ザンビア:安全な出産を支える
医療施設が近くに存在しないザンビアの医療過疎地においては、妊婦や赤ちゃんの異常や危険な症状を早めに発見し、応急処置を施し、遠方の医療施設に少しでも早く送り届けることが、命を守ることに繋がります。しかし、広大な土地に村が点在し、医療従事者も少ないため、ザンビア保健省から派遣された助産師による巡回診療の補佐などの面において、コミュニティに暮らす地域ボランティアの役割が非常に重要となっています。AAR Japan[難民を助ける会]は、2016年2月からカフエ郡チサンカーネ地域で、母親と子どもの健康を守るためのプロジェクトを行っています。10月31日から11月5日にかけて、地域ボランティアの方たちにお母さんと赤ちゃんの命を守るための研修を実施しました。
お母さんと赤ちゃんを守る研修
このたび、約100名の地域ボランティアの中から、50名を「安全なお産推進グループ」として選抜し、うち25名にAARが実施する第一回目の母子保健推進研修に参加してもらいました。グループの選抜はそれぞれの出身地域のバランスや地域ボランティアとコミュニティとの信頼関係などを考慮して行いました。この研修では、地域ボランティアが妊娠時の危険な症状や母乳による育児のメリット、新生児の体調不良の兆候や対処法など、母子保健全般にかかる知識・技能を習得します。
地域ボランティアの中には、字の読み書きができない人もいます。そのため研修ではロールプレイや図を用いた講義を実施するなど、参加者全員が内容を理解できるように配慮しています。ロールプレイの1つでは、妊婦が出産後に出血が止まらない状況を想定し、その際に地域ボランティアが出血を抑える応急処置を施し、水分補給を促し、医療施設に搬送する手順を学びました。また、応急処置の際に、妊婦をどのような体位にして布を巻くかなど、参加者たちは講師のお手本をもとに実際に練習し、みんな真剣に取り組んでいました。ほかにも、字が読めない人でもわかりやすく覚えられるように、ザンビア伝統の歌に乗せて、歌やダンス、身振り手振りを使って母子保健の知識を伝える訓練もあり、五感をフルに使う研修となりました。研修最終日には実技テストを行い、理解度をチェックしました。初日の事前テストに比べて大幅に点数が伸び、全ての参加者が満点に近い点数を取り無事研修を修了することができました。
研修を修了したチサンカーネ地域の、安全なお産推進グループ・メンバーたちは、 今後、担当地域特有の母子保健の課題を把握、分析し、解決策を探す役割も担います。参加者のムトゥンジさん(男性) は、「今まで妊婦や赤ちゃんが危険な状態になったときに必要な対処方法がわからなかったが、今回の研修を通してどう対処すればいいかなどの知識を得ることができた。これから、より多くの妊婦や赤ちゃんを助けることができるように、村人たちと知識を共有することにも力を入れていきたい」と意気込みを語ってくれました。
今後も母子保健推進研修を実施し、地域の母親と赤ちゃんを守るために地域ボランティアとともに活動してまいります。
この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ルサカ事務所 金森 大輔
2016年11月よりザンビア事務所駐在。大学卒業後、民間企業での勤務の傍ら、スポーツを通じた東北の被災地支援にも従事。イギリスの大学院へ留学し、ルワンダ内戦の復興プロセスなどを研究。フランスへの語学留学などを経て、「国際社会の中で日本人として何ができるかを考えていきたい」とAAR へ。「ザンビアにおける赤ちゃんや妊産婦さんの高い死亡率を少しでも下げられたら」。趣味はサッカー、フットサル。山口県出身