「コロナ禍でも、障がい児が安心して学校に通える環境を」-冬募金のお願い
「学んでも意味がないから」と両親が諦めていました。
学校で友だちと遊ぶソパナヴィットさん(中央)。
車いすでもできる遊びをみんなで考えます。
休校期間中は家庭訪問などで4ヵ月の自宅学習支援
カンボジアに暮らすソパナヴィットさんは、生まれつき脳機能に障がいがあります。歩行や発話が難しく、8歳まで学校に通っていませんでした。両親は「学んでも意味がないから」と、息子の就学を諦めていました。近くの小学校に特別支援学級の設置を支援したAARは、障がい児にも教育を受ける権利があることを根気強く両親に伝えました。徐々に理解してくれるようになり、ソパナヴィットさんは学校に通うことになりました。学校では支援された車いすを使って、友だちと一緒に学び、遊んでいます。自宅にこもりがちな障がい児にとって、学校は学習の場としてだけでなく、友だちとの関係を築く大切な場所です。「積極的に話すようになった」と、家族は成長を喜んでいました。
休校期間中は家庭訪問などで4ヵ月の自宅学習支援
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、彼が通う学校もまた休校になってしまいました。彼は当初、休校の理由が分からずに「学校に行きたい」と、ジェスチャーを交えて両親に必死に伝えました。AARのスタッフは、コロナによって子どもの教育の機会が奪われてはならないと考えました。休校中も子どもたちが勉強を続けられるよう、教員による家庭訪問での簡単な授業や教材の紹介などの活動を行いました。10月現在、学校は再開しているものの、週に2日という制限があります。AARは必要に応じて家庭を訪問する活動を続けています。
カンボジアでは、障がいの有無に関わらずともに教育を受ける「インクルーシブ教育」が国の政策のひとつとして位置づけられています。しかし実際の現場では、「障がい児の教育」と聞いただけで「自分には難しい」と拒否反応を示す先生も多くいます。そこでAARは、教員を対象として、障がいへの理解を深め、インクルーシブ教育の実践に向けた研修を2013年から行っています。参加した先生からは「子どもたちが障がいに関係なく共に遊び、助け合うようになった」という声が聞かれるようになってきました。
障がい児の就学を諦めている保護者に出会うたびに、残念に思うことがあります。それは、障がい児が学校に通えないのは、保護者の理解が欠けているからではなく、環境が保護者にそう思わせてしまっているからだということです。私たちはそのような環境を変えていきたいと思います。新型コロナウイルスによって、障がい児が学校に通う上での困難は増えました。しかし、この危機を乗り超えることができれば、どのような子どもも就学できるという、大きな成功事例になります。成功事例を積み重ねていくことで、環境を変えていきたいと思います。すべての子どもたちが教育を受けることができるよう、皆さまのご支援を心よりお願い申し上げます。
カンボジアはインドシナ半島南部に位置する東南アジアの国です。農村部には貧困が根強く残っており、世界に47あるとされる後発開発途上国のひとつです。AARは1980年にタイ国境の難民キャンプで支援を開始。これまでに障がい者支援や地雷除去などの活動を行い、2013年からは「インクルーシブ教育」を推進する活動を行っています。
どんな子どもも学校に通えるように、ご協力ください
AARはカンボジアをはじめ世界の国々で、
障がい児もどんな子どもにも教育が届くように活動しています。
- カンボジアでは
新型コロナウイルスの感染予防について書かれたリーフレット1枚と石けん1つを、40世帯に配付することができます。 - ウガンダでは
難民居住地に暮らす南スーダン難民の子ども10人に、学校で1年間に必要なノートやペンなどの学用品を届けることができます。 - タジキスタンでは
障がいのある子どもに車いす1台を提供することができます。
2020年夏募金のご協力に
心より御礼申し上げます
2020年夏募金には、
のべ2,045名の皆さまから
17,052,418円ものご寄付をお寄せいただきました。
お預かりしたご寄付は、AARの世界15ヵ国での支援活動に活用させていただいております。
ウガンダでは、南スーダンから逃れてきた難民の子どもたちや障がい児への教育支援を行っています。障がい児への理解を深めてもらうための取り組みのひとつとしてパラスポーツ大会を実施しました。車いすを使って競技に参加する生徒を、ほかの生徒たちが積極的にサポートするようになったと、嬉しい変化を先生が報告してくれました。しかし、10月現在新型コロナウイルスの影響で学校が再開されず、勉強を続けられるのか不安を抱えている子もいます。引き続き、難民の子どもたちが安心して学べる環境を整えてまいります。