジェノサイドで、後年、博士論文を書き(拙著『スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察』〈2009年東信堂〉)、また現在は立教大学の教員として、ホロコーストやジェノサイドの予防を考える授業をしています。そうしたこともあり、これまで、ジェノサイドやホロコーストに関係する記録や映像はかなり目にしてきたつもりでしたが、このドキュメンタリーは、学ぶことが多く、授業でも扱いたい番組でした。

 冒頭、「一人の死は悲劇だが100万人の死は統計である」というスターリンの言葉が紹介されていました。同時に『アンネの日記』を通して、読者は、世界がどれほど貴重な人材を何世代にもわたり失ったのか、思い知ることになるというメッセージが繰り返し発信されていたことが胸をうちました。
時代を現在に移せば、まったく同じことがシリアやアフガニスタン、イラクやソマリア、コンゴなどで言えるはずです。紛争下、あまりに理不尽な理由で失われた多くの命を、私たちは報道される数字だけで記憶しがちです。でも、間違いなく、その一人ひとりにアンネのような物語と人生とがあったのです。
 この5年間で、シリアで亡くなった多くの子どもたちが生きていたら、これからどのような思春期や青春を送り、どのような大人になったでしょうか。どのような出会いをし、どれだけ沢山の子どもが生まれ、そしてまたその子や孫へと命がつながっていったことでしょう。シリアの再建の鍵となる人材が育っていたかもしれません。
 あるいは運よく命をつないでも、あまりに過酷な経験故に、その経験の前の時代には、決して戻ることのできない、心と体の傷を負った人たちがどれほどいることでしょう。
 失われたものは計り知れず、そして決して埋め合わせることができません。

 シリア国境では今も、多くの子どもたちが難民として困窮の中で生活しています。せめて彼らの教育を止めないこと。生活の場となる避難先の言語だけではなく、母語の教育を途絶えさせないこと。国際社会の数ある責務の一つだと思います。そして私たち日本人も、どんな状況にあっても、間違いなくその一員だからです。

 今回の出張は、AARでこの問題に取り組んでいる、アドボカシ―チームの若手・松本夏季さんと一緒でした。松本さんは学生時代、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)でインターンをしたこともある、将来が楽しみな若手の一人です。軍縮に関わる、専門知識と経験にあふれる国際キャンペーンの仲間から、NGOが持ちうる高い専門性と限りない可能性を感じてほしいと思っています。

 改めまして、熊本・大分の地震で被災されている皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

(2016年4月26日)

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