ハイチ大地震の被災地で猛威をふるうコレラ予防を開始しました
ハイチ国内のコレラ感染者は9万人以上
ハイチ大地震の被災地では、現在、コレラが大流行しています。ハイチ北部のアルティボニット県で最初のコレラ感染が確認されたのが、2010年10月。その後、感染は拡大し、12月6日現在、ハイチ全土での死者は2071人、感染者は9万1770人にものぼると言われています。(ハイチ保健・人口省発表)大地震の被災地では、いまだにテント小屋などの劣悪な衛生環境で生活する人々が多く、特に人口が密集している首都ポルトープランス市では感染拡大が懸念されています。
そこで、難民を助ける会は、2010年9月から行っている巡回診療先の児童養護施設の職員と子どもたちを対象に、コレラ予防対策を開始しました。
抵抗力の弱い被災者は数時間で死亡する可能性も
コレラに感染すると、激しい下痢や嘔吐を引き起こします。抵抗力の弱い患者の場合、1日20~30回の下痢や嘔吐を起こして急速に脱水症状が進み、適切な治療を受けなければ数時間で死亡することもあります。被災者の多くは、栄養状態が悪く抵抗力が弱いため、予防の徹底と、発症した場合の応急処置が欠かせません。
予防パンフレット、浄水剤、経口補水塩などを配付
コレラは、患者の排泄物で汚染された水や食べ物をとることで感染します。食事の前に手を洗う、清潔な水を飲む、排便はできるだけトイレを使い排泄物を適切に処理するなど、日本では当たり前と思われることを実践すれば防ぐことが可能です。
そこではじめに、児童養護施設の職員にハイチ保健省等が発行しているパンフレットを配付。コレラの感染経路や予防方法、患者の吐いたものや排泄物の処理方法などの基本的な情報を説明します。施設の職員の中にはコレラという病名を聞いたことはあっても、予防方法を誤解している人も多くいました。説明を十分理解してもらった後で、手を洗うための石けん、水を浄化するための浄水剤、コレラを発症した場合に脱水症状を和らげる経口補水塩を配付しています。
子どもたちに「手洗い講座」を
子どもたちには石けんを使った手洗い講座を行いました。ハイチの子どもには、食事の前やトイレの後には手を洗うという習慣はありません。手の洗い方を初めて教えてもらった子どもたちは、とても興味深く手洗い講座に参加してくれました。
講座の後には、ハイチ保健省が発行しているコレラ予防のポスターを貼りました。私がポスターを貼っていると、小さな子どもたちがたくさん集まってきて、つま先立ちしながらポスター貼りを手伝ってくれました。そして、その絵を見ながら、少し難しい単語の意味を年上のお兄さん、お姉さんに聞いて一生懸命理解しようと大きな目をクリクリさせては、何度も何度も読み返していました。
抵抗力の弱い子どもたちが集団生活を送っている児童養護施設では、適切な予防対策を取らなければ短期間で感染が拡大してしまいます。難民を助ける会は、これからも児童養護施設でコレラ予防対策を続けていきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ハイチ事務所駐在 古川 千晶
2010年10月よりハイチ駐在。大学卒業後、人材コンサルティング会社などを経てイギリスの大学院で国際開発学を学ぶ。帰国後、難民を助ける会へ。(大阪府出身)