東日本大震災(37):被災者へ巡回診療と保健活動を行っています
医療支援の手が届かない牡鹿半島の在宅避難者へ
難民を助ける会では、東日本大震災の被災地である宮城県石巻市牡鹿半島で、被災者の方々への巡回診療を行っています。
牡鹿半島は今回の震災で甚大な被害を受けた地域の一つです。現在、東海大学と日本赤十字社の医療チームが半島の北部を、自衛隊の医療チームが半島の南部を担当し、手分けして半島全体の患者の対応にあたっていますが、活動場所は避難所などが中心で、在宅避難者の方々までカバーできていないのが現状です。
高齢であったり、足が悪いなどの理由で診療場所である避難所まで行けなかったり、診療の情報そのものが入りにくかったりすることもあります。石巻市内では、全国の市町村から現地入りした保健師が地域毎に分担して在宅避難者を訪問し、住民の体調や被災状況を確認していますが、牡鹿半島にはそうした訪問看護体制はできていません。
そこで、難民を助ける会では4月9日より、長年地元で医療を行ってきた安田敏明医師を中心に、看護師の永井萌子と関井美佳の3名の医療従事者と、事務を担当する村越英治郎の4名から成る医療チームで、在宅避難をしているお宅や避難所などへの巡回診療を開始しました。
活動場所は、在宅避難者が多い牡鹿半島の牧浜、竹浜、狐崎浜、鹿立(すだち)、福貴浦、小積浜と小淵浜で、住人約640人を対象としています。関係する行政機関や、石巻市で医療支援を統括している石巻赤十字社とも調整の上、週末には安田医師による巡回診療、平日は慢性疾患の管理や感染症の予防、精神的なサポートなどの保健活動を行っています。
一人ひとりにきめ細かいケアを
個人宅や避難所などを回る際は、まずその地域の災害対策本部を訪問し、調整をした上で伺ったり、伺ったお宅で紹介を受けてさらに別のお宅を伺ったりしています。
4月16日に伺った東浜地区の牧浜という地域のあるお宅では、高齢のご夫婦が自宅で避難生活を送っておられました。おふたりとも体調には問題ないとのことでしたが、奥様の血圧が気になるとのこと。そこで血圧を測定し、問題がないことがわかると、とても安心された様子でした。
訪問の際は、診療だけでなく、生活の不安や困っていること、足りない物資など、いろいろなお話を伺います。こちらのお宅ではトイレが汲み取り式で、震災後はバキュームが来ておらず、近くの避難所にバキュームが来た際依頼したものの、個人宅までは手が回らないといわれていました。伺った時には衛生状態に問題はなかったものの、長引けば悪化する恐れがあります。そのためこの後、避難所の担当者にこの旨を伝え、善処していただくようお願いすることにしました。
「今後も定期的に訪問させていただき、体調や生活で困ったことがないかなど伺います」とお伝えしたところ、「そうしていただけるととても助かります。ありがたいです」と、涙ぐみながらおっしゃっておられました。被災者の方々が、とても強い不安を抱えながら毎日を過ごしておられることを実感しました。
住民の方々は被災して大変な状況にも関わらず、とても明るくあたたかく、皆で支えあって生活しておられることを感じます。私たちの訪問にとても感謝してくださり、お茶などもふるまってくださいます。その姿に私たちの方が逆に元気をいただいています。今後も、丁寧に被災者の方々の訴えに耳を傾け、お気持ちを受け止めながら、皆さんの健康を守る活動を続けてまいります。
※支援活動にあたっては、企業や団体、学校、個人の皆さまよりご寄付や物資のご提供などのご協力をいただいて行っております。すべての方々をご紹介することができませんが、何卒ご容赦ください。皆さまのあたたかいご協力に心より感謝申し上げます。
緊急募金にご協力ください
皆さまのお気持ちを、被災された方々に確実にお届けします。どうぞご協力をお願いいたします。
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*通信欄に「東日本大震災」とご記入ください。*領収証が必要な方はその旨お書きください。
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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
緊急支援チーム(看護師・保健師) 永井 萌子
大学卒業後、3年間病院で勤務。その後1年間米国へ語学留学し、帰国後2年間保育園で看護師として勤務。(東京都出身)