新しい住宅の住み心地は?...スリランカ津波復興支援住宅宿泊記
難民を助ける会では、2004年12月26日に発生したインド洋大津波の緊急支援を実施。その後も、復興支援として被災者の住居などの支援を行い、2006年8月末にすべての事業を現地NGOに引き渡しました。
その現場を2007年2月19~24日にかけて、東京事務局の紺野誠二、野際紗綾子が訪れ、支援状況をモニタリング(事後調査)しました。
不安と期待を抱え現地へ
約2年にわたって東京からスリランカにおける津波復興支援にかかわってきた私が、現地NGOに引き継がれた復興支援活動のモニタリング調査(事後調査)のために、2回目となるスリランカ出張へと行くことになりました。
「難民を助ける会が建設した新居で被災者の方々が満足して暮らしているといいな」という大きな期待と「住宅に本当に満足しているだろうか」という不安をかかえ、成田からモルジブのマーレ経由で約13時間、深夜に気温30度を超えるスリランカのコロンボに到着しました。
難民を助ける会が建設した新居に到着
コロンボから車で約3時間半。スリランカ南部のゴール県に到着。ゴール県中心部から車でさらに20~30分内陸に入ったところに、現地NGO(GMSL)の協力のもと、難民を助ける会が住居を30棟建設したアタニキタ地区があります。
細長い道を通り抜けると、そこは青空の下、オレンジ色の屋根がきれいに立ち並ぶ新興住宅地。いよいよモニタリング調査の開始です。今回の調査では、難民を助ける会が建設した住宅に住む30世帯のうち27世帯を一件一件訪問し、住み心地や満足度などを中心にインタビューを行いました。(詳しい調査結果はこちら)
きれいに掃除された床、新しい命
インタビュー時にまず驚いたのは、床のきれいさです。多くの家の床にはほこりがなく、ぴかぴかに掃除され、清潔に保たれた床の上では、子どもがお母さんと楽しそうに遊んでいました。そんなところに近くの小学校から元気に子どもが下校してきます。生まれたばかりの赤ちゃんも元気に育っていました。
新しい家で迎えた、新しい命。ここで、人々が、生活を営んでいることを実感しました。
新居での宿泊体験!
今回の訪問の目的は、難民を助ける会が建設した住宅が、本当に役立つものであったのかどうか調査することです。
しかし、本当にインタビュー通りなのか、実際の住み心地はどうなのか、それらをこの目で確かめるべく、プレマシリさんのご家庭で一泊宿泊させていただきました。
2年の月日を感じて
プレマシリさんの新居に行く前に、グルシンハさんの家で夕食をごちそうになりました。グルシンハさんの家庭は、大津波直後に難民を助ける会が配布した台所用品セットも利用していて、2年以上支援を続けているご一家です。
難民を助ける会のロゴの入った見覚えのある台所セットが並ぶ横の部屋でお話を伺っていると、小さな女の子が奥の部屋から出てきました。「この子、覚えてる?」「う~ん、見たことあるような、ないような。」すると、「あなたが2005年8月に住宅建設着工式にきたときに、一緒に参加した子よ」とのこと。
大津波発生からの月日を感じながら「大きくなったね~!」遊んでいたら、もう夜の10時前。今日は無理して起きててくれたんだね、ありがとう。
この近所付き合い、かつては日本がもっていたもの
新居に引っ越してきた家族は、みな津波で多くの財産を失ってしまいました。「私たちは様々なかたちで助け合っているのよ」とプレマシリさん。その時々の家庭の状況によって、食事を分け合ったり、冠婚葬祭ではみなさんで協力しあっているそうです。私がグルシンハさんで夕食をご馳走になっている時も、近所の方に食事の一部をおすそ分けしていました。
寝心地は?
プレマシリさんの心遣いで、普段プレマシリさんが使っているベッドのある部屋を使わせていただきました。エアコンも扇風機もありませんが、天井が高くて開放感もあり、思ったよりも涼しく感じられました。
とは言っても、水のシャワーが気持ちよく感じられるくらい暑い南部スリランカの気候では、扇風機はやはり欲しいところです。今回の調査では、扇風機を持っている家庭は、4家族に1つくらいの割合でしたが、プレマシリさんの家には扇風機はありませんでした。
蚊の音もしたので、蚊帳もあればマラリア等の心配もなく安心だろうと感じましたが、蚊帳のある家庭は半数ほどしかありませんでした。
夜は静かだ。そんなことを考えている内に、ぐっすりと眠ってしまいました。
スリランカの温かさが忘れられません
話し声と食器のがちゃがちゃという音で目が覚めたら朝5時半。部屋を出てみてみると、朝食のフルコースが!お祝い料理でもある「ミルク・ライス」をわざわざ私のために用意してくれました。この食事とプレマシリさんのお気持ちを、日本の皆さんにお届けできればと思いました。
甘くておいしいスリランカ紅茶は、隣の家のおばあちゃんが持ってきてくれました。「水はうちのを使って。」プレマシリさんを気遣ってのことでしょう。
家の住み心地がどうかを知るために泊めさせて頂きましたが、結果としてスリランカの皆さんの温かさを肌で感じることができる忘れられない一晩となりました。
今後の発展を願って
住宅の建設は2006年8月に無事終わり、新しい生活が始まって早半年が過ぎました。働いたり、勉強したり、買い物に行ったり、冠婚葬祭に参加したり・・・津波の被害を何とかして乗り越えようと、人々の生活が営まれています。
モニタリング調査の最後の質問で要望を聞いたところ、一番多かったのが、「新しいビジネスを始めて、家計を少しでも助けたい」という女性たちの強い思いでした。なんとかその思いを実現するべく、現在は、現地NGOである女性銀行が地域の女性向けに低金利で融資を行っています。
スリランカの今後のますますの発展と成長を、心から願っています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 野際 紗綾子
東京都出身。2005年4月より東京事務所スタッフ。アジア事業を担当。外資系の金融機関に勤務するも、世界の貧困などで苦しむ人々への問題意識が高まり転職。夜間の大学院で国際協力を学び、仕事との両立で苦労しながらも2007年3月には修了。