アンゴラで帰還民のための技術トレーニングセンターを運営しています
アンゴラでは、1975年のポルトガルからの独立以降、2002年まで27年間も続いた内戦により、45万もの人々が難民となって国外に流出しました。2002年4月の停戦を受け、隣国に逃れていた難民の人々は、母国アンゴラに続々と帰還してきています。しかし、帰還民の多くは言語の問題や深刻な職不足などにより、現在でも社会的・経済的に困難な状況で生活しています。難民を助ける会では、こうした帰還民の経済的な自立を支援するため、技術トレーニングセンターの運営を支援しています。
将来は帰還民だけでの運営を目指して
難民を助ける会では、アンゴラ東部モシコ州の州都ルエナで昨年の7月から帰還民のための裁縫技術トレーニングセンターを運営しています。このトレーニングセンターは、難民を助ける会と、ルエナに暮らす帰還民の自主グループであるPAEVT(Programme for Academic Education and Vocational Training)が共同で実施しています。
難民を助ける会は、カンボジアやミャンマー(ビルマ)などで職業訓練校を運営、多くの障害者の経済的・精神的自立を支援しています。PAEVTと共同で運営することにより、難民を助ける会のノウハウを使い、将来的には帰還民自らが、トレーニングセンターを運営することを目指しています。
帰還民グループならではの悩みも
昨年の6月からミシンなどの機材の購入や受講生の募集を行いました。
受講生募集では、先着順を採用。通常、このようなトレーニングセンターでは、受講希望者の家族構成や収入などを調査し、より支援が必要な人が優先的に受講できるようにしています。しかし、このトレーニングセンターはルエナで暮らす帰還民自身によって運営されているので、受講者を決定するのも帰還民自身。もし「この生徒は受講できたのに、あの生徒は受講できなかった。PAEVTは不正を行っているのではないか?」というような噂が流れれば、コースを運営する帰還民が恨まれたり、コース運営を行うことが難しくなる可能性があります。そのようなことを防ぐために、誰が見ても公平な先着順という受付方法をとったのです。
実際に受付を開始すると、14名の定員を大幅に上回る64名の応募がありました。PAEVTでは協議を重ね、より多くの人が受講できるよう、1日1回の予定だった講義を、午前と午後の1日2回に増やし、15人×2クラスの合計30名の生徒を受け入れることにしました。受講者の選定に関しても、先着順というルールを設けたことで特にトラブルは起こりませんでした。
参加費も帰還民自身が決定
実際コースを始めてから問題になったことがあります。それは生徒に払ってもらう受講費です。受講費は月々約600円と設定しました。コース開始にあたり、自分たちも帰還民であるPAEVTのメンバーが、女性の帰還民でも支払いが可能であると判断した額です。無料でコースを提供するという選択肢もありましたが、お金を少しでも払うことで積極的に参加する意欲が生まれることを考えて有料としました。
しかしながら、コース後半になった頃から、この600円が払えないため、コースに参加することに恥ずかしさを感じ、来なくなる生徒が出てきました。
PAEVTのメンバーは、話し合いを持ち、途中で来られなくなってしまった生徒に関しては、次期のコースに、今回よりも安い参加費で参加してもらうことに決めました。5ヵ月のコースを最後まで修了した受講生は30人中17人でした。最後まで終了できたのは受講生の6割、というのはまだまだ改善の余地があるといえるでしょう。現在、コースを修了した受講生は、センターが自習用に開放しているミシンで服の作成を行っています。今後は、この受講生を対象に、より高度なクラスを開講する予定です。
今回のコースはPAEVTが実施した初めての活動でした。内戦が終わり、無事祖国に戻ってきても、仕事も学校も病院も不十分で厳しい現実が待っています。人々の暮らしを再び築くためには、とても長い時間がかかります。今後も、この活動が現地に定着し、人々の生活再建の手助けになるよう、支援活動を行っていきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 堀越 芳乃
2005年4月より東京事務局でアフリカ事業と啓発活動を担当。アメリカの大学院で国際政策を学んだ後、南米ガイアナで国連ボランティアとして国際機関に勤務。その後、難民を助ける会へ(東京都出身)