駐在員・事務局員日記

ラオス:秘境の地で愛される「ラオ・ハイ」

2019年02月26日  ラオス
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執筆者

ラオス・ビエンチャン事務所
森 治彦

大学卒業後、4年間専門商社に勤務した後、青年海外協力隊員としてラオスでバレーボールを指導。赴任中、住民のニーズに応じた細かな支援を行うNGOへの関心が強まり、2018年4月にAARに入職。同年12月からラオスに駐在。神奈川県出身

記事掲載時のプロフィールです

ラオスはインドシナ半島の内陸部に位置し、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーの5つの国に周りを囲まれた自然豊かな国です。北部は山岳地帯が多く、さまざまな少数民族が自然とともに生活しています。近年、その特徴的な衣装や文化を見るため、少数民族の村を訪問するツアーがみられます。カム民族を訪ねた駐在員の森治彦が、伝統的なお酒「ラオ・ハイ」を紹介します。

ラオ・ハイとは

「ラオ・ハイ」はラオスに住む少数民族の多くが独自につくるお酒で、民族や住む土地によって製造方法や味が違います。今回訪れたカム民族の村では、壷でお酒を醸造していました。
カム民族はラオスの中でも比較的人口の多い少数民族(100以上の少数民族が暮らすなかで、人口の10%ほどと言われています)で、その大多数が北部の山岳地帯に住んでいます。訪問したウドムサイ県は特に比率が高く、人口の3~4割はカム民族だと言われています。また、ラオス北部山岳地帯の乾季は非常に霧が濃く、朝は100m先が見えないほど。まさに「秘境」です。

霧がかった道路を車で進んでいる様子 霧のためすぐ前方も見えにくい

ラオス北部の山岳地帯は、11月~3月の乾季の間は霧で覆われ、秘境のような装いになります(2019年1月19日)

茶色い壺が並んでいる パッと見では中にお酒が入っているとは思えないような雰囲気

店頭に並ぶラオ・ハイ。1つ600円~700円程度。水で希釈し、1つの壺から約20リットルのお酒を楽しめます(2019年1月20日)

お祭りや来訪者の歓迎で飲まれるお酒

壺の縁には茶色の液体が浮いている

水をいっぱいになるまで入れたラオ・ハイの壷(2019年1月20日)

ラオ・ハイは、ラオスで主食として親しまれているもち米を発酵させてつくりあげます。糖化のための熟成期間は1ヵ月間ほどで、糖分が高いためとても甘く、アルコールの匂いはほとんどありません。民族によっては熟成期間が短いものを好み、その場合は甘みが少なく、アルコールの匂いが強いものとなりますが、基本的に熟成期間の長いものが好まれます。
飲み方はいたって簡単で、熟成したもち米が入った壷に水をいっぱいになるまで入れ、竹のストローで壷に入っているラオ・ハイを吸うように飲みます。

長い竹ストローを入れて、飲む準備は万端

竹のストローを入れて準備万端(2019年1月20日)

カム民族は毎年1月20日前後に新年を迎えます。そのときに新年のお祝いとして飲まれるのがこのラオ・ハイです。新年を迎える1ヵ月ほど前から製造をはじめ、ラオ・ハイが一番美味しくなる時期に、親しい友人や家族、地域の人たちと一緒に飲みながら新年の到来を祝います。
誕生日や結婚式などのお祝いごとや、来訪者を歓迎する際にも、みんなで壷を囲んでラオ・ハイを楽しみます。「これが私のつくったラオ・ハイだよ」と言って飲ませてくれたり、「もう2、3回飲もうよ」と言って自慢のお酒を振る舞ってくれます。帰るころには、みんな顔を真っ赤にして笑いながら「ソークディー(幸運を)」と言い合い、夢見心地で解散します。

「東南アジア最後の秘境」とうたわれるラオス北部ですが、そのなかにもさまざまな民族の暮らしがあり、来訪者を歓迎するラオスのあたたかい文化があります。皆さんもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

2人は笑顔でお酒の入ったグラスを手にして乾杯している

お酒をたしなむ住民のソムサイさんと、駐在員の森治彦(2019年1月20日)

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