ラオス人による車イス工房を目指して
車イス工房支援のこれまで
国立リハビリテーションセンター内には、ラオスで唯一の車イス工房があります。難民を助ける会は、これまで工房への支援として日本人駐在員を派遣し、工房の建て替え、車イス製造に必要な機材の供与、製造技師の技術強化を行ってきました。それにより、支援前は年間10台程だった製造台数が、現在は約400台にまで増加しています。2008年からは、故障した車イスを、ラオス各地で修理できるようにするための体制づくりや、より強度の高い車イス製造を目指した支援を行っています。
専門家の指導で工房をリニューアル!
ラオスでは約48万人が障害をもっていると言われ、まだ多くの人たちが車イスを必要としています。限られた人と予算でいかに効率よく、より頑丈な車イスを製造し、多くの人たちに届けるかが課題です。
製造の効率を上げるため、このたび作業工程をどのように改善したらいいのか、専門家の指導を仰ぐことにしました。指導してくれるのは、ラオス出身で現在はタイ在住、かつて日本の自動車部品工場や車イス工場で技術者として20年以上働いた経験を持つ、ヴィーラワットさんです。
一回目の指導は車イス製造技師11名を対象に、製造現場の基本といわれる「安全第一・整理整頓」について行われました。日本の製造現場での経験が長いヴィーラワットさんは、機材の配置場所や道具の保管場所の改善を指示し、あっという間に工房内が整然としたものとなりました。さらに、働く技師の安全を確保するため、機械作業中に人が入ってはいけない範囲を示すラインが新たに工房内に引かれました。
障害のあるなしに関わらず働ける環境に
難民を助ける会では、障害のある人たちも技師として雇用しています。しかし、作業台の高さや機材の配置が原因で、障害の有無によって担当する作業が分けられていました。
この問題を解決するため、ヴィーラワットさんが、立ったりしゃがんだりせずに作業できる高さの台の設置や、機材の配置換えを指示。技師全員が、障害に関係なく全ての作業を行えるようになりました。
現在2回目の研修が、耐久性を高めるための車イスの改造方法について行われています。今後も、工房に新しい意見を取り入れつつ、ラオス人がラオス人のために、ラオスにある材料を使って車イスを製造していくため、難民を助ける会は工房を支援していきます。
自分の力で外出できるのがとっても嬉しいです!・・・手漕ぎ三輪車を受け取る日・・・ビエンチャン市内に住むブアシナンさん(30歳)は、ポリオ(小児マヒ)の後遺症で足に障害があり、松葉杖を使って生活をしていました。 ある日、教会で友達から車イス工房について聞いたブアシナンさんは、お兄さんと一緒に工房にやってきました。難民を助ける会の作業療法士、福岡幹彦が面接し、上半身に障害がなく比較的丈夫な彼女には、長距離移動に便利な手漕ぎ三輪車をつくることが決まりました。 手漕ぎ三輪車を受け取る日、ブアシナンさんは福岡のサポートで乗り方を練習。サイズや乗り心地をよく確認したうえで手漕ぎ三輪車を受け取りました。また、代金として2万ラオスキップ(約250円)を支払いました。一台約1万6千円する手漕ぎ三輪車ですが、自分の車イスだという意識を高めてもらうために、払える範囲で代金を払ってもらっています。 自宅で裁縫をして生計を立てているブアシナンさんは、家の中では今まで通り松葉杖を、外出するときは手漕ぎ三輪車を使うことになります。「自分の力で教会に行けるようになるし、お客さんのところに仕上がった服を届けることもできるようになります。今まで兄に頼んでいた買い物にも自分で行けるのがとっても嬉しいです。」と話してくれました。 |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 内山 麻希
2008年4月より東京事務局でラオス事業を担当。大学、大学院で行政学を専攻。JICAのインターンとしてエチオピア、青年海外協力隊員としてマラウイで活動した後、難民を助ける会へ。