タジキスタン事務所
町村 美紗
タジキスタン:アウトドア好き必見
大学で開発学を専攻し、中東地域での文化交流活動や、NGOでのインターンを経験。製薬会社に勤務後、AARへ。2017年9月より現職。北海道出身
記事掲載時のプロフィールです
皆さんは、タジキスタンと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。「まったくイメージがわかない...」という方も多いと思います。赴任前は私もそうだった、と話す駐在員の町村美紗が、タジキスタンの魅力についてお伝えします。
駐在して1年半、皆さんにご紹介したいのは自然の美しさです。タジキスタンは国土の93%以上が山で、その半分以上が標高3,000m超。この地形を活かして、電力のほとんどを水力発電でまかなっています。そして、その山々や湖といった景色が圧巻で、登山やハイキングにぴったりです。
タジキスタン政府は2018年を観光イヤーと銘打ち、観光客の呼び込みに力を入れるようになりました。観光イヤーのロゴが、AARが事業を実施する学校にまで、町のいたるところで見かけます。ロゴには、山歩きをする人が描かれています。やはり政府は、観光にハイキングを推しているようです。
正直にお話すると、日本にいるときはまったく登山に興味がありませんでした。山好きな人に会っても、「なんでわざわざ疲れることするんだろう?」と不思議でしたし、友人から登山に誘われたとき、朝早く起きられなくて結局行けなかった恥ずかしい思い出もあります。そんな私ですが、タジキスタンに赴任し、きれいな山の写真を見て「せっかくだし一度行ってみよう」と思ったのと、首都ドゥシャンベ市内の娯楽の少なさも手伝い、ハイキングに行くことに。それ以来、機会があれば時々山に出かけます。
鮮やかなエメラルドグリーンに輝くのは...
さて、ここからはおすすめのハイキングスポットを3つご紹介していきます。
まずは、タジキスタンで1番の観光名所、イスカンダルクル。「イスカンダル」は「アレクサンドロス大王」、「クル」は「湖」のことです。
ドゥシャンベから車で3時間ほど北西に位置するこの湖は、何といってもエメラルドグリーンの色が特徴的。晴れた日に水面に反射して映る山の美しさは、言葉では表現できないほどです。お椀を逆さにしたような山は、裏側から登ることもできます。
歩いて行ける距離には滝もあり、滝つぼを上から見下ろせるように、足場も設けられているので、スリルを楽しみたい方におすすめです。私は春ごろ訪れたのですが、初夏には雪解け水で水量が最大となり、迫力満点になるようです。
羊の群れで渋滞
また、ドゥシャンベから車で北へ1時間強とそう遠くないホジャ・オビルガルムでは、とてもきれいな景色が見られます。「オビガルム」とは温泉のことで、山間に温泉つきの療養所があります。昨年の春ごろに行った際には牛や羊がたくさんいました。ホジャ・オビガルムに限らずタジキスタンの田舎ではたくさんの羊、ヤギ、牛、ロバといった家畜を見かけます。
羊を夏場過ごす山へ移動させる時期には、田舎の方へ行く際に「羊の群れで道が渋滞するから、時間に余裕を見た方がいい」という会話がされるほどです。羊飼いの人たちは、石で作られた簡素な山小屋で一夏を過ごすそうです。
女性たちが岩になってしまった?
最後にご紹介するのは、ドゥシャンベから車で5時間ほど南のムミノボド郡にある特徴的な形の岩、チルドフタロンです。この奇岩群には、さまざまな言い伝えがあるようです。その一つが、戦の際に敵に見つかって殺されそうになった女性たちが「どうか隠してください」と祈り、岩になってしまったというもの。そう言われると人の形にも見えるような奇岩が連なっています。
岩の周囲を回るようにハイキングをしたのですが、5時間近く歩き、小川を飛び越えたり、小石で滑りやすい道を歩いたりしてヘトヘト。しかし、さすが地元のガイドさんは、普段着に普通の靴、杖代わりの棒一本のみで(水さえ持たずに!)軽々と移動していました。ガイドさんは近所に暮らしていて、普通に山歩きするのでは飽き足らず、奇岩群にも登ったことがあるそうです。
今回ご紹介した場所以外にも、7つの美しい湖があるアロウディンクル周辺、冬にスキーができるサフェダラ、恐竜の足跡が見られるシルケント国立公園などの見所があります。あまり馴染みのない国かもしれませんが、アウトドア好きな方はぜひ一度いらしてみてはいかがでしょうか。たくさんの美しい景色に出会い、素敵な経験ができるはずです。