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南スーダンの山村に暮らす人々へ井戸を提供しています

2011年10月03日  南スーダン緊急支援
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難民を助ける会は、南スーダンの各地で井戸の建設を行っています。新しく井戸を掘る前には、周辺の村から水源までどれくらい離れているか、またその村の人々がどのような生活をしているか、調査しています。今回は、ラフォン郡タレリ村の状況についてご紹介します。

戦禍を逃れて山へ

山の上にあるタレリ村

山の上にあるタレリ村

ラフォン郡南東部は中央に大きな山脈が通っています。タレリ村はその山脈と平地の境界部に当たる標高200mほどの山の斜面にあり、テネットという少数民族が暮らす小さな村です。山の東側には広大な平野が広がりますが、平野には家はありません。村人によると、もともとは平地に住んでいたそうですが、スーダンの第一次内戦(1955-1972)の戦禍から逃れるため山の上に避難し、そこに定住するようになったそうです。2度にわたる内戦が終結した現在、政府は地域を発展させるために山から平地へ人々を移住させるよう努力していますが、牛泥棒や強盗などが多いため、村人は引き続き山の上での生活を望み、移住は進んでいません。治安への不安は村人の銃の保有率の高さからも伺え、早朝からカラシニコフ自動小銃を背に畑へと向かう男性の姿が頻繁に見られます。

農作業が中心-タレリ村の人々の暮らし

南スーダンのラフォン郡

タレリ村の村人のほとんどは農業に従事しています。モロコシ(ソルガム)をはじめとして、キビやトウモロコシなどの乾燥に強い穀物のほか、ピーナッツ、大豆、オクラ、モロヘイヤ、胡麻、カボチャ、さらにはタバコなどいろいろなものを育てています。山の斜面と平地を耕作地として活用し、ピーナッツや野菜は平地で、モロコシは山と平地の両方で栽培します。家の庭や村の小道沿いにもカボチャやタバコが植えられていて、気を付けないと踏みそうになってしまいます。
これら農作物のうちモロコシとピーナッツは主食でありかつ貴重な収入源です。東エクアトリア州の州都であるトリットまで約80㎞、車で4時間ほどかけて、村人たちは年に一度収穫した農作物を売りに行き、得た現金で砂糖や塩などの調味料、衣服や食器などの生活用品を購入して村に帰ってくるそうです。収穫の悪い年や農地の少ない世帯などは農作物は自給分に留まり、ヤギを売って現金収入を得るか、まったく収入がないということもあるそうです。

畑仕事に精を出すタレリ村の人々

畑仕事に精を出す村人たち

牛やヤギなどの家畜を飼っている世帯もありますが、全体としては家畜の数は多くありません。家畜泥棒に全部持っていかれてしまい断念したという話をよく聞きました。牛追いの仕事を奪われたためか、この村の多くの男性は農業に従事しています。特に収穫間際のモロコシの実に集まる鳥を追い払う作業は男性の仕事らしく、私が調査に訪れている間も畑にせっせと通う多くの男性の姿を見ます。女性は家事に従事しており、トポサなど他の民族の「男は牛追い、女は畑」という役割分担とはずいぶん違います。ただし、女性はまったく畑仕事に従事しないわけではなく、種蒔き、雑草取りなどは夫婦共同の作業だそうです。

水を求めて争いも

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山の上の湧水を汲むタレリ村の女性。平地に井戸ができた今も、足腰の弱い人などには貴重な水源です

山の上で暮らすタレリ村の人々にとって、水の確保は大きな問題です。タレリ村を含めた近隣の4つの村の近くの平地には井戸が3基ありましたが、2つは水がかれてしまい、現在使われているものは1基のみです。井戸が設置される以前は村人は山の上の谷川の水や湧水を汲んでいたようです。こうした水源は今でも利用されていますが、乾季にはその多くがかれてしまい、井戸と比べると衛生的にも問題があります。
しかし、現在使われているたった1つの井戸は4つの村で共用されており、井戸には毎日長蛇の列ができ、待ち時間が1~2時間を越えることも常にあります。また、井戸の最寄りの村が井戸の所有権を主張し、他の村人を排除しようとするなど争いの種にもなっています。

村人が平等に井戸を使えるように

村人の話に耳を傾ける駐在員の池田武

井戸を巡る争いについて訴える女性の話を聞く駐在員の池田武(右)

今回の調査の結果を受けて、難民を助ける会では4つの村の近くに新たに井戸を設置しました。これにより、近隣の4つの村が利用できる井戸の数は2基になり、待ち時間の減少や争いの軽減につなげることができました。また井戸の建設の後は、村のボランティアからなる井戸管理委員会を設けました。今回の調査結果をもとに、ひとつの村が井戸を独占することのないよう、4つの村すべてから委員会メンバー(計6人)を選出しました。井戸を乱暴に扱うと数年で部品が摩耗し、故障してしまいます。長期にわたって井戸を使うには、適切な使用方法と定期的なメンテナンスが不可欠です。既存の井戸には管理委員会を設けていなかったので、村人との協議で、委員会は新規の井戸だけでなく既存の井戸も併せて管理することにしました。

難民を助ける会では、今後も南スーダンの人々が、井戸から安全な水を争いなく手に入れられるよう、また村人自身が井戸の修理・維持ができるよう、支援を続けてまいります。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

南スーダン・カポエタ事務所駐在 池田 武

2011年6月より駐在。大学卒業後、中国・北京にて3年間、ミャンマー(ビルマ)にて2年間NGOに勤務。その後難民を助ける会へ。趣味は音楽、空手とトレッキング。埼玉県出身

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