東京事務局
坂上 佐和子
トルコ:歌と手料理で乗り越えた怒涛の日々
大学時代よりウガンダの難民キャンプなどでボランティアを経験。民間企業に勤務の傍ら、社会福祉士の資格を取得。生活困窮者への支援を行うNPOでの勤務を経て2017年8月よりAARへ。埼玉県出身
記事掲載時のプロフィールです
AAR Japan[難民を助ける会]は、トルコに暮らすシリア難民へ情報提供や個別支援など、さまざまな支援をしています。こうした活動を実施するには、人事チームや物流管理チームなど、後方で活動を支える多くのスタッフの存在があります。トルコ事務所に出張した東京事務局の坂上佐和子が、経理チームの怒涛の日々を報告します。
想像をはるかに超えるペーパーワーク
経理チームの業務は多岐にわたります。例えば、障がいのある難民の方に提供する歩行器や義足などの補助具といった、支援物資の購入費用の精算から、約150名に及ぶスタッフの給与や税金の算出および支払い、日々の帳簿管理など。経理チームなくして活動は成り立ちません。
こうした通常業務に加え、経理には定期的に「会計監査準備」という重要な業務があり、それにはいつも以上に多様な書類の整理や管理など、煩雑なペーパーワークを伴います。その量は実際に目にしないと伝わらない、想像をはるかに超えるものです。監査の時期が迫ってくると、スタッフ全員が書類の山に押し潰されそうな感覚に陥るほどです。
「ロボットが欲しい...」
2019年1月、現地で実施される会計監査の準備のため、トルコ・イスタンブール事務所に出張しました。これまで何度も現地の監査に携わってきましたが、今回は事務所に足を踏み入れるやいなや、「何かがいつもと違う...」と察しました。書類の量が今までの比ではないのです。トルコでの活動は年々拡大を続け、それに伴い書類もどんどん増えているのです。
経理業務の拠点であるイスタンブール事務所には、トルコのほかの2つの活動地域にあるシャンルウルファ事務所、マルディン事務所の経理スタッフも集合。普段遠く離れた事務所で働くスタッフは、久々に顔を合わせることができた喜びに満ち溢れており、穏やかな雰囲気の中で監査準備がスタートしました。
しかし、開始から数日後。私を含めスタッフ全員が早くも厳しい現実にぶち当たりました。締め切りから逆算してタスク整理と役割分担を行い、多い日には10名もの人数で作業にあたりましたが、一向に片付かない書類の山を前に、作業スケジュールの無謀さに気づいてしまったのです...。
四方八方から、「終わりが見えない...」「ロボットがほしい...」「もうこんな時間...」という言葉が飛び交い始めました。私自身も、現地スタッフから教えてもらったトルコ語「ビットミヨー(bitmiyor:終わりがない)!」を連発するまでに。平日夜遅くまで、休日も事務所で作業を進めるものの、一人ひとりの顔には日に日に疲れが滲み出てきました。
淀んだ空気を変えたのは...
連日の疲労感漂う空気を大きく変えてくれたのが、現地スタッフが冗談半分で発案した「音楽パーティー」でした。通常昼食は近所の定食屋にみんなで食べに行くのですが、音楽好きのスタッフが中東地域発祥の弦楽器「ウード」を持ってきていることを知り、「昼休みにみんなで歌おうじゃないか!」と意気投合。
私たちは急遽決めたこのイベントを「Midーterm Party(監査準備の中間パーティ)」と名付け、この日の昼食はSUBWAYのサンドイッチを宅配し、事務所で音楽パーティを開催することにしました。サンドイッチでお腹が満たされた後、ウードが奏でる素敵な音色に合わせて、みんなでトルコ語とアラビア語の歌を合唱。私にとっては初めて聴く曲でしたが、歌詞を見せてもらいながら一緒に歌って楽しみました。束の間でしたが、私たちのモチベーションを一気に高めてくれた素晴らしいパーティでした。
さらに別の日には、現地スタッフの妹さんが、わざわざ私たちのために「いわしのピラフ」など美味しいトルコ料理を作ってくださいました。それも全員分の量を。ほっぺたが落ちるほど美味しく、みんないつまでも食べ続けてしまいそうでしたが、午後の作業を控えていたこともあり、それぞれお腹がはち切れない程度に我慢。
心が萎えそうな中で、素敵な音楽と美味しい手料理にお腹も心も満たされ、私がトルコを発つころにはある程度の目処がつく状態まで作業を進められました。今回の出張は怒涛の日々でしたが、何よりも、大変な時期を一緒に乗り越えられる仲間の存在にとても勇気づけられました。私は普段トルコから離れて業務にあたっていますが、東京でも現地スタッフとの日々を思い浮かべながら、引き続き尽力してまいります。