タジキスタン:障害のある人々に寄り添う支援活動を続けています
タジキスタンは、1991年に旧ソ連から独立して今年で20年を迎えました。独立直後の5年にわたる内戦を乗り越えて国は発展してきましたが、障害のある人々の社会的な立場はいまだに弱いのが現状です。町中の公共施設はバリアフリーとは言えず、障害者の就職も進んでいません。難民を助ける会は、そのようなタジキスタンで活動する日本唯一のNGOとして、首都ドゥシャンベを拠点に障害者支援活動を続けています。
障害者の家庭を訪問
2011年7月31日から8月19日にかけて、日本から作業療法士の河野眞・医療専門家(杏林大学保健学部)を招き、障害者のいる家庭でのカウンセリングを実施しました。自宅に引きこもりがちなタジキスタンの障害者を訪ね、相談に乗ったり、リハビリの指導をするためです。カウンセリングには、難民を助ける会が支援を続けているタジキスタンの団体「障害者連盟」の職員も同行しました。河野専門家のカウンセリングの技術を習得し、今後は自分たちだけで家庭訪問ができるようになることを目指しています。
8月2日、河野専門家と障害者連盟の職員とともに、ナルギズ・ユスポバさん(19歳、女性)の家を訪れました。ナルギズさんは先天性骨形成不全症という疾患があり、歩行が困難なため、あまり外出もしていないといいます。手先が器用で毎日家でビーズのアクセサリーを作っているというナルギズさんの話を聞き、河野専門家は障害者連盟が開催している洋裁教室に来ることを勧めました。「障害を理由に閉じこもるのではなく、できることを活かして、積極的に外に出てみてください。」
職業訓練を通じて障害者の社会参加を進めています
河野専門家がナルギズさんに紹介した洋裁教室は、難民を助ける会が障害者連盟と協力してドゥシャンベ市内で開催しているものです。障害のある人やその家族を対象に、本格的なタジク伝統服の作り方などを指導することで、障害者の生計支援につなげています。洋裁教室のほかに、料理教室や菜園コースも開催しています。参加者は収入を得るための技術を身につけると同時に、他の参加者と情報交換をして、交流の輪を広げています。
最新のリハビリ技術を持つ人材を育てるために
滞在中、河野専門家はタジキスタンの障害者医療施設4ヵ所で、職員を対象としたリハビリテーション講座を開きました。タジキスタンで普及している医療知識は旧ソ連時代からあまり進展がなく、最新の知見に基づいたリハビリはほとんど知られていません。タジキスタンでも新しいリハビリを施術できる人材を育てるため、河野専門家は実演を交えてリハビリの技術を分かりやすく説明し、各施設の医師や職員は熱心に講習に参加していました。
これからも障害のある人々とともに
ナルギズさんはその後障害者連盟の洋裁教室に週2回通うようになり、8月30日には障害者連盟本部で開かれたマーケットにさっそく自作のアクセサリーを出品しました。河野専門家のリハビリ講習会に参加した医師の一人は、「新しい知識を得られて、大変勉強になった」と喜んでくれました。
一人でも多くのタジキスタンの障害者が、ナルギズさんのように自分のできることを活かし、積極的に社会に出てくれたらと思っています。そのためには、障害のある人々が外に出て行きやすい社会や環境を作っていくことも必要です。タジキスタンの障害者をめぐる環境には、まだまだ多くの課題が残っています。本当に求められている支援を届けられるよう、障害のある人々と協力しながら、今後も活動を続けていきたいと思います。
※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて行っています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
タジキスタン事務所 安田 あゆみ
2011年5月よりタジキスタン・ドゥシャンベ事務所駐在。大学卒業後、青年海外協力隊員としてネパールに滞在。その後、難民を助ける会へ。2011年4月まで東日本大震災緊急支援に従事。(宮城県出身)