シリア難民支援:トルコで祝う「子どもの日」
4月23日はトルコの「国民主権と子どもの日」。この日AAR Japan[難民を助ける会]は、トルコの家族社会政策省やほかのNGOなどの団体と共催で、トルコ人とシリア難民の子どもたちに向けた屋外イベントを開催しました。トルコ駐在員の五味さおりからの報告です。
子どもたちも大興奮の野外イベント
「子どもの日」と言えば日本では、鯉のぼりを飾ったりかしわ餅を食べるなどして各家庭が子どもの成長を祝い、今後の幸せを願いますが、ここトルコでは、国ぐるみで大々的に子どもの日をお祝いします。
もともとこの日は、1920年4月23日に初めて開会されたトルコ大国民議会(国会)の設立記念日であり、建国の父ムスタファ・ケマル・アタチュルクから子どもたちに贈られた日です。1921年に「4月23日国民の祝日」として始まりましたが、その後、「子どもの日」などの名称を経て、現在の「4月23日国民主権と子どもの日」となりました。以来、この日には大統領、首相、各大臣、国会議長の席に、子どもたちを招待することが慣習となっています。ほかにも各種の行事を行い、トルコ国営放送が各国から子どもたちを招待して、イベントを行っています。
AARがシリア難民支援活動を行っているトルコ南東部のシャンルウルファでも、街の中心にある広場で、子どもを対象にしたイベントが催されました。街の子どもたちなら、トルコ人であってもシリア難民であっても、誰もが参加できるイベントです。まず、中央のステージでは各団体から選ばれた子どもたちがダンスや歌を披露しました。AARからは、AARが運営するコミュニティセンターに通う6名のシリア難民とトルコ人の子どもたちが、音楽の講師とともにシリアの子どもに関する歌や、トルコの有名な歌謡曲を披露。真っ青な空の下、一切緊張の色を見せずに、とても力強く楽しそうに歌う子どもたちの姿が印象的でした。
また、このステージの周りのブースでは、さまざまな工作を子どもたちが楽しめるようになっています。AARもブースを出展し、コミュニティセンターで働く図画の講師とスタッフが、訪れた子どもたちにフェイスペインティングを施したり、動物のマスク作りを教えたりしました。多くの子どもたちが押し寄せ、ブースは大混雑。嬉しい悲鳴をあげつつも、イベント中ひっきりなしに訪れる子どもたちに掛かり切りのスタッフは、本当に大変そうでした。
残るスタッフは、コミュニティセンターに通う30人のシリア難民の子どもたちをグループに分けて引率しながら、ブースを巡ったりステージを観覧しながら楽しみました。私自身はおとなしい女の子たちのグループだったので、大分楽でしたが、元気な男の子たちを引き連れた同僚は、あっちに行ったりこっちに行ったりする子どもたちを一ヵ所に集めるだけでも一苦労。このような大がかりなイベントに参加する機会があまりないせいか、普段より数段はしゃぐシリア難民の子どもたちの有り余る体力に振り回される大人の姿は、どこの国に行っても変わらないな、と笑ってしまいました。私のグループの女の子たちも、余所行きのおめかしを精一杯していて、手を繋ぎながら仲良くブースを周る姿が非常に可愛らしかったです。
子どもたちは帰りのバスの中でも音楽に合わせて歌い踊るなど、最後まで大はしゃぎ。元気に走り回る子どもたちの引率に加え、照り付ける太陽にシリアから強く吹く季節風もあり、スタッフ一同へとへとに疲れ切ってしまっていましたが、こうして心から楽しむ子どもたちの笑顔を見ると、一日の疲れも吹き飛びました。これからも引き続き、シリア難民の子どもたちが辛い経験を一瞬でも忘れ、笑顔になれるような活動を続けたいと思います。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
トルコ事務所 五味 さおり
2017年2月よりトルコ事務所駐在し、シリア難民支援に従事。アメリカで育ち、大学卒業後に日本へ。大手広告代理店で3年半働いたのち、AARへ。