対人地雷禁止条約発効から15周年に寄せて
1999年の「対人地雷禁止条約」(対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約)の発効から 、今年で15年が経過しました。対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲を禁止し、貯蔵地雷の破壊と埋設地雷の除去を義務付けるこの条約成立の原動力となったのは、AAR Japan[難民を助ける会]も参加する、世界90ヵ国の1000を超えるNGOの連合体、ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)と赤十字国際委員会など世界の市民社会です。難民問題や環境問題ではない、軍縮の分野で、NGOが賛同国政府と協力して条約作りに参加したことは、当時としてはとても新しいことでした。1997年、ICBLは対人地雷廃絶の活動が評価され、コーディネーター(当時)のジョディ・ウィリアムズさんとともにノーベル平和賞を共同受賞しました。AARは、1996年から5部作シリーズの地雷廃絶キャンペーン絵本「地雷ではなく花をください」を刊行したほか、3回にわたってNGO東京地雷会議を主催したり、長野冬季五輪の最終聖火ランナーに地雷被害者で元除去要員のクリス・ムーン氏を推薦するなど、現場での支援活動に加え、対人地雷問題の重要性を訴えてきました。
発効から15年、そして条約が署名された1997年12月3日からちょうど17年経った今日現在、対人地雷禁止条約の当事国は162ヵ国にのぼり、世界の8割以上の国々が条約に加入しています。アメリカ、ロシア、中国を含む35ヵ国が未批准の状態にありますが、これらの国々においても、世界規模の移転は停止しており、対人地雷の禁止は世界的な規範になっています。
この15年間で、各国で地雷除去活動や貯蔵地雷の破棄が進み、被害者数も年々減ってきました。しかし、地雷という兵器の恐ろしい点は、紛争後もその土地に残り、無差別に人々を傷つけるところにあります。2012年、地雷・不発弾などによる世界の被害者は、わかっているだけで死者3,628人。そのうち約半数が子どもといわれています。
AARは皆さまのご支援により、条約発効後も、地雷除去の支援、地雷回避教育、地雷被害者を含む障がい者の支援を、アフタニスタン、カンボジア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ自治州、モザンビーク、グルジア などで包括的に行ってきました。現在はアフガニスタン、スーダン、ミャンマーで地雷対策や被がい者支援活動を行い、国内では啓発活動を積極的に行っています。
来る2014年12月17日から19日まで、東京の憲政記念館にて、AARは「女性と地雷―対人地雷禁止条約発効から15年を記念して―」と題した写真展を開催します。条約発効から15年が経った今、世界の地雷問題はどのように変化したのか、そして必要とされる国際協力とは何かを、AARの活動地での写真と国連提供写真約40点を通して、ご来場の皆さまに考えていただくきっかけとなれば幸いです。
改めまして皆さまの日頃のご支援に心から御礼申し上げますとともに、これからも世界の地雷問題の解決のためAARの活動にご支援賜りますよう、お願い申し上げます。
AAR Japan[難民を助ける会]
理事長 長有紀枝