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第3回は行政の視点から「ナッジ的SDGs体感セミナー」開催しました

2018年11月29日  日本
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1/11(金)4つの視点を通して見る SDGsが目指す世界「ナッジ的SDGs体感セミナー」第4回 午後7時~(東京・薬樹株式会社 青山オフィス)

演台の横に立ち、参加者との距離を近く保ちながら話す水野氏

第3回セミナーの講師を務めてくださった厚生労働省の水野嘉郎氏

企業や団体を中心とした幅広い方々に「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に具体的に取り組むためのヒントを得てもらおうと、AAR Japan[難民を助ける会]は薬樹グループの全面的なご協力のもと、「NGO」「企業」「行政」「社会起業家」の4つの視点でSDGsについて学ぶ、4回連続の「ナッジ※的SDGs体感セミナー」を開催しています。第3回目は「行政」の視点で2018年11月9日、薬樹株式会社の青山オフィス(東京都港区)で行いました。企業関係者を中心に、合計35名の方々が参加くださいました。

※「ナッジ」(nudge)とは、「ひじで軽くつつく」という意味。強制せずに対象者を自発的に好ましい方向に誘導する仕掛けや手法のことで、経済学者のリチャード・セイラー博士が提唱した、行動経済学の概念です。

日本政府の真剣度

前半の講演は、厚生労働省医薬・生活局水道局の水野嘉郎氏から、「日本政府のSDGsに関する取組の全体像と今後の展望」というテーマで、SDGsを行政の視点でどのように捉え、考えているのか、ご自身の担当分野や、これまでのご経験も踏まえてお話しいただきました。
水野氏は、SDGsの重要な特徴として「先進国も含む開発目標である」という点を挙げ、そのことにより、これまで異なる文脈で語られてきた国内課題と国際課題が同じテーブルで語られることがSDGsの持つ可能性の一つであると話されました。
日本政府の取り組みに関しては、総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が設置され、目標達成に向けて関係省庁が一体となって取り組むための実施指針を策定し、子どもの貧困や保健システムの強化など、国内と海外に関する8つの優先課題を定めてアクションプランに落とし込み、計画倒れにならないようフォローアップも定期的に行っているという説明がありました。SDGsに関する政府の取り組みは、政府が毎年発表する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(通称:骨太の方針)に盛り込まれることで、限られた国家予算の中でも優先的に取り組む課題として閣議決定されているという説明もありました。予算編成プロセスの説明を通して、政府がSDGsに真剣に取り組んでいることを解説された場面は、現役公務員ならではの説得力があり、印象的でした。
具体的な事例としては、現在担当されている「水道事業」と、過去に出向先の新潟県で生活保護のケースワーカーとして現場を見てこられたご経験から「国内の貧困問題」について取り上げられました。
水道事業は、国内における「国土強靭化の推進・防災」に関連し、国際的には「質の高い水道技術の国際展開」につながる、という形で、国内政策と国際協力を対比・関連させながら説明され、前述のSDGsの特徴を捉える面でも理解が深まりました。
貧困問題については、誤解されがちな生活保護世帯の実態について、生活保護者の半数以上が高齢者であり、ほかに傷病や障がい者世帯、DV(Domestic Violence:同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力)から逃れた母子世帯などのケースがある実態を解説された上で、政府の取り組みだけでなく、個人が参加できる基金の紹介などを通し、多様なアクターの活躍というSDGsのもう一つの可能性についても話されました。

水野氏が会場の前方でスクリーンを投影しながら講演 参加者34名は真剣にスクリーンを見つめる

SDGsに関する行政の取り組みや、出向先でのご経験に基づきSDGsに関する私見を語られた厚生労働省の水野嘉郎氏

SDGsの実践へ

後半の対談ではゲストとして株式会社オルタナ代表取締役社長で雑誌『オルタナ』編集長の森摂氏に加わっていただきました。
森氏からは冒頭、「アウト・サイド・イン(社会的な課題を起点とし、それを取り込むことで新規ビジネスが生まれるという考え方)」というキーワードのご紹介があり、具体的には株式会社LIXILが途上国で配付している簡易式トイレの開発事例など、企業活動におけるSDGsの活用法の紹介がありました。次に、英国現代奴隷法(企業にサプライチェーン上の強制労働や性的搾取などがあれば特定し、根絶するための手順の報告を求めるもの)を例に、海外での労働問題の事例などを挙げながら、多角的に日本の課題について深掘りされました。最近注目されているキーワードとして「分断」や「難民の受け入れ」などにも話題がおよび、森氏から「これらは対岸の火事ではなく、外国人労働者の受け入れ拡大にも関連し、日本も本気で取り組むべき課題である」との問いかけがありました。それに対し、水野氏からは現場での経験から、「日本にいる外国人というと労働問題など特定の分野に焦点が当たりがちだが、それ以外の医療や教育といった点も含め、一人ひとりがどのような生活や生き方を選択できるか、地域全体での解決策が望まれ、国としても省庁横断的に取り組むべき課題」との見解が述べられました。また、関連して省庁間が連携する例として、経済政策の分野などでは経済産業省と厚生労働省との連携や出向などの人的交流が進んでいるとの紹介がありました。「働き方」の話題では、国会の会期中には政府の答弁の下準備などでなかなか帰宅できないといった話や、省内では男性の育児休業取得が積極的に進められている話などがありました。
2015年にSDGsが採択されてから3年。今後は具体的な実践に向けて組織・団体・個人がより一層変わる必要があること、また数値を設定して進捗を管理することが大事というお話もありました。その後は会場からの質問などであっという間に終了時間を迎えました。

丸いテーブルを囲み、椅子にかけながら互いの意見を論じる2人

後半は、厚生労働省の水野嘉郎氏(左)と雑誌『オルタナ』編集長の森摂氏の対談形式で、会場からの質問にもお答えしました

参加者の皆さまからのアンケートでは「現役の官僚の方からのお話が聞けて良かった」「対談を通じて世界的な課題をリアルに、身近に感じることができた」「働き方改革について、社内で自分たちにできることから始めてみたい」などの嬉しいコメントをいただく一方、「もう少し対談を聞きたかった」「会場を巻き込んだディスカッションができるとよい」などのご要望もありました。前回に続き今回も、ご参加くださった皆さまには、本セミナーでの学びをWorld Shift(ワールドシフト※2)で宣言し、AARのfacebookのイベントページにて共有していただくようお願いしました。
参加者の皆さんからの宣言はこちらからご覧ください。

※2 ワールドシフトとは、「あなたはどのような世界を望みますか?」という問いかけのソーシャルムーブメント。「ワールドシフト宣言ロゴ」に、一人ひとりが、どんな世界を望むかを書き込み、自ら「世界を変える」ことを宣言することで、社会変革が「自分ごと」になっていきます。(WorldShift Network Japanホームページより)。

次回、第4回は2019年1月11日午後7時より、会場はこれまで同様薬樹株式会社青山オフィスにて開催いたします。「社会起業家」の視点をテーマとして、講師に特定非営利活動法人テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也氏、ゲスト対談者として日本財団CANPANプロジェクトの山田泰久氏をお迎えします。たくさんの皆さまのご参加をお待ちしております。

第2回セミナーの報告はこちらから。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

元東京事務局 木下 聡氏

2014年1月から2018年7月までAARに所属。仙台事務所での福島支援事業担当、東京事務局でのミャンマー事業を担当を経て、2017年2月から2018年7月まで渉外担当。本セミナーでは第一回目に講師として登壇し、2回目以降は司会を担当。宮城県出身

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