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トルコ:コミュニティセンターが担う役割

2019年01月31日  シリア難民支援トルコ
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シリア危機勃発から8年。AAR Japan[難民を助ける会]は、2012年に隣国トルコでシリア難民支援を開始し、2014年からはシリア国内での支援も実施しています。現在、トルコ国内には登録されているだけで、362万8,120人(トルコ内務省)のシリア難民が暮らしています。トルコでのシリア難民のためのコミュニティセンターの活動について、東京事務局の坂上佐和子が報告します。

笑顔で寄り添う子ども4名とAARの坂上

AARがトルコで運営するシリア難民のためのコミュニティセンターに通う子どもたちとAAR東京事務局の坂上佐和子(右)(2018年11月23日)

避難生活による孤立を防ぎたい

木で作られたペンケース兼小物入れと、自転車の形をした置物を持つガリアさん

手芸教室で作った作品を見せてくれたガリアさん(2018年11月26日)

AARは2012年より、シャンルウルファ市でシリア難民のためのコミュニティセンターを運営しています。現在は、長引く避難生活での孤立を防ぐとともに、地域におけるシリア難民とトルコ人との相互理解の促進を目指し、女性や子どもたちが参加しやすい活動を実施しています。子どもたち向けには劇やお絵描き、音楽などのセッションを、女性たちには手芸や料理教室などを開催。シリア難民、地域のトルコ人に開放し、毎日40名ほどが通っています。


センターで手芸教室に参加していたガリアさん(仮名)は、戦闘が激化しシリア国内で避難生活を送っていましたが、そこでも情勢が悪化したため、4ヵ月ほど前にトルコに逃れて来たそうです。「夫は戦闘のトラウマで鬱の症状に苦しんでいて、精神的に不安定な状態が続いています。センターには、義母に誘われて参加しました。手芸教室で作った作品を持ち帰ると、夫が喜んでくれるので私も嬉しい。センターに来るまでは、家族以外に友人や知り合いはおらず、ひきこもってましたが、今では友人もでき、センターの外でも会って交流しています」と話してくれました。

お互いを「嫌い」と言い合う子どもたちが...

多くのシリア難民を受け入れているトルコでは、シリア難民、トルコ人双方にストレスがたまり、軋轢も生じています。昨年秋には、市内で殺人にまで発展する暴力事件が起きました。その直後にセンターで開催した子ども向けのセッションでは、トルコ人とシリア人双方が両端に分かれて座り、お互いに「嫌い」と言い合うほど険悪な雰囲気になりました。そこで、セッションの内容を再考し、歌やダンスなど子ども向けセッションを開催する際に、「積極的に相手に話しかけたり、相手をサポートしたり、互いに仲良くなれた場合にはポイントがつく」というルールを取り入れました。その結果、セッション終了後には、参加したトルコ人とシリア人同士が再び打ち解けられるようになりました。センターは、子どもたちが日々接する家族や学校だけでは果たしきれない役割を担っていることが実感できました。


今後は、子どもや女性たちだけでなく、保護者や男性にも多く参加してもらえるよう、工夫していきたいと思います。

子どもたちが円になり、片手を上に挙げて手を重ねる様子

コミュニティセンターで行う交流イベントの様子。シリアとトルコの子どもたち約40名が参加(2018年11月23日)

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局  坂上 佐和子

大学時代よりウガンダの難民キャンプなどでボランティアを経験。民間企業に勤務の傍ら、社会福祉士の資格を取得。生活困窮者への支援を行うNPOでの勤務を経て2017年8月よりAARへ。埼玉県出身

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