ハイチ:児童養護施設と理学療法センターが完成しました
難民を助ける会は、2010年1月の大地震により甚大な被害を受けたハイチにて、児童養護施設や障害者施設の再建を行っています。建物が完成した4つの施設について、ハイチ駐在員の古川千晶が報告します。
児童養護施設の再建で、子どもたちに最低限の生活環境を
首都ポルトープランスにある児童養護施設「ラ・マン・タンドル」(「救いの手」)は、地震で建物が完全に倒壊し、今年の2月の時点でも、30人近くいる子どもたちのほとんどがブルーシートで作ったテントの中で過ごしていました。トイレは壊れ、寝室は地面にマットレスを敷いただけで、生後4ヵ月の乳児もその上に寝ているという状況でした。
難民を助ける会は、この施設の再建を支援し、6月30日に新しい建物が完成しました。ベッド、文房具など生活に必要な物品も提供し、子どもたちが安心して暮らし、勉強できる環境を整備しました。
この施設で暮らすロズバリンちゃん(11歳)とマリールちゃん(11歳)は同施設で育ちました。とても仲良しの二人は、新しい建物の共有スペースが一番のお気に入りで、よく一緒に踊ったり歌ったりしています。二人の将来の夢は、看護師さんです。
ロネルダちゃん(9歳)は2歳の頃に同施設に入りました。再建前は地面に敷いたマットレスで寝なくてはいけないのがつらかったと言います。でも、今はきれいなベッドで皆仲良く寝られて、とても居心地がいいと話してくれました。
私が訪問した日は、皆で折り紙を作りました。紙飛行機を作ってあげると、子どもたちは目を輝かせて喜び、「僕も!」「私のも作って!」と大はしゃぎでした。共有スペースの天井をたくさんの紙飛行機が飛び交いました。
ハイチには震災で大きな被害を受けた児童養護施設がまだまだたくさんあります。難民を助ける会では、この「ラ・マン・タンドル」に加え、「ハイチ孤児たちの家」と「新しいエルサレム救いの泉福音教会孤児院」の2つの児童養護施設でも再建を支援しました。
誰もがリハビリを受けられるように
難民を助ける会は「理学療法センター」でも再建および運営支援を行いました。この施設は、理学療法によるリハビリテーションを受けることのできる、ハイチでも数少ない施設の一つです。代表者のミシェル氏は、震災前から、貧困のために治療費を払うことができない患者も受け入れ、治療を行ってきました。
しかし、2010年1月12日の大地震により、施設は倒壊。駐車場に建てた小屋でなんとか運営を継続していました。大地震の影響で理学療法による治療を必要とする患者は増えましたが、その多くは貧しく、治療費を払うことができません。誰もが治療を受けられるよう、「理学療法センター」の本格的な活動再開が望まれていました。
そこで、難民を助ける会は2011年3月からこの施設の再建に着手。7月に新しい建物が完成し、リハビリ用の器具なども設置しました。2つの寝室もあり、遠方から泊りがけでリハビリに通うこともできるようになっています。セリーヌさん(60歳)は、施設の完成後に通院を始めた患者の一人です。地震後に脳卒中で倒れ、全身の運動機能に後遺症が残ったためリハビリを必要としていました。最近は朝早くに来院し、夕方に家族が迎えにきてくれるまで、施設内でリハビリを行っています。寝室で休憩することもできるので、安心して通うことができると話してくれました。
現在は、「ハイチ盲人支援協会」などの再建を進めています。難民を助ける会では、今後も子どもたちの生活・教育環境の改善と、障害者支援を続けてまいります。
*この活動は皆さまのあたたかいご支援に加え、ジャパンプラットフォームの助成金により実施しております。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
ハイチ事務所 古川千晶
2010年10月よりハイチ駐在。大学卒業後、人材コンサルティング会社などを経てイギリスの大学院で国際開発学を学ぶ。帰国後、難民を助ける会へ。(大阪府出身)