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東日本大震災(70):復興に向けた連携を後押し―岩手県で官民による調整会議を開催

2011年08月09日  日本緊急支援
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震災から間もなく5ヵ月。仮設住宅への入居や瓦礫の撤去が徐々に進み、寒かった被災地も今度は蒸し暑さと豪雨に悩まされるなど、現地の状況は刻々と変わっています。自治体や民間団体は被災者とともに一歩一歩前へ進もうとしていますが、未だに課題は山積みです。官民が連携して復興に取り組むための試みについて、東北事務所長の野際紗綾子が報告します。

なぜ連携が必要なのか?

岩手県での調整会議に出席した方々

7月に開催された岩手県での調整会議。難民を助ける会が開催を呼び掛け、ようやく実現した

岩手県の復興基本計画には、復興のまちづくりを「NPO・企業・市町村などと協働」して進めるという記述があります。しかし、一部の施設や避難所に支援が集中する一方で、在宅で避難生活を続ける障害者に十分な支援が届かないなどの問題は、自治体とNPOの連携不足にも一因があったと言えます。

また、8月には被災地の状況が再び大きく変わることが予想されます。多くの被災者が仮設住宅に入居したり、夏休みを利用してボランティア活動に訪れる人が増えたりするためです。その時までに、県とNPOとが情報や課題を整理・共有し、協力して復興に取り組んでいけるようにする必要がありました。

海外での経験を活かし、調整会議の開催を提案

海外の災害支援の現場では、クラスター会議と呼ばれる分野ごとの調整会議が災害発生の数日後から開催され、国連機関、現地政府、国内外のNGOが参加します。私はこれまで、ミャンマー(ビルマ)、インドネシア、パキスタンなどで緊急支援活動に従事してきましたが、いずれの国でも、この調整会議を通じて、官民が連携した包括的な支援活動を行ってきました。この経験をもとに、東日本大震災被災者支援においても、調整会議の必要性を強く感じ、開催を県に働きかけてきました。7月初旬に岩手県地域福祉課から会議開催に向けて具体的な企画・立案を依頼され、関係者との協議を経て、7月27日に会議が開かれることになったのです。

いざ、開催! -第1回岩手県調整会議

会議で発言する難民を助ける会の野際紗綾子

調整会議にて発言する野際紗綾子。分野別調整会議の定期的な開催を提案した

2011年7月27日午後3時、東日本盛岡ホテルに、辻元清美首相補佐官や岩手県庁の関係者、13の民間団体の代表ら約40名が集まり、「東日本大震災津波ボランティア連絡会議」が開催されました。各機関・団体から活動内容が報告され、課題や政策提言も発表されました。

釜石災害対策本部の山田守氏は「こんなに様々な団体が多くの活動を行なっていることを初めて知りました。誰がどこで何をしているかといった情報を、これまでは得ることができませんでした」と述べました。また、岩手県社会福祉協議会の千田充氏からは、「単身高齢者などの個別の要援護者に対応して、きめ細やかな生活支援を行いたい」など、様々な提案がありました。私は難民を助ける会を代表してこの会議に出席し、全体の復興対策を協議する今回のような会議を中心に、県の担当課と関連民間団体による分野別の調整会議を定期的に開催することで双方の連携を深め、今後の政策や実務に活かしていく必要性を訴えました。

盛岡での調整会議参加者の集合写真

会議参加者で記念写真を撮りました。前列右端が難民を助ける会の野際紗綾子

2時間半の会議はあっという間に終わり、最後は皆で記念撮影。数年後を見据えて「こころときずなの復興」に向けて頑張っていこう、と心を一つにしました。会議はメディアにも公開され、翌日の岩手日報、毎日新聞、盛岡タイムスでも紹介されました。

今後の展望と課題

宮城県では、障害福祉分野の第1回調整会議が5月末に県庁にて開催され、障害福祉分野で活動する8つの民間団体が参加して、県の担当者と情報交換を行いました。岩手県でもこの分野の調整会議を開催できるよう、準備を進めていく予定です。

国、県、市町村と民間のNPO・NGO、そして被災者との間の風通しを良くし、それを通して被災者一人ひとりのニーズや思いに応えていく――そんな連携を目指して、難民を助ける会は地道に活動を続けてまいります。復興への道のりは長く険しいですが、この報告をご覧頂いている皆様のご協力を賜りながら、実現を目指していきたいと思います。今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東北事務所長 野際 紗綾子

2005年4月より難民を助ける会へ。2008年ミャンマーサイクロン、2009年スマトラ沖大地震、2010年パキスタン洪水など多数の緊急支援活動に従事。東日本大震災では発生2日後から被災地に入り、緊急支援チームの東北事務所長として活動を行っている。

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