スーダン・カポエタ事務所
角谷 亮
カレンダーから見えるお国柄...スーダン南部の祝日
2007年11月から2010年3月までタジキスタン事務所に、同年4月よりスーダン・カポエタ事務所に駐在。大学では英米語学を専攻。卒業後、派遣員として在外公館に2年半勤務。その後、難民を助ける会へ(兵庫県出身)
記事掲載時のプロフィールです
難民を助ける会では、スーダン共和国南部のカポエタ周辺にて、水・衛生保健事業を行っています。今回は、2010年4月に赴任した角谷駐在員が、スーダン南部の祝日についてご紹介します。
世界で最も休日が多いのは日本?
「1年のうち、15日。」
これは一体何の日数でしょうか。
実は、日本における「国民の祝日」の数です。実際には、その年によって数字は多少変わりますが、「国民の祝日に関する法律」という法律で定められているのです。
「国民の祝日」が日曜日に当たるときの振替休日を加えると、2010年には19日間の休みがあり、世界でも有数の多さです。
さて、私が駐在するスーダン共和国の祝日はどうでしょう。スーダンは、行政府の異なる北部と南部で祝日の種類も日数も異なりますが、今回はスーダン南部の祝日をご紹介します。
スーダン南部の祝日あれこれ
スーダン南部の祝日は、全部で10種類。「10日」ではなく、「10種類」と書いたのは、1つの祝日でも数日間に及ぶものがいくつもあるからです。 まずは、全祝日の紹介から。
1月1日 | 新年 |
---|---|
1月9日 | ☆南北包括和平合意の日 |
4月2-5日 | ○イースター(復活祭) (キリスト教) |
5月1日 | メーデー |
5月16日 | ☆スーダン人民解放軍/運動の日 |
7月30日 | ☆殉教の日 |
9月9-11日 | ●イード・アル・フィトル(断食明けの大祭) (イスラム教) |
12月5日 | ☆憲法記念日 |
12月15-19日 | ●イード・アル・アドハー(犠牲祭) (イスラム教) |
12月24-26日 | ○クリスマス (キリスト教) |
○印をつけたものは、キリスト教に関係する祝日。そして●印はイスラム教に関わるものです。
ここスーダン南部は、人口の多くがキリスト教徒ですが、主にスーダン北部に多いムスリム(イスラム教徒)も、少なからず住んでいます。難民を助ける会が事務所を置く南部の町カポエタにもキリスト教の教会とイスラム教のモスクが混在しています。
なお、このイスラム教の祝日は、ムスリムであれば全日休み、非ムスリムの場合はそれぞれ1日のみ休みます。さすがに、「その日だけムスリムに」という人はいないと思いますが、おもしろい決まりですね。
八百万の神がいると言われる日本で、宗教に関わる祝日を同様に採用すると、1年中祝日となってしまいそうです。
年間10種類ある祝日のうち、12月にはそのうち3つが集中しています。しかも複数日のものが2つ。合計すると最大9日間にも及びます。また、新年は4日間ほど休みになるので、12月から1月にかけて、スーダン南部全体がストップします。ちなみに難民を助ける会もやむを得ず一時休業となります。
1月9日…南部が自治を勝ち取った日
☆印をつけたものが、2005年に自治政府を設立したスーダン南部の象徴となる祝日です。まずは1月9日の「南北包括和平合意の日」(Comprehensive Peace Agreement Day、以下CPA)。これは、20年以上にもおよぶスーダン内戦のあと、2005年1月にスーダン人民解放軍/運動(Sudan People’s Liberation Army/Movement、以下SPLM)とスーダン政府の間で和平合意が締結された日です。
このCPAには、6年間の移行期間を経て、スーダン南部が独立するのか、それとも、北部との統一を保つのか、スーダン南部の人たちが選択すると記載されています。
そして、その6年後に当たるのが2011年1月で、独立を問う国民投票が予定されています。
スーダンは、つい数年前まで南部、および難民を助ける会が地雷回避教育を行う南コルドファン州など北部の数州で争いがありました。スーダン南部の人たちが、自分たちの将来のために、非暴力を通した最善の選択ができることを願っています。
7月30日…初代南部自治政府の大統領を偲ぶ「殉教の日」
7月30日は、「殉教の日」。これは、前に述べたSPLMのリーダーであり、スーダン南部の自治開始後初の大統領であったジョン・ガラン氏が亡くなった日です。2005年、彼の強いリーダーシップのもと、内戦終結を迎え、「さぁ、今から国づくりだ」という矢先、飛行機墜落事故により亡くなりました。その後、副大統領であったサルバ・キール氏が大統領に就任し、現在に至っています。
5月16日…スーダン人民解放軍/運動の日には、ジャンプ?!
最後が、5月16日の「スーダン人民解放軍/運動(SPLM)の日」。これは、スーダン南部の代表的政党であるSPLMが創設された日です。先日のSPLMの日に、カポエタの町では、郡長、兵士などが列席する中、退役兵、女性団体、小学生を含め地元の多くの人々が広場に集まり、SPLMを祝う集会が開催されました。郡長のスピーチの中では、難民を助ける会の活動の重要性にも言及されました。
これで終わりかと思えば、本番は夕方からだったのです。
どこからともなく、広場に人々が集まり、それぞれの部族に分かれ、みんなジャンプしているので す。各部族の連帯を体で示すかのように、歌を歌いながら、ジャンプしていました。
赤ちゃんを抱いたお母さんまでも、勢い良くジャンプ。でも赤ちゃんは泣きもせず、ダンス参加者の1人となっていました。
さて、いかがでしたでしょうか。祝日を通してスーダン南部の一面を知っていただければ幸いです。