スーダン・カポエタ事務所
角谷 亮
「庭」さん「木」さん?! 名前からみるスーダン南部
2007年11月から2010年3月までタジキスタン事務所に、同年4月よりスーダン・カポエタ事務所に駐在。大学では英米語学を専攻。卒業後、派遣員として在外公館に2年半勤務。その後、難民を助ける会へ(兵庫県出身)
記事掲載時のプロフィールです
自己紹介するとき、私たちは様々な情報を相手に伝えます。例えば、国籍、性別、年齢など。その中でもなくてはならないのが、「名前」。
生まれたときに、親や親族などから命名され、その名前を背負って生きていきます。ある人は、親の名前の一文字をとって、ある人は、幸運を呼ぶ画数によって、そして、ある人は、親が好きな漢字から付けるなど、付け方も千差万別。
今回は、スーダン南部の名前の付け方について、ご紹介します。
あなたの名前は、「病院さん」!?
難民を助ける会の事務所があるスーダン南部の町カポエタは、トポサ族が暮らす土地です。事務所にもトポサ族の事業スタッフが2名います。一人は、ナマナ。もう一人は、ナテレイ。それぞれの名前の意味は、「庭」、「木」(家のフェンスなどに使われる木の名前。写真参照)です。名前の由来は単純明快、「そこで生まれたから」。
つまり、ナマナは、自宅の庭で生まれ、ナテレイは、木の下で生まれたとのこと。他には、「家」を意味する「ナカイ」という人もいます。
カポエタが位置する東エクアトリア州で、医師が介助する出産は、1%にも満たないのです。ほとんどの場合、伝統的な産婆さんによって、自宅で出産を行います。
もし、日本のように皆が病院で出産するようになったら、カポエタ中が「アタリャ(病院)さん」という名前で溢れかえることになりそうです。
「アティエン」ちゃんの名前の由来は牛?
スーダン南部最大の民族人口を誇る、ディンガ族。このディンガ族にも、少し変わった命名のしかたがあります。
写真のとても可愛らしい赤ちゃん。この赤ちゃんの名前は、アティエン。ディンガ語で、「赤茶色に黒が混ざった色」。意味だけ聞くと、「はっ?」と言いたくなるのですが、由来を聞くと、なるほどティンガ族らしい名前で納得。この赤茶色、単なる色を表す言葉ではなく、牛の色なのです(写真のヤギの色)。
牛はディンガ族の、生活の中心にいるのです。結婚の際の持参金も、牛。略奪の対象になるのも、牛。そのため、大切な子どもには、大切な牛の色から名前をつけるのです。
気合の表れ
最後にもう一例。スーダン南部のウガンダ国境に住むマディ族。そこの出身である、事務スタッフのコマ。彼の名前の意味は、「試してみろ」。「さぁ、来い」って感じでしょうか。
彼曰く、「出産の時期、家族内で色々と苦労があったんじゃないかなぁ。」ということ。親の意気込みや、気合が子どもの名前になったりするようです。
いかがでしたか?人の名前の由来を聞くことによって、その文化の一部分をうかがい知ることが出来ますね。
皆さんは、自分の名前の由来をご存知ですか。兄弟の名前や親友の名前の由来はいかがでしょうか。普段、あまり気にすることのない名前の由来。たまには、この「名前」と向き合ってみるのも良いのかも知れません。