プレスリリース・お知らせ

アルジェリア人質事件に寄せて

2013年01月25日  お知らせ
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アルジェリアのイナメナスで起きた人質事件で、日揮社員や関連会社の方々など、日本人10名を含む数十名の方の死亡が確認されました。大変凄惨かつ残忍な事件で、犠牲になられた方々の恐怖やご無念の気持ちはいかばかりかと、ただただ痛ましく、心よりご冥福をお祈りいたします。またご遺族や関係者の方々のご心情は察するにあまりあり、衷心よりお悔やみを申し上げます。

私たちAAR Japan[難民を助ける会]は、現在、日本を含め世界15ヵ国で難民・避難民支援、障害者支援、地雷・不発弾対策、感染症対策などの支援活動をしております。中には、アルジェリア同様のテロ勢力が活動する国、あるいはその近隣諸国が含まれるため、今回の事件にあたっては、報道機関から当会の危機管理に対するお問い合わせを多くいただきました。
私たちは、これまで同様、今後も駐在員および現地職員の安全に一層配慮し、あらゆる事態を想定し、リスクをできる限り低くするために慎重かつ不断の努力を払いながら活動して参ります。

今回の犠牲者の方の中には、私たちが活動する東日本大震災の被災地、南三陸ご出身の方もおられました。報道で、仮設住宅に一人で住まわれている80歳を超えたお母さまが、「津波ですべて流され、息子の写真1枚、はし一膳も残っていない」と泣かれる姿を見て、そのむごさに言葉を失いました。

昨年末に上梓した拙著『入門 人間の安全保障 恐怖と欠乏からの自由を求めて』(中公新書)の冒頭で世界の5歳未満児の死亡率に触れました。今回の事件の発端ともなった隣国マリの死亡率は、1,000人中178人。ソマリアに続き世界2位の数字です。およそ5人に1人が5歳まで生きられない計算ですが、追い打ちをかけるかのように、昨年発生した内戦とそれに続くフランス軍の武力介入とで、新たに40万もの人々が難民・国内避難民となることが予想されています。

今回のテロリストたちは、一体どのような子ども時代を過ごしたのでしょうか。テロのない世界を作る、遠回りに見えても着実な方法は、武力介入ではなく、国際協力を通じ、貧困や紛争にあえぐ子どもたちの「人間の安全保障」を確保することだと思います。

皆さまのご支援をいただき、私たちAARが行っている活動は、最も困難な状況にある子どもたち、飢えや干ばつに苦しむ人々、障害のある方、故郷を追われた方々、感染症に苦しむ方々の「人間の安全」を保障する試みです。私たちにできることは限られています。しかし、それが、私たち市民社会にできる最善の方法であり、世界をより良い場所にすることにつながると、信じています。

昨今の経済情勢の中、ますます内向き志向が強まり、日本の財政状態からみても、国際協力は切り捨てられる項目の中に入りつつあるかもしれません。しかし、グローバル化した現在の社会で、日本一国のことだけを考えても、もはや私たちの安全は保障されません。
官民を通じて日本の強みは、軍事力による介入ではなく、国際協力を通じた国際社会への貢献です。今回の事件を機に改めてそのことを思い起こし、職員の安全に配慮し、活動して参りたいと思います。

改めまして、アルジェリアで起きた人質事件で犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。また解放された方々の心身の傷が少しでも癒えますことを、衷心よりお祈り申し上げます。

AAR Japan[難民を助ける会]
理事長 長 有紀枝

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