東アフリカ地域干ばつ:生活の糧を失った方々に食料・生活物資を支援
過去60年で最悪といわれる干ばつに見舞われている東アフリカ地域では、支援を必要とする人々の数は1,330万人に達しています(10月14日国連人道問題調整事務所による)。難民を助ける会では、これまでにケニア北東部の町ガリッサで食料・生活物資を配付、ソマリア国境に近いダダーブ難民キャンプの小学校で教室用テントの設置や学用品の提供などの教育支援を行っています。
干ばつで家畜が死亡、困窮する人々
ケニアにあるソマリア国境に近い難民キャンプでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などの国連機関や世界各国の援助団体が活動を行っており、水や食料などの基本的な支援は行われています。しかし、同様に干ばつ被害の深刻なケニア国内への支援は十分ではありません。特に、北東州の人口の7割から9割を占めるといわれている遊牧民は、唯一の生計の手段である家畜が干ばつによる水や牧草の不足で死んでしまい、生きる糧をなくしています。遊牧生活をあきらめ、町周辺に移り住む人も増えています。難民を助ける会では、ケニア赤十字や地元政府と協議し、特に支援の行き届いていない北東州で食料・生活物資の配付を決定しました。
500世帯に食料や日用品を配付しました
支援地域のひとつバナネは人口16,000人ほどの町でしたが、すでに町の周辺だけでも3,000人超、バナネ地域全体では約5,000人の遊牧民が食料や仕事を求めて移り住んでいます。赤十字によって元からいた住民への食料配付が行われましたが、移り住んできた人々への支援はなされていません。10月18日、難民を助ける会ではそうした支援の行き届いていない人々を対象に、約500世帯に緊急支援物資を配付しました。
「干ばつが起きてからも、私たちへの支援はほとんどありません。食料支援は本当にありがたい」と話すのは、ファトゥマ・アリさん(70歳)。以前は遊牧民でしたが、飼っていたヤギ100匹と牛10頭もほとんど死んでしまい、収入が途絶え困窮していました。約4カ月前に親族200人くらいのグループでバナネに来ました。木の枝や藁で作ったほったて小屋で暮らしており、今回の支援に雨よけのためのビニールシートが含まれていることを伝えると、とても喜んでいました。
配付物資の内容:米10キロ、スパゲッティ2キロ、小麦粉3キロ、豆3キロ、砂糖1キロ、塩500グラム、食用油1リットル、トマト缶、茶葉、バケツ、ポリタンク、女性用生理用品、石鹸3つ、ビニールシート |
11月から雨季が始まり、今年は平均的な雨量が期待されています。しかし、雨が降っても家畜を失った遊牧民の生活がすぐに元に戻ることはありません。死んだ家畜は戻らないのです。家畜を連れて各地を転々と遊牧生活してきた人々の多くは、学校に通った人も少なく、他の職業にもなかなか就きにくいのが現状です。また、新しく町に流入してきた彼らが住む場所は、中心部から離れたところが多く、学校も病院も近くに無い場合が多くあります。このように雨が降っても、干ばつの影響はまだ続いており、様々な分野での支援を必要としています。継続的な支援が求められているのだと、強く感じました。
多数の支援機関・団体間での調整を行いながら
今後、同地域で食料などの物資配付を行うとともに、引き続きダダーブ難民キャンプの学校で教室用のテント、給水塔の設置や給食用キッチンの整備を行い、劣悪な環境で授業を受けている子どもたちの就学環境を整えていきます。現在ケニアでは、国連機関やNGO団体が多数活動しており、支援の偏りや重複が起きないための調整も難しい状況にあります。難民を助ける会は、緊急に必要とされている支援を調査し、関係する団体と調整してから支援内容を決めています。ダダーブ難民キャンプでは、国際NGOのスタッフが誘拐される事件も起きました。治安状況を注視しつつ、慎重に活動を行って参ります。
※この活動は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 五十嵐 豪
難民を助ける会プログラム・コーディネーター。2009年9月より難民を助ける会海外事業担当としてケニア、アフガニスタン、カンボジア事業を担当。フィリピン台風被災者支援(2009)、ハイチ地震被災者支援(2010)、スリランカ洪水被災者支援(2011)などに従事。(東京都出身) .