国内防災:平時からの連携強化
2018年6月12日から13日の2日間にかけて、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(Japan Voluntary Organizations Active in Disaster:JVOAD)が主催する「第3回 災害時の連携を考える全国フォーラム」が開催されました。JVOADは、災害時に支援の力を最大限活かすために支援者間の連携などを促進するNPO法人で、AAR Japan[難民を助ける会]は正会員団体として加盟しています。AARは、これまで2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震、2017年7月の九州北部豪雨など、国内でも大規模な災害に対して、発災直後から被災者支援を行っています。緊急時に迅速な対応ができるよう、発災時のみならず平時から関連団体との連携やネットワークづくりに取り組んでいます。
過去の成功や失敗が活かされた国際基準
今回のフォーラムでは、11の分科会が開催されました。その1つ、「被災者中心の支援とするために~過去からの学びを活かす~」に、2010年から国内外の緊急支援に携わってきたAARの五十嵐豪が講師として登壇し、被災者や難民に対する人道支援の国際基準であり国連機関や多くのNGOが活動の指針としている『人道憲章と人道対応に関する最低基準(スフィア基準)』や『人道支援の必須基準(Core Humanitarian Standard on Quality and Accountability:CHS)』を紹介しました。
これらの国際基準は、過去の人道支援の成功や失敗から得た教訓をもとにしています。災害や紛争時に支援活動するうえで最低限尊重すべきことをNGOや国連機関などが中心となって具体的にまとめたものです。日本においても、東日本大震災以降は、国際NGOに限らず被災者支援を行う団体や、防災計画を見直そうとする行政機関などで国際基準を学ぼうという機運が高まっています。
本分科会では、これらの基準を学び、防災計画への導入を試みる徳島県や東京都の事例も紹介されました。60名近くの参加者のうち、市町村などの地方行政機関や社会福祉協議会の方が最も多く、災害時の人道的配慮の国際基準に対する関心の高さが伺えました。参加者からは、「スフィア基準やCHSは初めて知りましたが、支援者にとってだけでなく、被災者にとっても必要な知識であり、考え方だと思いました。今後の日本の被災地支援でも応用していきたいです」といった感想がありました。
グループワークで学び合う
2017年7月に発生した九州北部豪雨で、AARは避難所の生活環境改善支援を実施しました。他団体の避難所支援の事例を学びさらに知見を深めるため、分科会「避難所・避難生活における支援」に参加し、避難所支援において困難だった点や問題なく進んだことなどを参加者と共有しました。本分科会の発表者からの情報共有に加え、避難所で発生し得る課題の対応案を参加者で考えるグループワークが実施され、AARはこれまでの支援実績に基づいた具体的な対応案を発表しました。例えば、「避難所内で段差があり車いす利用の方が通れない」という状況に対して「スロープを設置してアクセスできるよう対応した」という実例です。避難所は閉鎖までに長い時間を要すこともあり、避難所生活を少しでも快適に過ごせるよう環境整備することが欠かせません。グループワークの結果は、将来の災害対応に役立てられるよう、JVOADが事例集としてまとめる予定です。
つながりを協働へ発展させる
本分科会にはNPO、行政、社会福祉協議会、企業など、さまざまなセクターから多くの方々が参加していました。グループワークで活発な意見交換がなされていた様子からも、避難所支援という分野に対する注目度の高さが伺えました。AARは、自らの活動を振り返るだけでなく、これまでにさまざまな支援団体が得てきた活動の教訓も活かして、今後の支援活動がより良いものとなるよう取り組んでいます。加えて、今回のフォーラムのテーマ「つながりから協働へ」の通り、平時からの関係構築が被災現場でより効果的な協働につながるという考えのもと、関係各所との連携を強化してまいります。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 田中晴子
大学で国際関係学を学んだ後、民間企業での海外営業職を経て、青年海外協力隊員としてアフリカ・マラウィの難民キャンプや保健所で活動。帰国後2015年10月にAARへ。ラオス、ポンサリー駐在員を経て、現在は東京事務局でミャンマー、ラオス事業、緊急支援を担当。茨城県出身