パキスタン事務所
大泉 泰
パキスタン:イスラマバードのネコたちを、一挙ご紹介!!
民間企業で勤務した後、2017年1月にAARへ。同年4月より、パキスタン・イスラマバード事務所駐在。趣味は料理とテニス、語学勉強。三重県出身
記事掲載時のプロフィールです
日本ではこのほど、飼い猫の数が飼い犬をはじめて上回ったことが、ニュースになりました。大きな目や耳、さまざまな模様、自由な生活スタイル。ネコの魅力は枚挙にいとまがありません。ネコ好きの皆さまに向けて、パキスタン・イスラマバード事務所駐在員の大泉泰が、日々の暮らしで出会う当地のネコたちをご紹介します。
迷いネコとの暮らし
パキスタンの首都イスラマバードは、ネコ好きにとって楽しい街です。通りや公園、モスク、市場、住宅の屋根の上など、いろいろな場所でネコを見かけます。
2018年7月、生後1ヵ月くらいの子ネコが我が家にやってきました。私が住む部屋のベランダに、ひょっこり現れたのです。近くに親ネコはおらず、どうやら独りぼっちのよう。キャットフードをあげると、がつがつと食べました。
はじめは、片手に乗るくらい小さかったのですが、すくすく大きくなり、今では体重2.5キログラム(平均体重は生後0週で約100グラム前後、半年ほどで2.5~3キロと言われています)。サバトラ柄の美しい毛並みに、すらりと長い26センチのしっぽが特徴です。ウルドゥー語でネコは「بلی(ビッリ)」というので、ビリーと名付けました。
最近は、仕事から帰ると、いつもベランダで待ち伏せをしていて、網戸をひっかき、餌を求めてきます。ご飯を食べて一息つくと、しばらく散歩に出かけるビリー。そして夜9時ごろ、再び「ニャー」と訪問してきます。戸を開けて部屋へ入れると、引き出しのなかに潜り込んだり、飴の包み紙を前足で蹴飛ばしたり、自分のしっぽを追いかけてぐるぐると回転したり...。縦横無尽にはしゃいだ後は、ベッドでごろりん。夜は私の毛布の上で眠ります。ネコの重さを足元に感じると、私もぐっすりと眠ることができます。ビリーは翌朝、再び外へ遊びに行きます。
毛並みもよく、瞳も大きくてかわいいのですが、一つ難点が。頻繁にベッドの下に糞をするのです。家に帰るたびに、前夜に排泄したと思われる糞をほうきで掃き出すのが習慣になりました。部屋のなかにネコ砂を設置しようかと考えています。雄ネコで、はじめは目立たなかった玉袋も、少しずつ大きくなってきました。今後、成長すると発情し、尿を部屋中にする可能性があり、その対応が目下の悩みごとです。
子ネコと出会う
街のネコたちを見ると、だいたい出産は春から秋にかけて行われているようです。今年も、事務所近くで、お腹をパンパンに張って重たそうに歩く母ネコを何度か目にしました。
私が通っているフランス語の語学学校では、ネコの一家族が子育ての真っ最中。茶トラの父母が、三毛と茶白、サビ柄(黒や黄色が混じった柄)の子ネコを育てています。夕方学校へ行くと、3匹の子ネコが母ネコのおっぱいを吸っていて、父親はその横でいつも眠ってばかり。そんな様子を、先生や生徒も微笑ましく見ています。
日本では、最近は避妊手術が浸透したこともあり、子ネコを見る機会は少ないですが、手術がほとんど行われていないイスラマバードでは、頻繁に目にします。
ネコもぜいたくできる街?
イスラマバードの街には、どんなに小さな売店でも、ドッグフードはなくてもキャットフードが必ず置いてあります。身の周りの清潔を重んじるイスラム教は、きれい好きのネコを大切にするからかもしれません。預言者ムハンマドもネコを可愛がっていたそうで、事務所スタッフのババールによると、「ネコを叩いてはならない。叩くなら、(やわらかい)綿で叩きなさい」という言葉も残っているそうです。
キャットフードの定番は、マグロ、ササミ、牛肉の三種類の味があるタイ産の「me-o」。450グラムで300ルピー(1ルピー=0.9円)です。(パキスタンの平均年収は20万ルピー程度)商店で働くイルファンさん(30)は、「ネコの餌は、フランス産プロセスチーズと同じくらい、1日に2、3個売れるよ。どちらも高級品で、買うのはお金持ち。イスラマバードは、お金持ちが多く暮らしているから、ネコもぜいたくができるんだ」と話します。たしかに、スーパーに行くと、ネコ用品がずらり。ヨーロッパ産で、ハラール認証(※)が付いたキャットフードやブラシ、トイレ、おもちゃなど、品ぞろえは日本のペットショップと変わりません。
子ネコ用猫缶を探していたウマルさん(26)は、「僕の家には、サムという名前の1万4000ルピーで買った雌ネコ(生後10ヵ月)がいる。ネコは裏切らないし、一番の親友だ」とニッコリ。白くて美しいペルシャネコの写真を、自慢げに見せてくれました。
しかし、人々に愛されるネコたちも、日々の暮らしは、そう楽ではありません。
私の部屋のベランダではときどき、目つきが鋭く、体重5キロ以上もありそうな雄ネコがやってきます。白地に黒のまだら模様が似ているので、ホルスタインと名付けたのですが、日夜、彼はこの界隈のネコたちを怒鳴り散らし、威嚇し、ときにパンチをします。ビリーもホルスタインを見ると、食事中だろうが一目散に逃げていきます。以前は、毛が汚れた細身のサバ柄の白ネコもベランダに来ていたのですが、あるとき、ホルスタインから殴られたのか、片目を潰してしまい、その後姿を見せません。
ほかにもベランダでは、病気に罹ったのかいつも唾液で口元を濡らしている黒ネコが来たり、昨年夏には、まだ若そうな灰色のネコが死んでいることもありました。
私は、日本の自宅でも「ふく」と「なる」という名のネコを飼っています。イスラマバードの街で生きるネコを見るたび、その二匹が恋しくなり、同時に、日々出会うネコたちも、仲良く幸せに暮らしてほしいと思います。そんなことから、私は毎日、ベランダでネコたちに餌をあげています。
※製品が、イスラム教の教えに沿って製造されていることを示す認証