東日本大震災:"自主避難者"を支える場所
東京に暮らす避難者6,000人
東日本大震災から6年以上が経過した今も、地震や津波、原発事故の影響を受けた故郷を離れ避難生活を続ける方々は10万9,000人、うち東京に暮らしている方は約6,000人にのぼります(4月28日現在、復興庁)。発災直後から継続して被災地で活動を続けてきたAAR Japan[難民を助ける会]は、避難者支援団体「むさしのスマイル」を通じて、東京にいる避難者の方々への支援を開始しました。「むさしのスマイル」は、福島市から幼い子どもたちを連れて東京で避難生活を続けている岡田めぐみさん(下写真)が代表を務め、東京都内に暮らすボランティアの方々が支えています。4月28日には「むさしのスマイル」主催で、避難者の方々が気軽に立ち寄れる茶話会「よらんしょサロン」を実施しました(右写真)。「よらんしょ」は福島の言葉で「お立ち寄りください」の意味。この日は福島県などから避難している16名の方が集まって情報交換し、近況を語り合いました。
減り続ける交流の場
岡田さんは、避難指示の出ていない区域から逃れてきた人たちが、やむを得ず避難しているにもかかわらず"自主避難者"と呼ばれることに違和感を感じるといいます。"自主避難者"のなかには、「避難の必要性が公に認められていない」などと気に病み、周囲に事情を打ち明けられない人も多くいます。宮城県出身の男性は「被災地から来たということを隠して生活している人もいる」と話します。男性も避難してしばらくは東京に知人が誰もおらず、インターネットで避難者同士の交流の場を探したといいます。「人間は孤独になると絶望する。こういう場所の大切さは大規模な災害に遭ってみないとわからないかもしれませんが...」。また「むさしのスマイル」事務局の梅田洋介さんは、こうした交流の場は、物理的な事情などからなかなか参加できなくても、避難者にとっては「何かあったらあそこに行けばいい」という心の支えにもなっているといいます。3月末には福島県内で出ていた避難指示も続々と解除されましたが帰還する人は少なく、「皆"自主避難者"になってしまった」と岡田さん。そんな状況にも関わらず、被災から6年が経ち、交流の場は資金難などからどんどん減っているのが現状だとのことでした。
経済的に苦しい生活を強いられる人も...
"自主避難者"も故郷の自宅を離れることにより、さまざまな出費を迫られ、経済的に苦しい生活に陥る人がいます。行政からの唯一の支援だった住宅の無償提供も3月末には打ち切られました。事務局によると、引っ越し費用もなくほかに行く当てもない方たちが、少なくとも東京都内に200世帯ほどいるとのことです。「むさしのスマイル」ではこうした方たちが強制退去を迫られないよう支援しながら、引き続き避難者が安心して語り合える「よらんしょサロン」など交流の場を設け、"自主避難者"の現状について発信する「かたりべ隊」を発足させるなどして活動を続ける予定です。
AARは今後、東北の被災地の仮設住宅に残っている方々や避難指示が解除されて故郷に帰還された方々への傾聴活動などを継続するとともに、故郷から遠く離れ避難生活を続ける方々への支援を実施していきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
仙台事務所 大原 真一郎
製造メーカーでの勤務を経て、2011年8月より現職。仙台を拠点に岩手、宮城、福島の被災地に毎日のように足を運び、復興支援を行う。宮城県仙台市出身