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ISO26000(社会的責任に関する手引き)という国際規格が発行しました

2010年11月08日  お知らせその他啓発
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コペンハーゲンでのISO26000総会の様子

デンマークの首都コペンハーゲンで行われたISO26000の総会。事務局長の堀江良彰も参加しました(5月21日撮影 写真提供:CSOネットワーク黒田かをり)

難民を助ける会では、あらゆる組織が社会的責任(SR)を果たして信頼を高め、住みよい社会を創造することを目指し、「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」(通称NNネット)の幹事団体として活動しています。この11月1日、ISO26000(社会的責任に関する手引き)という国際規格が発行しました。
「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」は、本規格の策定にあたり、NPO・NGOセクターからの意見を集約・反映するなどして関わっています。難民を助ける会事務局長の堀江良彰は、ISO/SR国内委員会(ISO26000の国内審議を行うための委員会)の国内委員を務めています。

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NNネットの活動について、詳しくはこちら

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ISO26000について 難民を助ける会事務局長 堀江 良彰

ISOってなに?

ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略で、主に工業分野の国際的な標準を定める民間の非政府組織です。本部はスイスのジュネーブにあります。
国際標準化機構が策定した規格はISOの後に番号をつけて呼びます。これまで18000以上の規格を策定してきました。
元々は、ねじのサイズなどの規格を作っていましたが、現在では、ISO9000(品質マネジメントシステム)、ISO14000(環境マネジメントシステム)など企業などのマネジメントにもその対象が広がっています。

社会的責任の規格が生まれた

1990年代から企業のグローバル化や地球環境の悪化を背景に、企業の社会的責任(CSR)についての関心が世界的に高まるようになりました。この流れを受けて、2000年代に入りCSRに関する国際規格の開発策定の動きが出て、2004年にISOで正式に社会的責任に関する国際規格の開発が決定されました。
当初は、企業の社会的責任(CSR)規格ということで議論が開始されましたが、社会的責任を果たすべきなのは企業のみならずすべての組織であるといった理由から、企業のC(Corporate)をとってあらゆる組織を対象とした社会的責任(SR)の規格を策定することとなり開発が行われてきました。
2005年3月にブラジルのサルバドールで第1回のISO/SRの総会が開催され、以来、5年以上にわたって議論が続けられ、2010年11月にISO26000として発行しました。

この規格では、社会的責任とは、組織の決定および活動が社会および環境におよぼす影響に対して、透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任と定義され、その行動として、以下の4つが挙げられています。

 

  1. 1.健康および社会の繁栄を含む持続可能な開発への貢献

  2. 2.ステークホルダー(組織の決定や活動に利害関係を持つグループや個人)の期待への配慮

  3. 3.関連法令の順守および国際行動規範の尊重

  4. 4.組織全体に取り入れられ、組織の関係の中で実践される行動

ISO26000の特徴

ISO26000には、これまでのISO規格にはない大きな特徴がいくつかあります。
まずマルチステークホルダープロセスで開発されたことが挙げられます。マルチステークホルダープロセスとは、3者以上のステークホルダーが、対等な立場で参加・議論できる会議を通し、単体もしくは2者間では解決の難しい課題解決のために、合意形成などの意思疎通を図るプロセスです。ISO26000規格策定の作業部会は、政府、産業、労働、消費者、NGO、その他(専門家など)の6つのグループから代表を送り出して議論を行ってきました。背景の異なる複数のステークホルダーがテーブルを囲み、合意形成に向け議論を行ってきたのです。また、この開発プロセス全般にわたって、常に途上国の意見も取り入れるよう作業部会の構成にも注意が払われました。

常に将来を見据えた配慮が必要

またISO26000のキーワードとなるものとして、「デューディリジェンス」と「ステークホルダー・エンゲージメント」があります。
デューディリジェンスは、「あるプロジェクトまたは組織の活動のライフサイクル全体における、組織の決定および活動によって起こる、現実および潜在的な、マイナスの社会的、環境的、および経済的影響を回避し、軽減する目的で、これらの悪影響を特定する包括的で積極的なプロセス」と定義されています。つまり、将来発生する可能性のある、ネガティブな影響を回避する行動です。従って、ある時点で責任を果たせばISO26000に規定する社会的責任を果たしたことになるわけでなく、常に将来を見据えてマイナスの影響が発生しないよう配慮し続ける必要があります。

関係する企業や団体を巻き込む

もうひとつの大切なキーワードがステークホルダー・エンゲージメントです。組織が社会的責任を果たしていく際に、投資家、顧客、従業員などのステークホルダーを巻き込むことの重要性が謳われています。
難民を助ける会とISO26000との関わりについて言えば、2通り考えられます。ひとつは組織として団体自身の社会的責任を果たすことでの関わり、もうひとつは企業など他の団体のステークホルダーとしての関わりです。筆者自身も、NNネット(注1)やISO/SR国内委員(注2)としてこの規格の策定に一部ではありましたが関わった者として、今後ISO26000が普及し、持続可能な社会が実現できるよう努めていきたいと思います。

注1:社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(通称NNネット)
NPO/NGOの自発的な参画と連携を通じて、セクター間の対話を促進し、市民セクターの定着と社会的な位置づけの向上を目指すとともに、あらゆる組織が社会的責任と信頼を高め、住みよい社会を創造することを目的として、そのために必要な諸活動を行うネットワーク。難民を助ける会はその幹事団体を務めています。

注2:ISO/SR国内委員
ISO26000の国内審議を行うため財団法人日本規格協会内に設置された委員会。堀江良彰は、上記NNネットの代表協議者として国内委員を務めています。

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