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【東日本大震災から7年】親子一緒に自然体験  西会津ワクワク子ども塾

2018年02月21日  日本
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親子10名程が渡部氏の話を聞いている様子。子どもは早く動きたくてうずうずしているのか、渡部氏の方を見ていない女の子もいる。

地元農家の「めごいな農園」代表 渡部佳菜子氏(左端)から植え方を教わる参加者(2017年6月25日、福島県西会津町)

AARが福島で行う西会津ワクワク子ども塾は、高い放射線量の影響により屋外で遊ぶ機会が減った福島県の子どもたちと保護者を対象に開催しています。県内の放射線量の低い地域で、野外遊びやスポーツ、自然体験、工芸活動や料理づくりなどを、のびのびと楽しんでもらう1泊2日の体験型合宿です。

2012年7月に初めて開催して以来、「何度も参加したい」と言われるほど人気のあるイベントとなり、これまでに23回開催しています。2017年度は、特別日帰り開催を6月25日、従来の宿泊型を7月22・23日、11月11・12日、2月17・18日に開催しました。西会津町と相馬市にそれぞれ「交流農園」と「交流花壇」を作り、西会津町の親子を相馬市へ招いて地域の親睦を図りました。

「芋から植えるのかと思った」

2017年6月25日に、相馬市や南相馬市の親子が西会津町へ行き、地元の農家の方が管理をしている農園の一部を借りて「交流農園」を作りました。植える作物は、秋に収穫ができるサツマイモを選びました。子どもたちは初めて見るサツマイモの苗に「これが本当にサツマイモになるの?」「イモから植えるのかと思った」など声をあげながら楽しそうに芋を植えました。

保護者たちは子どもに「もっと深く穴を掘りなさい」「苗を入れたらちゃんと土をかぶせて」と声をかけながら、久しぶりの畑作業を楽しんでいるようでした。

少年が手にする芋の苗は小学生程の少年の顔より大きい。

葉が茂った芋の苗を手に「本当にこれがサツマイモになるの?」(2017年6月25日、福島県西会津町)

広い農園に数家族の親子が苗を植えている様子

協力し合いながらサツマイモの苗を植える参加者の親子(2017年6月25日、福島県西会津町)

「向日葵が大きく育つと良いな」

2017年7月22日に、初の試みとして西会津町の親子を相馬市へ招き、地域間交流を図るとともに相馬市の震災被害の復興見学を行いました。炎天下の中、交流花壇に色とりどりの花の苗を植え、西会津町から持ってきたヒマワリの種もまきました。「お花の色がキレイで、上手に植えられた」「ヒマワリが大きく育つと良いな」と西会津町と相馬市の参加者同士、話を交えながら花壇を作りました。交流会を兼ねた昼食会は、相馬市の親子も参加し、50名を超えるにぎわいになりました。

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「どの花をどこに植えよう?」色とりどりのお花を前に思考を巡らす参加者(2017年7月22日、福島県相馬市)

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花壇が仕上がった後、みんなで一緒に記念撮影。右端はAARの浅野武治、中央後方の赤いポロシャツはAARの高木卓美(2017年7月22日、福島県相馬市)

「震災復興を見てみたい」と西会津町の親子からの要望もあり、甚大な被害を受けた松川浦にある「ホテルみなとや」の管野貴拓氏と相馬市議会議員の鈴木一弘氏に、震災当時の被害状況のレクチャーを受け、被害地域の見学を行いました。相馬市内でも特に被害者数の多かった磯部地区では、太陽光発電の拠点となる巨大施設や、地元で水揚げされる水産物の加工・販売を行う水産物加工販売センターができるなど、復興の進む様子を垣間見ることができました。

「同じ福島県にいるけど、初めて見に来ました」、「あんなに酷い状況だったのに、こんなに復興しているなんて驚いた」と被害の大きさと、復興の様子を興味深く見学しました。

室内でスライド資料を見ながら真剣に説明を聞く参加者

鈴木一弘氏より被災地域の説明を受ける(2017年7月22日、福島県相馬市)

芝生地帯に太陽光パネルが連なっている

東北地方で最大規模の太陽光発電システム(2017年7月22日、福島県相馬市)

翌朝は大潮ということもあり、松川浦で干潟観察会を行いました。松川浦は日本百景のひとつに数えられ、潮干狩りや海苔の養殖が盛んに行われていましたが、津波による壊滅的な被害を受け現在も急ピッチで復興工事が行われています。相馬市と松川浦観光ガイドの方々の協力を得て、特別に浦内に入り干潟観察会を行うことができました。子どもたちは砂の中を手で掘ってみたり、カニや巻貝など普段なかなか目にすることのない海の生き物に興味津々でした。

川のほとりでガイドの男性の説明を聞く親子

ガイドの説明に熱心に耳を傾ける参加者(2017年7月23日、福島県相馬市)

「子ども塾に参加してから、家でも料理の手伝いをしてくれるようになったんです」

2017年11月の開催では、相馬・南相馬・葛尾村(三春町に避難している親子)の参加者32名が晩秋の美しい西会津町を訪れました。 地元西会津町の蕎麦打ち名人の指導のもと、慣れない手つきで蕎麦を打っていく子どもと、その様子を見守りながら「もっと細く切らないと」「うまくできてるね」と声をかける保護者の姿が印象的でした。名人が打った蕎麦は細く均等な幅ですが、子どもたちの打った蕎麦の幅はバラバラでうどんのような太さに。しかしこれもまた独創的で、茹でて食べると歯ごたえとともに蕎麦の濃厚な味がし、気が付くと子どもも大人もあっという間にたいらげていました。

恒例の外遊びは、相馬市のNPO法人「松川浦ふれあいサポート」のボランティアメンバー発案による、シャボン玉作りと50連の凧揚げです。手元で作る小さいシャボン玉と違い、大きな枠で作る自分の体が入ってしまうほどの大きなシャボン玉作りは、子どもたちを熱狂させました。

自分の身長の半分くらいの大きさのシャボン玉を作る女の子

枠を取り合うほどの白熱ぶりに、大人は顔負け気味...。(2017年11月11日、福島県西会津町)

小学生くらいの少女がシャボン玉を追いかける

子どもたちの無邪気な笑顔が印象的でした(2017年11月11日、福島県西会津町)

空高く舞う凧

青、緑、黄色、ピンクなどカラフルな縁を用いた凧(2017年11月11日、福島県西会津町)

次に、大きな広場がないと到底できない50連凧の凧揚げ遊びを行いました。周りに電柱や樹木など障がい物がないのはもちろんのこと、適度な風が吹いていないと凧はあがりません...。まさに西会津の秋はその条件にピッタリのようでした。

小学校低学年くらいの女の子が大人に見守れながら玉ねぎを切っている

子どもの包丁さばきを温かく見守る保護者(2017年11月11日、福島県西会津町)

夕飯は全員でご飯作りをしました。子どもたちは慣れない手つきで食材を包丁で切ったり、下味をつけたり、ご両親のハラハラする目線の横で、楽しそうにお手伝いをしてくれました。「包丁の使い方にドキドキしたけど、まぁうまくいった方かな」「子ども塾に参加してから、家でも料理の手伝いをしてくれるようになったんです」と子どもの頼もしい姿を前に、保護者の皆さんは誇らしそうに話してくれました。

大人と子どもで鍋やボールを囲み調理する様子

みんなで一緒に作るご飯は一層美味しくて、楽しい(2017年11月11日、福島県西会津町)

カメラを前に満面の笑みをしてくれた少女2人

美味しくできるかな?(2017年11月11日、福島県西会津町)

翌日は、野外活動として6月に交流農園に植えたサツマイモの収穫を行いました。6月に参加した親子も楽しみにしていたメインイベント。思った以上に芋の生育が良く、掘り出すのに一苦労。初めて芋ほりを体験した子どもは、半年前に植えた芋の苗が見事に成長したことに驚きを隠せずにいました。経験のある親子も土だらけになりながら、収穫を楽しみました。

10個近くの芋が連なっている

「こんなに芋がくっついてるなんて思わなかった」(2017年11月12日、福島県西会津町)

抜いた芋を「見て!」と言わんばかりに写真に写る少年

「抜いても抜いてもまだいっぱいある!」(2017年11月12日、福島県西会津町)

子どもたちが焼き芋を美味しそうに口にしている

みんなで収穫したサツマイモは、焼きいもにして美味しくいただきました(2017年11月12日、福島県西会津町)

2017年度最後の西会津ワクワク子ども塾は、2月17日18日に開催しました。豪雪地帯でもある西会津町で、野菜の収穫や雪遊びなど、冬ならではの活動を楽しみました。

広い空の下に広がる松浦川

復興工事中の松浦川。同じ福島県でも地域によって復興の進み具合は異なることを住民の方々と一緒にと目にすることができました(2017年7月23日、福島県相馬市)

参加者からのアンケートでは「6年経っても食材に気を遣っているが、西会津に来たらそんな心配もせずに過ごせます」「除染も終わって放射線は安全だと言われるが、実際に暮らしていると心配でならない。でも子どもが自然の中で笑顔で遊ぶ姿を見ると安心する」「子ども塾で食事作りを覚え、家庭でも手伝ってくれるようになり、会話も増え感謝しています」と好評をいただいております。

これからも西会津ワクワク子ども塾を継続し、親子・地域の交流を大切にしながら、東日本大震災復興支援を続けて参ります。

女の子が満面の笑みを向けてくれました

満面の笑みを向けてくれた女の子(2017年11月12日、福島県西会津町)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 浅野 武治

2011年11月より国内事業担当として、東日本大震災被災地支援や、国内でのイベントの企画・運営に携わる。調理師やステージマネージャーなどを経て、東日本大震災緊急支援のためのチャリティコンサート「故郷」(2011年5月)の運営に携わったことをきっかけにAARへ(東京都出身)

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