駐在員・事務局員日記

ケニア:18ヵ国から逃れてきた難民の人々

2018年06月29日  ケニア
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執筆者

ケニア事務所
金森 大輔

2018年4月よりケニア事務所駐在。大学卒業後、民間企業で働きながら東北の被災地支援にも従事。イギリスの大学院留学、フランスの語学留学などを経て2016年11月よりAAR へ。趣味はサッカー。山口県出身。

記事掲載時のプロフィールです

ケニア北西部トゥルカナ県にあるカクマ難民キャンプおよびカロベイエ難民居住区には、2013年末からの南スーダンでの紛争の影響で、多くの南スーダン人が災禍を逃れ難民として暮らしています。他方で、1992年から続くカクマ難民キャンプには、南スーダン難民だけではなく、実にさまざまな国籍の難民が生活しています。キャンプで出会った人々の背景や暮らしを、ケニア駐在員の金森大輔が報告します。

18ヵ国の人々が暮らす、カクマ難民キャンプ

カクマ難民キャンプとその周辺の地図

ケニア北西部にあるカクマ難民キャンプには、キャンプと真反対の東側に位置するソマリアから逃れてきた難民も多くいます。キャンプ内の4つに分かれる居住区のうち1つはソマリア人が多く、ソマリア人コミュニティおよびマーケットを形成しています。ソマリア難民の多くは、母国で紛争や飢餓などにより住む場所を失い、長い道のりを経てカクマ難民キャンプまで避難してきました。

ソマリア人マーケット 屋根なしの商店街のよう

ソマリア人マーケット(写真はすべてカクマ難民キャンプ内、2018年5月15日)

2017年に、ケニア政府がケニア東部・ソマリア側のダダーブ難民キャンプの閉鎖を発表した際、そこから追い出されるようにしてカクマ難民キャンプに移住してきた人も多くいます。ほかにも、自国の洪水・干ばつなどの災害や内戦などの影響で故郷から逃げざるをえなくなったエチオピア、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、スーダン、中央アフリカ共和国など計18ヵ国からの難民の人々が、ここカクマ難民キャンプに暮らしています。

男性数人が働いているところ 豆のようなものが大量に積まれている

スーダン人マーケット。携帯電話を宣伝する看板なども見られる(2018年5月26日)

カラフルな生活雑貨が沢山売られている

エチオピア人マーケット。生活雑貨店が並ぶ(2018年5月25日)

南スーダン人ガランくんの夢

農地を背に2人で記念撮影

ガランくん(左)と金森大輔(2018年5月25日)

南スーダン人のガランくんは、AARが支援する中等教育校の最終学年に在籍し、学業の傍らキャンプ内の農家を手伝い家計を助けています。彼は、2011年にウガンダを経由してカクマ難民キャンプに逃れてきました。自国の紛争から逃れてウガンダに避難したものの、避難先においても自国の民族対立の影響で暴動が発生したためです。夢を聞くと「一緒に逃れてきた7人の家族と平和に暮らしていきたい」と話してくれました。

エチオピア人マスフィンさんのお店は...

マスフィンさんの後方、お店の陳列棚には大量の日用雑貨が整然と並んでいる

マスフィンさん。自身も難民ながら周囲の人々に食糧を提供します(2018年5月26日)

マスフィンさんは、エチオピアの内戦を逃れて2001年にカクマ難民キャンプにやってきました。現在はキャンプ内で食糧品店を経営していて、お店は大繁盛しています。ときには、貧しい難民に食糧を分けています。

コンゴ民主共和国人エミドさんが学ぶのは...

ワイシャツ姿のエミドさん

研修で心理ケアを学ぶエミドさん(2018年5月26日)

カクマ難民キャンプの中等教育校で先生として働くコンゴ民主共和国からきたエミドさんは、母国の内戦によって両親・家族を亡くし、2013年に1人でカクマに逃れてきました。「私のように辛い経験をしてトラウマを持つ子どもたちの心理ケアをしたい」と、AARが開催するカウンセリング研修に参加しています。

コンゴ民主共和国人バセメさん、「コンゴ人が一番...」

壁やミシン台など、いたるところに生地がおかれたり、ぶらさげらている 記事はどれもとてもカラフルな模様

さまざまな種類の生地を仕立てる(2018年5月26日)

バセメさんは、コンゴ民主共和国の民兵組織からの攻撃を恐れ、2013年にカクマ難民キャンプに避難してきました。現在はキャンプ内で伝統的な衣服の仕立屋として生計を立てており「コンゴ人が一番オシャレ」と誇らしげに話します。

ブルンジ人女性、野菜で生計を立てる

ビアトリスさんの目はとても温かで輝いている

優しい笑顔を向けるビアトリスさん(左、2018年5月26日)

ブルンジからの難民のビアトリスさん。2014年に母国の紛争から逃れるためにカクマ難民キャンプに来ました。現在は畑から収穫した野菜を売って生活の足しにしています。

スーダン人男性、子どもの平和を願う

澄み渡る空の下で話すハマドさんの笑顔

青空のもと、笑顔で夢を語るハマドさん(左、2018年5月26日)

スーダンのダルフールから2004年にカクマ難民キャンプに逃れて来たハマドさん。ダルフール紛争の影響で難民となりました。「夢は自分の子どもたちが平和に暮らしていくこと」と語ってくれました。

現地民族、トゥルカナの人々

カクマ難民キャンプで忘れてはならないのが、現地民族のトゥルカナの人々です。彼らは、基本的には難民キャンプ外の村々でヤギの放牧などを生業として生活しています。18万人以上の難民が暮らすカクマ難民キャンプには、国連機関やNGOなどの支援団体が多く活動しているため、トゥルカナ民族の人たちはキャンプ内の人々に炭や食べ物を売ったり、仕事を求めて活動しています。
トゥルカナの男性は、遊牧の長距離移動の際に便利な杖と小さな木製のいすを常に持ち歩き、トゥルカナの女性は、伝統的に首にビーズの装飾品を巻き付けているのが特徴です。

木製の杖といすを手にするトゥルカナのおじいさん 素敵な笑顔

トゥルカナの男性は杖やいすを持ち歩き、杖は歩行の補助や羊の誘導に、いすは休憩するときに使用します(2018年4月10日)

頭の長さより長い装飾品があごの下から肩を覆っている

首の巻物の数が多いほど、その女性の家族および父親・夫の富の象徴になると考えられています(2017年11月17日)

誰もが安心して暮らせるように

金森が笑顔をこちらを向けている 雨宮は食べるのに集中している

エチオピア人マーケット内のエチオピア料理店。美味しい料理があり、ランチによく利用します(駐在員の雨宮知子(左)と金森大輔、2018年5月20日)

これだけさまざまな国籍の人が一緒に暮らすのですから、小さな争いごとが起こることもしばしば。そのためAARでは、暴力ではなく対話で問題を解決する技術を学ぶワークショップを青少年と教員向けに開催するほか、国連人間居住計画(UN Habitat)と協力してトゥルカナの人々と難民の信頼構築にも役に立つコミュニティセンターおよび図書館、公共スペースを建設しています。これまでの中等校の教室の建設や教育支援に加え、紛争や災害から逃れてきたさまざまな背景を持つ難民や現地住民の方々が、教育の機会を得て争いなく学べるよう、今後も活動を続けて参ります。

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