タジキスタン:新型コロナウイルスが流行する中でも学ぶ機会の保障を
タジキスタンでは、4月末に新型コロナウイルスの感染者が国内で確認されて以来、感染者の数は6月10日時点で4,763名にまで増加しています。(うち死亡者48名)。AARタジキスタン事務所の大澤由恵が、現地での新型コロナウイルスの影響とそれに対する取り組みを報告します。
AARタジキスタン事務所では、障がいのあるなしに関わらず、誰もが学べる学校づくりを目指すインクルーシブ教育を推進しています。これまでに、学校のバリアフリー化や、さまざまな学習ニーズや子どもの特性に応えられるような教員向け研修の実施、学習に困難を抱える子どもたちが個別指導を受けるための「学習支援室」の開設をしてきました。
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、これまで実施してきたインクルーシブ教育の啓発活動に加えて、コロナウイルスによる症状の特徴や正しい手洗いの仕方などを伝える衛生啓発活動も行ってきました。
やっと学校に通えるようになった子どもたち。学習の機会を失わないように
しかし、5月には、全国で休校措置が取られ、8月中旬ごろまで続く見込みです。バリアフリー設備や学習支援室の開設によって、学校に来れるようになった障がいのある児童・生徒も、また家で長い時間を過ごすことになり、子どもたちの学習習慣が失われてしまうことが懸念されました。
そこで、タジキスタン事務所では、現地の障がい児支援団体、学校の先生と協力して家庭学習の教材を作成し、家庭に配付することにしました。オンラインでの遠隔教育をできる環境はないことから、プリント学習が中心になります。5月には、5校の学習支援室に在籍する児童・生徒の中で希望する37名に、家庭学習教材を配りました。
「家庭学習教材を自分で進めていけるまでに成長しています」
教材を受け取った家庭からは、次のような声が届いています。
「息子はAARの学習支援室ができてから、楽しんで学校に通うようになりました。ほかの兄弟と同じように学校に行けるようになり、とても嬉しかったようです。以前は文字を書くこともできませんでしたが、今では届けられた家庭学習教材を自分で進めていけるまでに成長しています。いつも息子のことを気にかけてくれてありがとうございます。」(知的障がい児の母親)
「授業がまだあった頃は、いつも姪を学校に連れて行っていました。姪は学校をとても気に入っていたようです。ウイルスの感染拡大で学校が休校になってしまったのは、残念です。そんな中、家庭学習教材はとても助かります。姪はまだ6歳ですが読み書きの力がついてきているのが見てとれます。それに、勉強に対して興味を持つようになってきました。彼女は家庭学習の教材をどんどん進めていて、新しい課題は何かと楽しみにしています。」(弱視の女児の叔母)
「娘は学校で意欲的に勉強に取り組んでいました。学校は休校になってしまいましたが、今は私と夫と一緒に家庭学習教材に取り組んでいます。最近では、数だけでなく詩も覚えるようになってきました。教材配付には本当に感謝しています。学校が再開するのが待ちきれません。」(学習障がい児の母親)
AARは、今後も感染防止に配慮しながら、定期的に希望者へ家庭学習教材を届け、子どもたちの学習機会をつくるように努めるとともに、家庭での様子を見守っていきます。
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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
タジキスタン事務所 大澤由恵(おおさわよしえ)
大学では日本史を専攻。在学中に中国へ留学し、日中の戦争についての歴史教育を調査。日本とタイの大学院では、タイの難民キャンプにおけるミャンマーの少数民族の教育を研究。その後、香港の日本人学校で、社会と英語教師として勤務。2019年7月よりタジキスタン駐在。東京都出身。