カンボジア事務所
山本 啓太
カンボジア:スパゲティが輝いて見えた日
大学卒業後、理学療法士として働く。ベトナム農村部での医療ボランティアを経験後、同国の医療系大学での教員を経て2020年10月からAARへ。「障がいのある方々に寄り添いたい」。趣味は野球。奈良県出身
記事掲載時のプロフィールです
クリスマスムードが漂う2020年12月23日、入職後初めての赴任でカンボジアのプノンペン国際空港に到着。入国審査や感染症の検査など一通りの手続きを済ませ、他の入国者とともにバスに乗車。行き先は隔離ホテルです。思いがけない展開続きの隔離生活を振り返ります。
新型コロナウイルス感染症の予防対策のため、カンボジアでは入国者に14日間のホテル隔離が義務付けられています(2021年3月時点で継続中)。どこに隔離されるかは、バスが到着するまで明かされません。私は「SUNWAY HOTEL」という煌びやかなホテル前で下車。隣席の欧米人がガッツポーズしていたので、「当たり」を予感しました。
その期待通り、部屋は非常に綺麗で、バスタブまでありました。「この部屋なら14日間も平気だな」ーこの時はそう考えていました。
あっけなく散る期待
私が隔離生活で重視していたのは3つ。部屋の快適さ、インターネット環境、食事です。
快適さとネット環境は申し分なかったのですが、食事が非常に辛かったです。というのはメニューを選べず(選択可能な隔離先もあるようです)、慣れないカンボジアの味つけに加え、食事の提供時間(8時、12時、17時)が私の空腹具合と全く合わなかったのです。
デリバリー注文は禁止されており、1日3食冷め切ったカチカチのご飯とおかずを食べるしかありませんでした。朝はパン、昼と夜は白飯なのですが、一度だけスパゲティが提供されたときは嬉しすぎてミートソースをズボンにこぼすのもよそに、あっという間に平らげました。
嬉しい誤算も
クリスマスも年末年始も部屋から出られず、窓から見えるイルミネーションをただ眺めるだけの単調な日々でしたが、たった一つだけ良いことがありました。
コロナ禍の自粛生活で増えに増えた体重が減ったのです。ストレッチ以外の運動は全くしませんでしたが、食欲がわかずあまり食べなかったせいか14日間で3、4㎏も減ったのです。ちなみに3ヵ月経った今もその体重を維持しています。
隔離13日目、ホテルの広間に呼ばれ、PCR検査を受けました。
綿棒で鼻腔の粘膜を採取されるのですが、渡航前日の東京、到着時のプノンペン空港に続く3度目の検査のなかで、この時が群を抜いて痛かったです。涙を流して痛みに耐えている人が私以外にもいました。検査者の「万が一、ここで陽性者を解放してしまえば市中感染が起きてしまう!不備がないよう、取れる限りの粘膜を採取せねば!」といった使命感を綿棒越しに感じました。
翌日のお昼、フロントから隔離終了の連絡を受け、解放されました。2週間ぶりに浴びた、東南アジアの強烈な熱気をあんなに愛おしく感じたのは初めてでした。自由に外を歩けること、好きなものを食べられること、人と会えることの素晴らしさを再認識した、貴重な(できればもう経験はしたくないですが...)14日間の隔離生活はこうして終幕しました。