小川 祐子
「障害者の可能性を広げよう」タジキスタン活動報告会を開催しました
東京事務局
記事掲載時のプロフィールです
11月2日、難民を助ける会事務所で、タジキスタンでの障害者支援活動の報告会を開催しました。学生や社会人、障害者支援に携わっている方など、約20名の方がご参加くださいました。
旧ソ連の最貧国。行き届かない障害者への支援
難民を助ける会はタジキスタンで支援活動を行っている日本でただ一つのNGOです。
まず東京事務局のタジキスタン事業担当の杉浦公則から、タジキスタンの生活・文化や、難民を助ける会の支援活動について報告。首都ドゥシャンベには、きちんと舗装された道路やきれいなビルが見られ、一見すると近代的な都市という印象を受けます。しかし、旧ソ連諸国の中で最貧国のタジキスタンでは、障害者が月々受け取ることのできる公的な支援は、約1,200円程度。現地での庶民的な食事であるラグマン(ラーメンのようなもの)10杯分程度の額でしかありません。このように、障害者への支援がまだまだ必要な状況が紹介されました。
障害のある人もない人も、ともに生きる社会にしていくために
続いて、これまで3回にわたり難民を助ける会の事業地を訪問し、現地の医療専門家などを指導してきた作業療法士の河野眞・医療専門家が、専門家の目から見た、障害者のおかれている現状と課題を報告しました。
タジキスタンでは、障害を持って生まれたり、障害を負ったりすると、そのときから障害のない人とは、人生のコースが完全に分かれてしまいます。子どものときから施設に入れられ、障害のない人と同等の教育を受けることや、就職の可能性は絶たれ、生涯そのコースから抜け出すことはできません。こうした硬直した構造ができてしまっていることが、とても深刻な問題であることが強調されました。
河野医療専門家からは、今後の難民を助ける会の支援に対して、ぜひこうした構造に風穴をあけるような活動をして欲しい、との期待が寄せられました。
報告では、河野医療専門家が現地で行ったリハビリテーションの指導の様子も紹介されました。障害児の母親に対して、自宅でできるリハビリテーションを伝えたり、病院に備え付けるリハビリのための簡単な運動のマニュアル冊子を作成するなど、現地の人たちが身につけられるような方法で、指導を行いました。
質疑応答では、「障害者に対して、地域の周囲の人たちはどのような目で見ているのか?」、「現地の医療専門家への技術移転はどのようにすすめていけるのか?」など熱心なご質問を数多くいただきました。
ご参加くださった皆さまからは、「タジキスタンについて知らないことばかりだった」、「思ったよりも医療施設や福祉制度が整っていない状況に驚いた」、「障害者の施設があるのにもかかわらず適切な対応がされていない状況に驚いた」、などたくさんの感想をいただきました。
日本ではなじみの薄いタジキスタンについて知っていただき、そこに生きる障害者の問題に関心を持っていただく機会とすることができました。ご参加くださった皆さまに感謝申し上げます。