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希望ある社会を築くお手伝いを HIV/エイズに苦しむ子どもたちを応援してください

2009年08月17日  ザンビア感染症対策
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難民を助ける会は、ザンビアの首都ルサカ周辺でエイズ対策事業を行なっています。

今回は、2月に出張した東京事務局の山田が現地の様子を報告します。

人口約1200万人のザンビアでは、実に60万人の子どもがエイズで親を亡くしています。稼ぎ手を失い生活が厳しくなり、教育も受けられなくなる子どもが後を絶ちません。難民を助ける会は、首都ルサカ近郊のンゴンベで、そうした子どもたち70人の就学を支援しています。

人口3万人、貧困層が暮らすこの地域は、泥を固めて作った小さな平屋建ての住居が並び、舗装されていない狭い道路はひとたび雨が降れば歩くのも困難です。けれども、家々は掃除が行き届き、人々は古くてもきれいに洗濯された服で身なりを整え、決して「貧しい」とは感じません。

2009年2月、この地域に暮らす子どもたちの家を訪ねました。

「家族の中で、学校に通えるのは私だけ」親を失った子どもたちの厳しい現実

家族の中で唯一学校に通えるユニスさん

「学校に通い続け、ちゃんと卒業したい」静かに訴えたユニスちゃんの瞳が忘れられません

14歳のユニス・ダカさんは、8歳の時にエイズでお母さんを亡くし、いまは祖父母と兄、弟、いとこの6人暮らし。3年前から難民を助ける会の支援で学校に通っています。ザンビアでは小学校から英語を習うため、ユニスさんもきれいな英語で応対してくれました。

「学校が好き」というユニスさん。特に環境科学の授業が好きで、将来は先生になりたいと夢を語ります。

「周りには学校に行けない子が多いから、先生になって教えてあげたいの。兄と弟も学校に行けていないので、私が教えてあげているんです」

「ユニスは勉強熱心ですよ。足の悪い私に代わって、家事も本当によくやってくれます」とお祖母さん。ガスも水道もない彼らの家では、家事も重労働です。「この子の父親は病気がちだし、私たちは高齢で働けません。難民を助ける会の支援がなければ、とてもこの子は学校に通えませんでした」。同じように貧しい親戚からの援助だけが頼りで、生活はとても厳しいといいます。

ユニスさん一家のように、幼い子どもたちと高齢の祖父母だけが残された家庭や、10代の子どもだけで暮らしている家庭がたくさんあります。支援を受けている子の多くが、学校に通うことができるのは兄弟姉妹の中で私だけ、と言っていたのが心に残りました。ただでさえ失業率の高い地域のため、高齢者や子ども、ましてや教育の機会を奪われた人たちが職を得るのはさらに困難です。社会福祉制度が整っていない場所で、働き手を失うことの深刻さを痛感しました。

「エイズについてもっと知ろう」10代の高校生が住民たちに正しい知識を伝えます

戸別訪問の様子

「あの質問にはこうやって答えたらどうかな」戸別訪問の後、芦田崇駐在員(左)と担当スタッフのシャロン(右)が生徒たちにアドバイスします

チランガという地域では、高校生が啓発活動を行うエイズ対策クラブの運営を支援しています。土曜日、チランガの中でも特に貧しいフリーダム地区で、パークランズ校のエイズ対策クラブの生徒たちが「戸別訪問」を実施しました。生徒が3人1組になって家々を回り、住民と直接エイズ問題について語り合います。

この地域を訪れるのは3回目。どの家も突然訪問した生徒たちを快く招き入れてくれました。この日のテーマは、HIVの検査施設と、エイズの発症を抑える薬について。「検査施設を知っていますか?」「自分の感染の有無を知ることはなぜ必要だと思いますか?」など、用意した質問を投げかけていきます。

床屋にいた20代前半の男性5人は、エイズの深刻さは認識していましたが、検査は怖いから受けたくないといいます。「HIV感染=死」というイメージが強く、検査を受けたがらない人が多いのです。そうした反応を受けて、生徒は、薬は無料でもらえること、しっかり飲んでいればエイズの発症を抑えられること、感染の有無を知らなければ他の人に感染させる危険があることなどを説明し、検査の必要性を訴えました。フリーダム地区では、前回彼らが訪問した時にHIV検査の重要性が充分に知られていないことがわかり、今回のテーマを選びました。訪問の後は毎回反省会をもち、次の活動に活かします。

芦田駐在員は当初、戸別訪問は難しいのではないかと思ったそうです。しかし、実行と反省を繰り返すうちに企画は磨かれていき、効果が上がるだけでなく、生徒に自信もついて、やる気もどんどん出てきたと言います。今では自分たちで積極的にアイデアを出し、地域の医療機関などと連携したり、他の学校のエイズ対策クラブとの勉強会を計画するなど、彼らの力が花開いている様子が見られます。

未来に巣立つ彼らのために

彼らの巣立つ社会が希望に満ちたものとなるように

彼らが巣立つ社会が、希望に満ちたものとなるよう、難民を助ける会はザンビアでの支援を続けていきます(エイズにより親を亡くした子どもたちが通うフライングエンジェルズ小学校にて)

10代半ばの彼らが、自分よりずっと年上の人たちに対して堂々と知識を伝え、質問に答える姿は、とてもまぶしく映りました。また、彼らがこうした活動を通じて、確実に社会を変える力を育くんでいると大きな希望を感じました。

ザンビアのエイズ問題は根深く、深刻です。彼らが巣立っていく社会が、希望あるものであってほしい。エイズという病に負けず、1人ひとりの可能性を開かせることのできるように、少しでも役に立ちたいと、改めて思いました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 山田 かおり

2007年11月より東京事務局で広報・支援者担当。国内のNGOに約8年勤務後、難民を助ける会へ。(静岡県出身)

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