東アフリカ地域干ばつ:難民キャンプで小学校の教室や文房具を支援
干ばつによる被害が拡大している東アフリカ地域(ケニア、ソマリア、エチオピアなど)の緊急支援のために、難民を助ける会はスタッフをケニアに派遣しています。9月7日、緊急支援チームはソマリアとの国境に近いダダーブ難民キャンプに、学校の教室として使用するテント15張を設置、12日には黒板や、文房具などの学用品を届けました。現地で活動する東京事務局の名取郁子からの報告です。
学校の数がまったく足りない!
ダダーブ難民キャンプには、干ばつが起きる以前でも既に内戦を逃れてきたソマリア人をはじめとして30万人が暮らしており、今年だけでさらに15万4千人のソマリア難民が到着、その数は増え続け、現在も毎日1,300人を超える人々が流入しています。
この深刻な人道危機に対し、難民キャンプでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などの国連機関や世界各国の援助団体が活動を行っています。決して十分ではありませんが、水や食料の支援は各団体によって行われています。しかし、増え続ける難民の数に、学校の数がまったく追いついていません。現在、ダダーブでは、156,000人の学齢期にある子どもが暮らしていますが、小学校の入学率は42%、中学校は5%に留まっています。
アンゴラや南スーダンでは、難民キャンプで教育を受けたことによって、キャンプを出た後に、祖国やほかの国々で仕事を得ている人々に大勢出会いました。住む家も、耕す畑も家畜も、何も持たなくても、教育を受けることができれば、それが将来、職業を得ることに繋がります。
現地で小学校を運営するNGO団体ADEO(アデオ:東西アフリカ地域において、医療・教育分野を中心に活動)より、「これから始まる新学期を前に教室の数がまったく足りていない」との相談を受け、難民を助ける会は学校への支援を決定しました。
教室や黒板、文房具などの支援を開始
9月7日、ダダーブ難民キャンプ内イフォ地区の小学校の敷地に、教室として使うテントを15張設置しました。なんとか新学期に間に合い、大勢の子どもたちが授業を受けています。12日には、授業で使用する黒板、チョークや、ノート、鉛筆などの学用品を届けました。
「これまで学校に通ったことがなかったので、毎日とても楽しい」と話すのは、3ヵ月前にソマリアからやって来たナジ・モハメッド・オマールくん(12歳)。父親を病気で亡くし、母親を手伝って農業をしていましたが、干ばつの影響で、それまで育てていた豆や麦、トウモロコシなどが何も育たなくなったそうです。毎日荷車で20キロ離れた場所まで水汲みに行っていましたが、荷車を引かせていたロバも、水と食料の不足でついに死んでしまい、母親と6人の兄弟とともに国境を超えるトラックの荷台に乗り込んだと、目に涙をためながら話してくれました。将来の夢を尋ねると、「学校の先生になりたい」と力強く答えてくれました。なんとか勉強を続けて、夢を叶えて欲しいと願います。
周辺のケニア人への支援も検討
現在も難民の流入は続いています。日に日に増えていく難民にとって何が必要か、難民を助ける会に何ができるのか、国際機関や他団体、地域の方々と調整しながら支援を続けていきます。
また、支援を必要としているのは難民キャンプの中の人たちだけではありません。ケニア北東州はどこも干ばつの被害が大きく、難民キャンプで暮らす人々同様に苦しい生活を余儀なくされている地元住民もいますが、この人たちは難民ではないため、なかなか支援が届いていません。ガリッサで行った食料配付のように、こうしたホストコミュニティ(難民の受け入れ地域)への支援も継続して検討してまいります。
日本ではあまり報道されていませんが、日々を必死で生き延びている膨大な数の人々が、支援を渇望しています。
皆さまからのご支援により多くの難民の命が助かります。引き続き、ご協力をお願いいたします。
※この活動は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。
緊急募金にご協力ください
被災者支援のための募金を受け付けています。どうぞご協力をお願いいたします。
郵便振替: 00100-9-600 加入者名: 難民を助ける会
*通信欄に「東アフリカ干ばつ」とご記入ください。*領収証が必要な方はその旨お書きください。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 海外事業部長 名取郁子(なとり いくこ)
1999年より国連やNGOの職員として途上国支援に携わる。2006年より難民を助ける会としてアンゴラで地雷対策事業を、2008年からスーダン南部(現南スーダン共和国)で、水・衛生事業に従事。2010年より東京事務局で海外事業部長。2010年ハイチ大地震など数々の緊急支援に携わる(滋賀県出身)