東日本大震災:ものまね、民謡で笑顔いっぱい!江戸家猫八さんらが被災地で公演
10月19日から21日にかけて、演芸家の四代目江戸家猫八さんと民謡歌手の千田けい子さん、尺八の米谷幸太さん、そして三味線の菅原重治さんが、岩手県内の公民館や福祉施設など9ヵ所の会場で公演を行いました。猫八さんは4月にも宮城県牡鹿半島の避難所を訪れ、子どもたちに笑顔を届けてくださっていますが、それから約半年が経った被災地はどう変わっていたのでしょうか。20日の公演に同行した東京事務局の杉澤芳隆の報告です。
動物のものまねと民謡が大好評
10月20日。公演2日目、今日最初の訪問地は釜石市の唐丹(とうに)地区公民館です。近隣のお宅や仮設住宅から約50名のお客さまが集まりました。会場は海沿いの高台に建っており、窓から海が見渡せます。震災の日は津波が押し寄せるのが間近に見えたそうです。
猫八さんが舞台に登場すると、会場から大きな拍手が沸き起こりました。猫八さんの楽しいお話に、皆さんあっという間に引き込まれます。早速猫八さんの十八番、ウグイスの鳴きまねが披露され、会場から感嘆の声が上がります。鈴虫やハクチョウなど、次々と繰り広げられる猫八さんの芸に、皆さんは驚いたり笑ったり。
後半は民謡歌手の千田けい子さんらが合流して民謡の演奏が始まりました。岩手県の民謡「外山節」を皮切りに、千田さんの声が響きます。会場からのリクエストも受け付け、どの曲も見事に歌う千田さんのレパートリーは驚異的です。さらには「南部牛追い唄」に猫八さんによる牛の鳴きまねが入るという共演も披露され、たくさんの拍手とともに公演は終了しました。
猫八さんはお客さまにこう話されました。
「当たり前に『がんばってください』としか言えませんが、僕のものまねを聞いて笑って、元気を出してください。そして今度、本物のウグイスが鳴いたとき、ああこの前猫八が来たな、元気出せって言ってたな、と思い出してください。」
お客さまに感想を聞くと、「やっぱり生で聞くとすごいねえ」「話がうまいのはさすがだね。飽きさせねぇ。名人芸だ」「やー楽しかったよ」など、皆さま大満足の様子。会場では久しぶりに知人を見つけて喜ぶ方もおられ、このようなイベントが近所の方々の集まる貴重な機会になっていることを感じました。
仮設住宅や障害者施設、高齢者施設でも公演
1回目の公演を終えた猫八さんらは、近くの仮設住宅を訪れました。公民館まで来る交通手段のない人たちのために、わざわざ仮設住宅の集会場でもう1回公演をしてくださったのです。午後には10kmほど北の大槌町に移動し、障害者施設「四季の郷」と、つい8月まで避難所として使われていた町営弓道場でも公演を行いました。猫八さんが4月に牡鹿半島に来てくださったときは、公演の会場はほとんどが避難所でした。震災から半年以上が過ぎた今回、避難所はほとんどが解消しており、代わりに仮設住宅での公演がいくつかありました。復興に向けた変化を感じます。
公演の合間に、猫八さんらは大槌町の今は使われていないパチンコ店に立ち寄りました。ここは現在、津波で壊滅的な被害を受けた大槌の街から拾い集められた写真のアルバムの保管所となっています。地元の方々が膨大な写真の束を一つ一つ確認し、自分や知人のものがないか、探していらっしゃる様子を、猫八さんはじっと見つめられていました。
この日の公演を終えた猫八さんは、「みんなのあの笑顔、よかったねぇ。人はやっぱり集まると元気がでるから。」とおっしゃっていました。猫八さんらは3日間の公演で約560人の方々に笑顔を届けてくださいました。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
東京事務局 杉澤 芳隆
2010年5月より東京事務局勤務。大学卒業後、民間会社に勤務後、難民を助ける会へ。2010年パキスタン洪水支援、2011年東日本大震災緊急支援に従事。(茨城県出身)