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タジキスタンの障害者が、より良い医療サービスを受けられるように

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障害児を持つ親に運動療法のリハビリテーションを指導する河野氏

雨漏りを修理した体育館で、障害児の身体を動かしながらリハビリテーションを指導する河野眞・医療専門家(右)

タジキスタン共和国は旧ソ連各国の中でも最も貧しい国のひとつです。ソ連崩壊以後は財源の不足から、旧式の機材は交換されず、施設が老朽化しても放置されたままです。タジキスタンの障害者を取り巻く環境は厳しく、一刻も早い改善が求められています。
そんな中、難民を助ける会では外務省からの助成を受け、タジキスタンで唯一の障害者リハビリテーション総合病院を支援し、同病院の障害者への医療サービスの向上を目指しています。
2010年6月と9月にタジキスタンへ出張した事業担当の杉浦公則が報告します。

唯一の障害者専門施設-しかし雨漏りがひどく使えない部屋も

難民を助ける会が提供した医療機材を確認する医師

難民を助ける会が提供したX線装置

難民を助ける会では、2010年1月より首都ドゥシャンベで、障害者へ様々な医療サービスを提供している障害者リハビリテーション総合病院を支援しています。

同病院の建物は1992年建築。その後18年間、修繕がほとんど行われていなかったため雨漏りが深刻で、診察に使えない部屋が年々増えていました。そこで、難民を助ける会では同病院の屋根を修理したほか、同様に雨漏りがひどく使えていなかった体育館の屋根も修理し、使用できるようにしました。

医療機材も旧式のものが多く十分な診療を行えなかったため、基本医療機材5点(X線装置、胃内視鏡、気管支鏡、聴力計、耳鼻科用実体顕微鏡)と、運動療法のためのリハビリテーション用器具を提供しました。

セミナー開催を通じ、身体を動かすリハビリ方法を広く人々へ

河野専門家から自宅でできるリハビリテーションのやり方を熱心に学ぶ参加者たち

セミナーでは河野眞・医療専門家(中央)が患者の身体を実際に動かしながら、運動療法を指導

障害の症状を改善し、機能を回復するには、電気治療器などを用いて身体に刺激を与えるリハビリテーション(物理療法)と、身体を動かすリハビリテーション(運動療法)とを組み合わせた、複合的なリハビリテーションを行うことが重要です。しかし、同病院を含め、タジキスタン共和国では物理療法にのみ重点が置かれ、運動療法が行われることはほとんどありませんでした。

そこで、日本から作業療法士の河野眞・医療専門家を派遣して、同病院や障害児施設などで運動療法を指導するセミナーと個別相談を合計11回開催しました。

セミナーには、同病院の医療スタッフや障害者とその家族など毎回約40名が参加。河野・医療専門家が実際に障害者を手取り足取りしながら、自宅でもできる運動療法の動きを指導すると、参加者は動きを覚えようとみんな一生懸命に身体を動かしていました。個別相談では障害者本人やその家族が、「一日にどの程度、またどのくらいの期間リハビリを続ける必要がありますか?」、「リハビリを続けることでマヒが生じたりしませんか?」など、熱心に質問していました。これまで運動療法についてまったく知らなかった参加者からは、「身体を動かすリハビリテーションの大切さがわかった」「自宅で実践できる簡単な運動を覚えることができた」など、たくさんの感謝の言葉をもらいました。
また、写真入りの運動療法のマニュアルを作成し、同病院のスタッフや患者とその家族がそれを見ながら運動療法を実践できるようにしました。

「セミナーで教えてもらったリハビリテーションを、家でも実践します」
アモノバ・ウメダさん(20歳・女性・脳性マヒ)
セミナーに参加した親子と宮本、宇田両駐在員

セミナーに参加して前向きになったというウメダさん(右から2人目)とその母親(同3人目)。駐在員の宇田真子(右端)と同・宮本奈穂子(左端)

「今日のセミナーはとても面白かったです。一番興味深かったのは、河野・医療専門家の講義です。今日教えてもらった運動は、家でも簡単にできるものでした。また、今日は色んな人たちと話すことができました。とても有意義な一日でした。」(ウメダさん本人)


「娘は日頃家にこもっています。外出の機会がほとんどなく、本人も精神的に不安定なので、あまり他人と話もしません。しかし、娘は今日のセミナーを一週間前からとても楽しみにしていました。このセミナーをきっかけに、娘は以前より活動的になるのではないかと思います。これが最初で最後ではなく、引き続き、何らかの形でセミナーや障害者の人たちが集まれる機会があればいいな、と思います。この企画は本当に素晴らしかったです。ありがとうございました。」(ウメダさんの母親)

障害者のための様々なサービスについて情報提供も

セミナーでは、運動療法の指導と個別相談のほか、障害者リハビリテーション総合病院の医療サービスについての詳しい説明や、タジキスタン国内の障害者団体の活動内容の紹介、またタジキスタンの障害者への公的な社会福祉制度についての説明も行われました。セミナーの参加者たちは、これまで障害者のためのサービスと、どうしたら利用できるかについて知る機会がなかったため、この点でもとても喜ばれました。

「周囲の友人にも今日学んだことを伝えます」
フドイクロバ・ズライホさん(22歳・女性・脳性マヒ)
セミナーに参加してくれたフドイクロバさん(中央)と河野眞氏(右)、駐在員の宮本菜穂子(左)

「有意義な一日だった」とフドイクロバさん(中央)。河野眞・医療専門家(右)、駐在員の宮本奈穂子(左)と

「河野・医療専門家によるセミナーはもちろん、公的な社会福祉制度についても知ることができ、とても参考になりました。労働社会保障省の担当者が直接、今後はバリアフリーの環境を整備していきたいという説明をしてくれました。私も以前から、段差が高いバスや、急すぎる階段について疑問を抱いていました。

今日学んだ簡単な運動や、労働社会保障省の方が説明してくれたことを周りの障害者の友人にも教えてあげるつもりです。とても、有意義な一日でした。このような機会を是非また作ってください。」

難民を助ける会では現在、障害者リハビリテーション総合病院の体育館を、障害者だけでなく地域住民にも開放していけるように調整を進めています。同施設を多くの人が利用できるようになり、タジキスタン共和国で「障害とともに生きる」という考えを広める第一歩に繋げていけるよう、これからも活動を続けます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 杉浦 公則

2010年4月より難民を助ける会で主にタジキスタン事業を担当。大学卒業後、民間企業に勤務。青年海外協力隊員としてウガンダで農業分野の活動に携わる。帰国後難民を助ける会へ。(静岡県出身)

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