ザンビアでの世界エイズデーイベント
難民を助ける会は、ザンビアの首都ルサカ郊外に位置するチランガ地域にて、エイズウィルス(HIV)感染を予防するための活動や、既にHIVに感染している人を対象としたケア活動を、地域で活動している団体などと連携しながら実施しています。今回は、2008年12月1日に実施した「世界エイズデー」イベントについて報告します。
年に1度の「世界エイズデー」のために
12月1日は「世界エイズデー」でした。ここザンビアの首都ルサカの近郊チランガ地区では、HIV/エイズに関する理解を深め、またエイズで亡くなっていった方々の冥福をお祈りするために、毎年皆が力を合わせてイベントを開催しています。
今年のテーマは、「Keep the promise. Lead, Empower, Deliver」。全ての人々が、HIV/エイズに関連する様々な「約束」を守って責任を果たそうという意味。例えば、国会議員なら国の目標を達成する、一市民ならばHIVの感染拡大を防ぎ、既に感染している人々を支援する。そんな約束を達成するために行動を起こそう、というメッセージが込められています。
このイベントは、難民を助ける会、難民を助ける会が支援する中学・高校のエイズ対策クラブやHIVの陽性者グループなど14の団体・グループで企画・運営されています。
昨年の経験から、今年はイベント広報を徹底
世界エイズデーでのイベント開催も、今年で4年目。今回は、昨年の反省を活かし、より多くの人々に参加してもらえるよう、広報活動を徹底することにしました。運営の準備をするグループと、イベントを宣伝するグループに分かれました。
広報活動グループは、まずは地域各所にポスターを貼り、1週間前からは世界エイズデーウィークと称して連日小さな啓発イベントを実施しました。「エイズデーを機に自発的にHIV抗体検査を受けよう!」というメッセージと共にエイズデーを宣伝しました。更に、開催数日前から前日まで会場周辺の各家庭を訪問して、イベントの詳細を宣伝して回りました。
一方、運営グループは来賓の招待準備、会場との交渉、テントや食料等の調達などに奔走。加えて各団体は、普段から取り組んでいるHIV/エイズ対策活動や関連する知識をまとめて当日の発表に備えました。
晴天に恵まれたエイズデー本番は、パレードから始まりました。 横断幕を掲げて約1時間マーチングバンドと共に住宅地の中を行進。軽快なリズムに誘われて、道の脇には人々が家から出てきて並び、子どもたちは列に加わって進みました。
大人も子どももグループごとに分科会(セミナー)
このイベントのメインは、テーマ毎に分かれたセミナーです。イベントの際に、教室を使った小規模なセミナー形式を始めてから4年目になります。それぞれが経験を重ね、ノウハウが出来てきたことにより、テーマの幅、内容共に充実してきました。セミナーのテーマは以下の8つです。
- 自発的HIV抗体検査(VCT)について
- HIVに感染している人に必要な栄養について
- HIV感染を防ぐ方法:禁欲と貞節について
- 結核の種類と結核の再発について
- 母子感染の予防について
- HIV感染を防ぐ方法:コンドームの使い方と適切な行動を促すためのコミュニケーション方法について
- 差別と偏見について
- 子ども向けワークショップ
イベント広報の効果でどの教室も満員に!
宣伝が功を奏したのか朝から沢山の人が集まり、どの教室も満員。準備していた参加者用の360冊のノートが足りなくなるほど多くの参加者が集まり、主催者たちは嬉しい悲鳴を上げていました。
一方でグラウンドでは、子ども向けのワークショップも開催。500名以上の子どもたちが集まりました。年齢の近いグループ毎に分かれ、エイズ対策クラブのリーダーたちの指導のもと、体を動かすゲームや遊びを取り入れながら楽しんでエイズについて学んでもらいました。リーダーたちがお互いに協力しながら、小学校低学年の子どもを含めたグループをしっかりとまとめ、これまで学んだ力を発揮していることを実感しました。
昨年を大幅に上回る参加者で大成功!
分科会の後は、全員グラウンドに集まって、恒例になった○×クイズ、そして各団体によるHIV/エイズのテーマを盛り込んだダンス・歌・演劇の発表です。
演劇では代々エイズ対策クラブの先輩から受け継がれた衣装でおもしろおかしく笑いをとりなが、差別や偏見に苦しむ人の姿を巧みに演じていました。一方では、HIV感染者役の女の子が涙を流しながら差別に苦しむシーンにはみんなが息を呑んで見入っていたのが印象的で、現実に起こっている問題を思い胸が痛む瞬間でした。
昼食を終えた後はみんなが大好きなサッカーやネットボールなど、スポーツ大会で締めくくり今年の世界エイズデーも無事終了しました。
今回は、目標とする集客人数・動員人数をいかにして集めるかということに力を入れて準備をしてきました。1つの目標に向かって各団体が協力した結果が現れ、大人の参加者人数が昨年を100人以上上回る450名となったことは大きな成果でした。
各プログラムの内容にも随所にこれまでの経験が生かされ、HIV/エイズに関する正しい知識を広めていく大切な機会を持てたことにイベントの意義を感じました。継続が少しずつ力になっていることを再確認し、また、明確な目標に向かって皆が尽力すれば、適切な成果を生み出せることも認識できました。
今後も難民を助ける会は彼らの応援を続けていきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ザンビア・ルサカ事務所 芦田 崇
2005年3月よりザンビア駐在。大学卒業後、国家公務員として社会保障政策の実務に携わり、その後大学院で社会開発学を学ぶ。NGOの一員としてジンバブエやタイでエイズ問題に取り組んだ後、難民を助ける会へ。(大阪府出身)