千の幸せを願って...ラオスの障害児福祉施設を支援しています
ラオスで唯一の障害児福祉施設
難民を助ける会は、2008年より首都ビエンチャンにある障害児のための福祉施設、「バンセンスックセンター」を支援しています。現在ラオスには障害のある子どもたちを受け入れる施設が他になく、バンセンスックセンターがラオスにある唯一の障害児福祉施設です。
センターは、スンダラさんという一人の女性によって設立されました。スンダラさんは自分の息子に脳性マヒの障害があるとわかったとき、子どもを受け入れてくれる施設がなかったため、自ら施設を立ち上げたのです。
作業療法士の指導のもと、リハビリに励む子どもたち
このセンターは、障害をもつ子どもたちが、親が仕事などに出かけている昼間、リハビリテーションのために通う通所施設です。2009年3月現在、幼稚園から小学校までの年齢の子ども13名が通っており、そのほとんどに重度の脳性まひの症状がみられます。
主な症状としては、安定して座ることができない、横向きに寝ると体がねじれる、不随意運動(自分の意思と関係なく手足などが動いてしまうこと)が常に伴うことなどがあります。
このような子どもたちは、筋肉の硬直などを防いで体を少しでもよい状態に保つため適切なリハビリテーションを受けること、また常に良い姿勢を保つように補助をする必要があります。センターでは理学療法士4名を含むラオス人スタッフ11名が中心となり、難民を助ける会の日本人作業療法士の技術指導のもと、子どもたちにリハビリテーションを提供しています。
また、食事を取ったり、お風呂に入ったりと、日常生活を通じた日常動作の訓練も行っています。
子どもたちの楽しみはカラオケ!?
そんな中、子どもたちが一番好きなのは、スタッフがミュージックセラピー(音楽療法)と呼ぶ時間です。
子どもたちは、思い思いの楽器を手に、テープレコーダーから流れる音楽に合わせて演奏をしたり、マイクを持った子どもはそれに合わせて歌を歌ったりします。皆がとびきりの笑顔を見せる時間です。
ミュージックセラピーというより、一見カラオケを楽しんでいるようにも見えますが、スタッフによれば真剣なセラピー中とのこと。健全な心を育むために効果があるのです。
千の幸せを願って
日本とは異なり、このような子どもたちへの公的な支援が全くないラオスでは、障害をもつ子どもの多くが、長年家に閉じこもったまま症状が悪化してしまうケースが多く見られます。ラオス語で「千の幸せ」を意味する「バンセンスック」。私たちの取り組みによって、ラオスにおける障害児支援への理解が深まることを願っています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 内山 麻希
2008年4月より東京事務局でラオス事業を担当。大学、大学院で行政学を専攻。JICAのインターンとしてエチオピア、青年海外協力隊員としてマラウイで活動した後、難民を助ける会へ。