駐在員・事務局員日記

理事長ブログ第44回「天皇陛下の御退位に際し」

2019年04月27日  会長ブログ
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執筆者

長 有紀枝

2008年7月よりAAR理事長。2009年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授。2010年4月より立教大学社会学部教授(茨城県出身)

記事掲載時のプロフィールです

AAR理事長、長有紀枝のブログです。

 天皇陛下の御退位に際し、AAR Japan[難民を助ける会]を代表しこれまでの天皇・皇后両陛下のお心寄せに衷心より御礼申し上げます。
 皆様ご承知のとおり、難民を助ける会は昭和54(1979)年、故・相馬雪香前会長が、いかなる後ろ盾もないまま、「困ったときはお互い様」、「日本人が古来示してきた善意の伝統」を、身近な人のみならず、インドシナ難民の方々にも示していこう」と設立した組織です。当時は、NGOの活動に対する公的助成金の制度もなく、また不偏不党を旨として特定の組織や団体からの支援も受けていない団体の活動は、皆様からの募金のみが唯一の活動資源でした。
 日本全国に募金を呼びかけると同時に、難民を助ける会が設立以来大切にしてきたのが、チャリティ・コンサートによる自助努力です。

 こうした活動に対し、両陛下は、東宮(皇太子・皇太子妃)の時代から、深いご関心と理解を寄せられ、難民を助ける会主催のコンサートにも幾度もお出ましくださいました。
 日本に命からがらボートピープルとして逃れてきたベトナム難民をはじめとするインドシナ難民の学生に、大学や大学院に進学するための奨学金が付与できましたのも、皆様からのご寄付とともに、こうしたコンサートの収益があったからこそです。
 その後も、旧ユーゴスラヴィア難民、クルド難民、地雷対策、障害者支援、神戸の震災、東日本大震災など、難民や障害者、被災者の方々のための数多くのコンサートにお出ましくださり、終演後は、出演者にお声がけくださるとともに、当会の海外派遣の駐在員や職員、そして多くのボランティア、一人ひとりにねぎらいのお言葉をおかけくださいました。

 新聞記事を通じてお知りになられた当会の活動に対してもお心をお寄せくださり、AARが毛糸のモチーフを集め、ひざかけとして旧ユーゴにおくるキャンペーンを行った際に、皇后陛下は、自ら編まれたモチーフをおおくりくださいました。平成23(2011)年にトルコで地震被災者の支援にあたっていた当会のチームがホテルの倒壊に巻き込まれ、宮崎淳さんが亡くなり、1名が負傷した事故ではお悔みとお見舞いのお電話を頂戴しました。
 そのお声がけの一言ひとことに、私たちがどれほど多くの励ましをいただいたかは言葉にするのも難しいほどです。

 また、平成20(2008)年初夏、相馬前会長が96歳で逝く3ヵ月前のことですが、相馬前会長が会長職を退き、柳瀬房子前理事長が会長に、私が理事長になった折に、私ども3名を御所にお招き下さり、天皇陛下もご同席の上で午餐を賜りました。その後、皇后陛下は、体調を崩した相馬会長をお見舞いくださり、お別れ会の折には白いカラーのお花とともにご参列くださいました。
 青少年赤十字の活動で古くご縁のあった吹浦忠正現顧問を通じ、難民問題や地雷問題はじめ、さまざまなテーマについて、ご進講の機会も賜りました。また、他の皇族の方々とも、ご進講やご懇談の機会を数多くご高配くださいました。
 こうした機会を通じ、私どもは両陛下の、日本や、世界が直面する深刻な社会課題に関するお考えやお気持ち、そして何より、お人柄に触れさせていただくという、大変貴重な機会を賜りました。

 昭和・平成の時代を通じ、難民支援、地雷対策、災害で被災した方々への支援、障害のある方々への活動支援にお寄せくださいましたご厚情に、衷心より厚く、深く御礼申し上げます。

平成31年4月27日 難民を助ける会理事長 長 有紀枝

両陛下御来臨の記録(東宮時代を含む)

1979(昭和54)年
 インドシナ難民を助ける会 [現 難民を助ける会] 設立
1982(昭和57)年
 2月5日 皇太子殿下、同妃殿下(現・天皇陛下、皇后陛下)、三笠宮容子内親王殿下のご臨席を仰ぎ、立正佼成会の協力およびRefugees Internationalとの共催により「'82難民に愛の手を! ショスタコビッチ父子によるチャリティ・コンサート」を開催(普門館)。イ難連加盟NGO活動展をロビーで同時開催
1984(昭和59)年
 10月24日 皇太子殿下、同妃殿下(現・天皇陛下、皇后陛下)のご臨席を仰ぎ、在日難民学生の奨学金のための「'84難民に愛の手を! 清水和音チャリティ・ピアノ・リサイタル」を開催(昭和女子大学人見記念講堂)
1987(昭和62)年
 4月22日 第3回じゃがいもの会「応演歌'87」を開催(普門館)。皇太子殿下、同妃殿下(現・天皇陛下、皇后陛下)がご来臨
1995(平成7)年
 吹浦忠正副会長、柳瀬房子事務局長、長有紀枝事務局次長(肩書はいずれも当時)が旧ユーゴスラビア情勢についてご進講
1997(平成9)年
 4月13日 皇后陛下のご臨席を仰ぎ、対人地雷撤去のためのチャリティ・コンサート「中村紘子&早慶オーケストラ夢の競演!」開催(オーチャードホール)。ボニー・アマコスト元駐日米国大使夫人も参加。純益でサラエボの盲学校で地雷63個等を除去。撤去技師カリッチくん殉職
 吹浦忠正副会長、柳瀬房子事務局長、長有紀枝 事務局次長(当時)が対人地雷問題についてご進講
2003(平成15)年
 7月17日 「新垣勉(テノール)チャリティ・コンサート」開催(サントリーホール)。皇后陛下ご来臨
2004(平成16)年
 6月30日 「天満敦子&池田直樹コンサート~祈り~」を開催(サントリーホール)。皇后陛下ご来臨
2005(平成17)年
 2月23日 「中村紘子チャリティコンサート」開催(東京オペラシティコンサートホール)。皇后陛下ご来臨
2006(平成18)年
 9月23日 「天満敦子ヴァイオリンチャリティコンサート 特別ゲストにさだまさしさんをお迎えして」を開催(東京オペラシティコンサートホール)。皇后陛下ご来臨
2008(平成20)年
 8月4日 皇居にて、天皇皇后両陛下に相馬雪香会長、柳瀬房子前理事長(肩書はいずれも当時)、長有紀枝理事長が拝謁
 10月8日 「中村紘子とN響の仲間たち」を開催(サントリーホール)。皇后陛下ご来臨
 12月25日 相馬雪香先生を追悼し感謝する会。皇后陛下ご来臨
2009(平成21)年
 7月23日 「天満敦子ヴァイオリン・チャリティコンサート さだまさしさんをゲストにお迎えして」を開催(サントリーホール)。天皇皇后両陛下ご来臨
2012(平成24)年
 9月13日 「忘れないで3.11 震災から553日目に贈るコンサート」(今井 信子、磐田 恵子、澤畑 恵美、林 美智子、米澤 傑、河野 克典ほか、杉山 洋一指揮)を開催(サントリーホール)。皇后陛下ご来臨
2013(平成25)年
 3月29日 「天満敦子ヴァイオリン・リサイタル『明日に繋ぐ祈り』」を開催(浜離宮朝日ホール)。皇后陛下ご来臨
2014(平成26)年
 2月17日 「AAR創立35周年チャリティコンサート 中村紘子×山田和樹」を開催(サントリーホール大ホール)。皇后陛下ご来臨
2016(平成28)年
 4月27日 「難民を助ける会 3.11被災者のためのチャリティコンサート」(村治佳織、村治 奏一、川久保 賜紀)を開催(サントリーホール)。天皇皇后両陛下ご来臨
2017(平成29)年
 12月14日 「難民を助ける会 東日本大震災 復興支援のためのチャリティコンサート」(エリック・オービエ、梅干野安未、三原麻里)を開催(東京オペラシティコンサートホール)。皇后陛下ご来臨
2018(平成30)年
 11月13日 「難民を助ける会 創立40周年記念チャリティコンサート」(仲道郁代、金子三勇士)を開催(紀尾井ホール)。皇后陛下ご来臨

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