蛇口をひねれば水が!スーダン南部で給水システムが完成しました
カポエタの住民20,000人が安全な水を飲めるように
スーダン南部の東エクアトリア州カポエタにおいて、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受け2010年7月から建設を開始した2つの給水システムが、10月末に完成。お披露目を兼ねた完成式典が、東エクアトリア州カポエタ北部のリオトの町で行われ、首都ハルツームより和田明範在スーダン日本国大使が、東エクアトリア州政府より大臣をはじめ政府関係者が出席しました。
カポエタの1人1日当たりの水の使用量は、日本の100分の1以下
難民を助ける会が2006年に実施した調査では、水の使用量はスーダンのカポエタ市周辺で、1人1日当たり2.5リットル。これは、国際的な人道援助の規定である「人道憲章と災害援助に関する最低基準」が推奨する1人1日当たり15リットルの基準をはるかに下回るものでした。一方で、日本が使用する水の量は1日1人当たり303リットルです(国土交通省水資源部より平成22年度データ)。
また、難民を助ける会が活動する東エクアトリア州では、安全な水を確保できる人の割合は、人口約90万人の3分の1強にとどまっており、不衛生な水が原因で下痢や腸チフスなどにかかる率も高くなっていました。
そこで、難民を助ける会では2008年からカポエタに給水システムを構築する計画を進めてきました。太陽光発電で動くモーターを使い地下から汲み上げた水を、給水塔を経由して村の近くまで引き、蛇口をひねれば水が飲めるようにすれば、約20,000人の地域住民に安全な水を安定して供給することができるのです。
給水システムの仕組み
様々な困難を乗り越えて、完成へ
しかし、給水システムの完成にたどり着くまでの道のりは、山あり谷ありでした。
というのもここスーダン南部には、十分な建設機材もなければ、必要な資材も簡単には手に入りません。そこで隣国ケニアの首都ナイロビから車で数時間かけて資機材を運ぶことになるのですが、雨季になれば道はぬかるみ、車を走らせることはとうていできません。無理にでも走らせれば、ぬかるみで何時間も立ち往生するのは日常茶飯事。物資調達が何日も遅れることが頻繁にあります。「当初の計画どおりに進むだろうか」、そんな不安もよぎりました。
それでも、スーダンの関係省庁や郡役所の担当者、建設業者、難民を助ける会職員、すべての関係者が、一日も早くこの給水システムを完成させて、地域住民に安全な水を提供したいという思いで一丸となって取り組み、ついに完成させることができました。
この給水システムでは、町の近くに設置した水栓所ごとに、地域住民による水管理委員会を組織し、定期的な管理指導を行うようにしています。住民自らの手でこのシステムを維持管理することにより、安全な水を次の世代まで安定して供給できるようにすることがねらいです。
難民を助ける会は、カポエタの人々のために今後も活動を続けてまいります。
「水汲みにかかる時間が少なくなった分、学校に行けるようになって嬉しい」 ナレム・ロチョベちゃん(10歳) |
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「以前は、2キロメートル離れた場所まで、朝と晩に水を汲みに行っていました。でもこの給水システムが出来てからは、家から30メートルのところで水が汲めるので、とてもうれしいです」と語るナレムちゃん(10歳)。 |
「責任を持って水栓所を管理しています」パウリーノ・ノビルさん(40歳、男性) | |
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「私は、リオトの中心地近くの水栓所管理委員会の代表です。難民を助ける会から5日間のトレーニングを受け、今はトレーニングで習ったことを地域の住民たちに伝えています。率先して水栓所の清掃を行ったり、水を汲みに来た住民には順に並んでもらうよう指導したりしています。住民たちが、限りある貴重な水を、決まった時間に決まった量だけ使うようにするため、水栓所の門を開閉するのも私の仕事です。いつも地域の人たちは私が来るのを待っています。このようなシステムを作っていただきありがとうございます。でも、まだまだこの周辺でも水は不足しています。このような素晴らしい給水システムが地域にもっと増えることを願っています。」 |
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
スーダン・カポエタ事務所駐在 豊井 彰一
2010年6月よりスーダン・カポエタ事務所駐在。大学卒業後、民間企業に勤務。その後、青年海外協力隊員としてウガンダでの村落開発に携わり、帰国後難民を助ける会へ。(兵庫県出身)